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EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(3)-EIOPAの2018年報告書の概要報告-
中村 亮一
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国別では、ドイツにおいて、SCRが11.3%増加し、適格自己資本が51.4%減少し、ベルギーにおいては、SCRが16.0%増加し、適格自己資本が38.1%減少し、フランスにおいては、SCRが12.9%増加し、適格自己資本が32.8%減少し、加盟国の中では最大規模の影響度となっている。
以下の図表が、TTPを使用している会社のSCR比率の適用前後の状況を示している。
TTPを使用している会社の73%の絶対的な影響は0%から200%ポイントの範囲内となっている。また、会社数の16%に相当する26社(技術的準備金の市場シェアは4%)がTTPを適用しない場合、SCR比率が100%未満となる。さらに、2社(技術的準備金の市場シェアは0.1%)が、TTPを適用しない場合、適格自己資本がマイナスになる。
なお、生命保険会社と損害保険会社及び生損保兼営会社の間で、影響度に明確な差異は見られない。
TTP又はTRFRを適用する会社及びPIP(phasing-in plan:段階的導入計画)の提出を求められた会社の国別内訳は、以下の図表の通りである。
TTP又はTRFRを適用する会社は168社あり、このうちの51社が2017年のある時点でSCR全額をカバーするためにTTP又はTRFRの適用に依存しなければならなかったため、2017年にPIPを提出しなければならなかった。ただし、2017年末時点で、これらの会社のいくつかはSCRを遵守するためにTTP / TRFRに既に依存していなかった。 2016年には、60社がPIPを提出することを要求されていたが、2017年には、ポートフォリオの移管、合併及びSCRへの遵守の回復等により、9社減少している。
2つの管轄区域における9社は、2017年に初めて段階的導入計画の提出を要求された。これらの段階的導入計画では、利益又は収益の留保、商品設計の変更(例:保険料の引き上げ)、経費削減、同じグループ内の他の会社との合併などの措置を設定している。
なお、2016年にNSAs(National Supervisory Authorities:国家監督当局)が受け取った段階的導入計画の詳細等については、前回の2017年の報告書に記載されており、前回のレポートでも報告している。
(2)段階的導入計画の更新
会社は、監督当局の要求又は会社自身の主導で、3つの管轄区域で既存の計画を修正した。修正には、次のような幅広い選択肢が含まれる。利益の留保、引き受ける新契約の中止又は削減、自己資本比率を引き下げるためのリスク回避、経費の削減そして追加の資本調達。ある会社では、特に経費に関してより現実的になるように、当初の計画で使用されていた前提も調整した。
あるNSAは、それが不十分であると判明した場合には、生命保険会社に最初の段階的導入計画を修正及び強化することを要求している。例えば、計画された対策の説明が簡潔でなかったり、それらの予想される影響が十分な方法で定量化されなかったりした場合がこれに該当している。
(3)進捗報告書の確認
SCRを完全にカバーするために移行措置に依存している会社は、進捗報告書を年1回提出することが期待されている。NSAsは一般的に、進捗報告書は十分であり、移行措置無しでSCRを遵守することに向けての会社の進捗状況を説明している、と報告した。殆どの場合、会社は移行措置無しでソルベンシー資本要件を順守することにおいて継続的な進歩を示していた、とされた。進捗報告書の見直しが段階的導入計画の更新につながったことも言及された。
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