2019年01月11日

ユーロ相場の低迷は続くのか?

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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3.金融市場(12月)の振り返りと当面の予想

(10年国債利回り)
12月の動き 月初0.0%台後半でスタートし、月末は小幅なマイナスに。  
月初、12月の日銀オペ方針が小幅な減額に留まったことに加え、ファーウェイ幹部逮捕で米中摩擦懸念が高まったことで国債が買われ、0.0%台半ばへ低下。しばらく、同水準での推移が続いた後、米国も含めた世界経済の先行き懸念からさらに国債が買われ、14日には0.0%台前半に。19日のFOMCは予想よりタカ派的な内容と受け止められたが、これを受けて米株価が崩れたことで金利上昇には繋がらず。その後も根強い世界経済への不安から0.0%台前半で推移。月末には、1月の日銀オペ方針が据え置きとなったことで需給逼迫感が高まり、僅かながらマイナス圏に低下した。

当面の予想
今月に入り、米雇用統計の良好な結果や米中通商協議進展への期待からやや上昇し、足元は0.0%台前半で推移している。年末年始のような強いリスクオフ地合いは一服したが、当面世界経済の先行き不安は燻るだろう。また、FRBのパウエル議長が4日以降、金融政策の柔軟化を示唆したことで利上げ観測が鈍化し、米金利も上がりにくくなった。さらに来週には英国でEU離脱案の採決が予定され、EU離脱問題が山場を迎えるが、混乱が予想されることも安全資産である国債需要に繋がる。金利上昇を抑制する材料が多いことから、長期金利は当面0.0%前後から0.0%台半ばでの低迷が見込まれる。
日米独長期金利の推移(直近1年間)/日本国債イールドカーブの変化/日経平均株価の推移(直近1年間)/主要国株価の騰落率(12月)
(ドル円レート)
12月の動き 月初113円台半ばでスタートし、月末は110円台後半に。
月初から、米景気の減速懸念やファーウェイ幹部逮捕に伴う米中摩擦懸念から円高ドル安に振れ、6日には112円台後半に。その後、英EU離脱巡る不透明感からポンド売りドル買いが入り、対円でのドル買いに繋がったことで11日には113円台を回復したが、世界経済の先行き懸念や米利上げ鈍化観測から18日には再び112円台に。さらに、米政府機関の一部閉鎖など米政治不安の高まりを受けて円高ドル安が進み、25日には110円台前半まで下落。月末も110円台後半で終了した。

当面の予想
米中貿易摩擦や米景気減速懸念により年初にリスク回避的な円買いが発生し、一時104円台まで円高ドル安が進行した。その後、米雇用統計の良好な結果や米中通商協議進展への期待などからやや戻しているものの、足元でも108円台前半に留まっている。リスクオフ地合いは一服したものの、FRBのパウエル議長が4日以降、金融政策の柔軟化を示唆したことで利上げ観測が後退しており、当面積極的なドル買いは入りにくい。また、米中摩擦は依然予断を許さず、来週以降は英国のEU離脱問題が山場を迎えることから、リスク回避の円高圧力が高まる場面も想定される。当面は1ドル105円~110円での推移になると見ている。
ドル円レートの推移(直近1年間)/ユーロドルレートの推移(直近1年間)
(ユーロドルレート)
12月の動き 月初1.13ドル台前半でスタートし、月末も1.14ドル台半ばに。
月初、米景気減速懸念からユーロがやや買われ、4日に1.14ドル台前半に上昇したが、リスク回避的なユーロ売りが入り、翌5日には1.13ドル台半ばへ。その後は、米利上げ鈍化観測に伴うドル売り圧力と欧景気懸念、英EU離脱不安に伴うユーロ売りがせめぎ合う形で1.13ドル台を中心とする一進一退の展開が継続。月終盤は、EUによるイタリア修正予算案の承認、米政府機関の一部閉鎖を受けてややユーロが買われたが、景気不安や英EU離脱問題を抱えるユーロが上値を伸ばす展開にはならず、月末も1.14ドル台半ばで終了した。

当面の予想
今月に入り、パウエルFRB議長のハト派発言からドル安圧力が強まり、足元では1.15ドル台前半に上昇している。来週以降は英国のEU離脱問題への警戒が強まる可能性が高く、地理的・経済的繋がりが相対的に強いユーロの下押し材料になりそうだ。ただし、先般のパウエルFRB議長発言によって、米利上げ観測が台頭しづらくなっていることは、ユーロドルの下支えになる。ユーロドルは当面、弱含みの推移を予想している。
金利・為替予測表(2019年1月11日現在)
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

(2019年01月11日「Weekly エコノミスト・レター」)

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