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EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの2018年報告書の概要報告-
中村 亮一
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4―LTG措置及び株式リスク措置の適用要件
1|基本的な適用要件
「(1)リスクフリー金利の補外」については、全ての会社に強制的に適用される。
「(7)株式リスクチャージの対称調整メカニズム(ED)」は、SCRの株式リスクサブモジュールを算出するのに標準式を使用(部分内部モデルが株式リスクサブモジュールをカバーしていない場合を含む)している会社は強制的となる。
これに対して、(2)~(5)、(8)のMA、VA、TRFR、TTP、DBERは、ソルベンシーII指令や規則に規定された条件を満たしていることを条件に、会社のオプションとなる。
(6)のERPについては、EIOPAによって例外的な不利な状況下にあると宣言された後に、SCR要件に違反する会社のみが適用できる。
従って、今回のEIOPAの報告書における分析は、会社のオプションとして適用されるMA、VA、TRFR、TTP、DBERが中心となっている。
2|複数の措置の同時適用時の要件
複数の措置を同時に適用することもできるが、以下のような一定の組み合わせは排除される。
・TTPを適用する会社はTRFRを適用できない(TTPとTRFRはいずれか一方のみ)。
・TRFRを適用する会社は、同じ(再)保険債務に対してMAは適用できない。
・MAを適用する会社は、同じ(再)保険債務ポートフォリオに対してVAは適用できない。
なお、例えば、異なる保険債務に対して、VAとMAを適用することは排除されない。
5―全体的な状況(各種措置の適用会社数等)
以下の図表及び図表の数値は 、特に断りが無い限り、EIOPAの「長期保証措置と株式リスク措置に関する報告書2018」からの抜粋によるものであり、必要に応じて、筆者による分析数値を加えたり、表の項目の順番を変更する等の修正を行っている。
3 以下の図表等において、会社数と述べるとき、1つの会社が異なる事業で各措置を適用している場合等もあり、必ずしも「会社数」を表しているとは限らないが、報告書の概要の結果が示すものに影響を与えないと考えられるため、「会社数」という表現を使用している(次回以降のレポートでも同様)。
次の表は、ソルベンシーIIの対象となる全ての保険及び再保険会社の技術的準備金及び総計上収入保険料(Gross Written Premium)の額の概要を示している。技術的準備金では9割以上が生命保険事業となっている。
ソルベンシーII対象の2,912社のうち、25.3%にあたる737 社が、MA、VA、TRFR、TTP、DBERのいずれかの措置を適用している。これらの会社は23カ国にわたっており、8カ国(エストニア、クロアチア、アイスランド、リトアニア、ラトビア、マルタ、ポーランド、スロベニア)からの会社は、いずれの措置も適用していない。なお、いずれかの措置を適用している会社の割合については、生命保険会社で50.8%、生損保兼営会社で47.0%であり、損害保険会社の13.7%、再保険会社の7.8%に比較して、相対的に高くなっている。なお、前回の報告書との比較では、再保険会社を除いて、この割合は若干低くなっている。
また、これを技術的準備金の比率で見ると、全体の9,125十億ユーロのうち、6,767十億ユーロ、74.2%(生命保険だけでみれば77.8%)の会社がいずれかの措置を適用している。
MA、VA、TRFR、TTP、DBERの措置別の適用状況は、以下の図表の通りとなっている。
(1)単体ベース
・VAは、最も多く696社(技術的準備金でのシェア66%、以下同様)が適用している。
・TTPは、次に多く162社(24%)が適用している。
・MAは、34社(15%)が適用している。
・TRFRは、7社(0%)が適用している。
・DBERを適用したのは、1社(0%)のみである。
・損害保険会社は、VAを多く適用し、TTPも一定数が適用しているが、基本的には、各種の措置は、技術的準備金が高水準な生命保険事業に対して、適用されている。
なお、MAは、英国やスペインの保険会社で適用されているため、会社数の割に、技術的準備金のシェアは大きくなっている。
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