2019年02月08日

オフィス市況は一段と改善。REIT指数(配当込)は最高値を更新-不動産クォータリー・レビュー2018年第4四半期

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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1. 経済動向と住宅市場

2018年7-9月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比年率▲2.5%へ下方修正された。主に自然災害の影響で企業の設備投資が減少し大幅なマイナス成長となった。経済産業省によると、10-12月期の鉱工業生産指数は前期比1.9%となり2四半期ぶりに上昇した。自然災害後の供給制約の解消と挽回生産によって10月は高い伸びとなったが、11月、12月は水準を低下させており、生産の基調は強くない1(図表-1)。景気は実勢として弱めの動きとなっており、海外経済の減速に伴う外需の悪化などから後退局面入りするリスクがここにきて高まっている。
図表-1 鉱工業生産(前期比)
ニッセイ基礎研究所は、昨年12月に経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2018年度0.8%、2019年度0.8%、2020年度1.2%を予想する(図表-2)2。実績値の下方修正などを受けて、2018年度の成長率見通しも0.2%引き下げた。
図表-2 実質GDP成長率の推移(年度)
住宅市場は価格が高値圏で推移するなか横ばいの動きとなっている。2018年12月の新設住宅着工戸数は78,364戸(前年比2.1%)と2ケ月ぶりに増加した。しかし、2018年全体では前年比▲2.3%の約94.2万戸となり2年連続で減少した。(図表-3)。全体の4割超を占める貸家が前年比▲5.5%と落ち込んで全体の着工戸数を押し下げている。
図表-3 新設住宅着工戸数(全国、年間)
2018年の首都圏のマンション新規発売戸数は37,132戸(前年比3.4%)となり2年連続でプラスとなった。主に埼玉県や千葉県の販売が増加した。1戸当たりの平均価格は5,871万円(前年比▲0.6%)、m2単価は6年連続上昇の86.9万円(前年比1.2%)となった。初月契約率は62.1%(前年比▲6.0%)へ悪化し、12月の販売在庫は9,552戸(前年比+2,446戸)と大幅に増加した。不動産経済研究所は、2019年の供給戸数について横ばいの3.7万戸を予想している(図表-4)。
図表-4 首都圏のマンション新規発売戸数(年間)
東日本不動産流通機構(レインズ)によると、2018年の首都圏中古マンションの成約件数は37,217件(前年比▲0.3%)となり、過去最高を記録した前年から減少に転じた(図表-5)。また、成約価格は前年比4.3%の3,333万円となり6年連続で上昇した。
図表-5 首都圏の中古マンション成約件数(年間)
日本不動産研究所によると、2018年11月の住宅価格指数(首都圏の中古マンション)は前年比0.4%上昇し高値圏でもみ合う動きとなっている(図表-6)。

今後の住宅市場については、貸家着工と関連の高い個人の貸し家業向け貸出(アパートローン)の動向や今年10月の消費税率引き上げを前にした駆け込み需要の影響が注目される。
図表-6 不動研住宅価格指数(首都圏の中古マンション)

2. 地価動向

地価は引き続き上昇している。国土交通省の「地価LOOKレポート(平成30年第3四半期)」によると、全国100地区のうち上昇が「96」、横ばいが「4」、下落が「0」となり、3期連続で上昇が9割以上を占めた(図表-7)。好調なオフィス市況や再開発事業の進展による繫華性の向上、インバウンド需要の拡大などを背景に不動産需要は依然として高い水準にある。
図表-7 全国の地価上昇・下落地区の推移
一方、野村不動産アーバンネットによると、首都圏住宅地価格の変動率(2019年1月1日時点)は前期比▲0.04%となった(年間0.4%上昇)。「横ばい」を示した地点の割合は91.1%となり横ばいの傾向が続いている(図表-8)。
図表-8 首都圏の住宅地価(変動率、前期比)
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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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