2019年02月06日

年金改革ウォッチ 2019年2月号~ポイント解説:財政検証や制度改正に向けた見通し

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

1 ―― 先月までの動き

「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」が新設され、今年9月が検討期限となっている短時間労働者への厚生年金等の適用拡大などについて、議論を進めることになった。
 
○社会保障審議会  年金数理部会
12月14日(第79回) 平成29年財政状況(厚生年金保険(第1号)、国民年金・基礎年金制度)
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198131_00005.html (資料)
12月17日(第80回) 平成29年財政状況(国家公務員共済、地方公務員共済、私立学校教職員共済)
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198131_00006.html (資料)
 
○働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会
12月18日(第1回) 働き方の多様化に伴う被用者保険制度の課題、今後の進め方など
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02964.html (資料)
 
○社会保障審議会  年金記録訂正分科会
12月21日(第6回) 年金記録の訂正に関する事業状況(平成29年度事業状況、平成30年度上期概況)
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000189022_00001.html (資料)
 
○社会保障審議会  年金財政における経済前提に関する専門委員会
12月25日(第8回) 年金財政における経済前提のあり方(年金部会への議論の経過報告)、その他
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03012.html (資料)
 
○社会保障審議会  年金部会
1月30日(第7回) 医療保険制度等の一部改正法案(仮)における法改正、今後の財政検証の進め方、働き方の多様化に関する懇談会開催の報告、私的年金に関する検討の報告、その他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212815_00006.html (資料)
 
○社会保障審議会  年金事業管理部会
1月30日(第41回) 日本年金機構第3期中期目標、中期計画及び平成31年度計画の策定、その他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000213396_00004.html (資料)
 

2 ―― ポイント解説:財政検証や制度改正に向けた見通し

2 ―― ポイント解説:財政検証や制度改正に向けた見通し

先月の年金部会では、年金部会の今後の進め方(段取り)が示された。本稿では、過去の過程を参照しながら、財政検証(将来見通しの作成)や制度改正に向けた今後の予定と注目点を確認する。

1|今後の見通し:経済前提の確定は今年の春頃、財政検証結果は5~6月か参院選後か
公的年金の将来見通しの作成は、少なくとも5年に1度行われる。5年なのは、将来見通しの前提となる将来人口の推計や、その基礎となる国勢調査が5年に1度行われるためである。次の将来見通しの作成期限は2019年であり、2018年4月から社会保障審議会年金部会が議論を重ねている。

将来見通しの作成にはいくつかの前提が必要だが、今年1月に今後10年間の経済見通しや今後30年間の労働力の見通しが発表され、年金部会で前提の設定方法も確認された。今後は、これらに従って作業が進められ、今年の春頃に経済前提の具体的な値が示される見通しだ。

経済前提が設定された後は厚生労働省が見通しの作成作業に入り、結果が出た時点で将来見通しが公表される。前回は2014年6月に公表されたが、前回は被用者年金一元化を織り込んだ初めての見通しで新たな計算作業が多かったことを考慮すると、今回は6月より早まる可能性がある。その一方で、今年7月には参議院選挙が行われる見込みであるため、公表は選挙後になるという見方もある*1
図表1 これまでの将来見通し作成や年金改革の経過
2|今後の注目点:オプション試算の内容と法案確定後の再試算の有無
今後の注目点は、制度改正の検討資料となる「オプション試算」の項目である。前回(2014年)のオプション試算を巡っては、何を試算するかの議論が混乱した*2。加えて、オプション試算になかった項目が法案に盛り込まれ、法案に基づいた試算も行われなかったために国会審議が紛糾した*3

先月の年金部会では次回の試算項目が議題になったが、他の議題が多数あったため議論が時間切れとなった。春頃と予想される経済前提の確認の際に、試算項目についても再度議論して確認を得たり、法案確定後に試算を再度行うなど、前回時の混乱を繰り返さないための丁寧な進め方が期待される。
 
*2 社会保障審議会年金部会(2013年12月18日)
*3 2016年秋に審議された年金改革法案(2016年3月提出、同年12月成立)は、野党の一部から「年金カット法案」と呼ばれた。
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴
  • 【職歴】
     1995年 日本生命保険相互会社入社
     2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
     2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
    (2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

    【社外委員等】
     ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
     ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
     ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
     ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

    【加入団体等】
     ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
     ・博士(経済学)

(2019年02月06日「保険・年金フォーカス」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【年金改革ウォッチ 2019年2月号~ポイント解説:財政検証や制度改正に向けた見通し】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

年金改革ウォッチ 2019年2月号~ポイント解説:財政検証や制度改正に向けた見通しのレポート Topへ