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- 2018年のIPO概況
2019年01月11日
1――2018年もIPO数は底堅く推移
2018年の年末にかけては世界的に株価が下落基調となり、日経平均株価は12月には一時20,000円を割り込む展開となった(図表3)。大型株中心の日経平均株価と比較して、新興市場のマザーズ指数の軟調さが目立つ。年末のIPOについては、件数も多く投資家の買いが分散したことも相まって、年前半と比べると初値が大きく跳ねる銘柄は減少した。また、2018年にIPOした銘柄のうち、2019年1月8日時点で4割弱が公開価格を下回っている状況だ。
新興企業について言えば、注目のIPOだったのはやはりメルカリ(情報・通信、6月上場)だろう。知名度の高さもあって人気が集まり、公募で540億円超を調達、初値は公開価格を上回る好調さを見せた。同社のIPOは、日本のベンチャー業界にとっても、非常にエポックメイキングな出来事である。日本発ユニコーンのロールモデルとなり、起業家やベンチャー関係者にとって明るい話題となった。そして、メルカリが上場するまで資金調達を支えてきたベンチャー・キャピタルやその運営するファンドには大きな利益をもたらし、新たな投資活動を進める上でのサポート要因となった。日本のベンチャー・エコシステムの発展に一役買ったことは間違いない。しかしながら、足もとの株価は軟調な推移が続いている。積極的な先行投資を「宣言」し、直近の決算では赤字となっているが、株式市場の厳しい目に晒されている。
新興企業について言えば、注目のIPOだったのはやはりメルカリ(情報・通信、6月上場)だろう。知名度の高さもあって人気が集まり、公募で540億円超を調達、初値は公開価格を上回る好調さを見せた。同社のIPOは、日本のベンチャー業界にとっても、非常にエポックメイキングな出来事である。日本発ユニコーンのロールモデルとなり、起業家やベンチャー関係者にとって明るい話題となった。そして、メルカリが上場するまで資金調達を支えてきたベンチャー・キャピタルやその運営するファンドには大きな利益をもたらし、新たな投資活動を進める上でのサポート要因となった。日本のベンチャー・エコシステムの発展に一役買ったことは間違いない。しかしながら、足もとの株価は軟調な推移が続いている。積極的な先行投資を「宣言」し、直近の決算では赤字となっているが、株式市場の厳しい目に晒されている。
2――上場予備軍は着実に増えているが・・・
ここ数年は比較的良い経済環境、市場環境が続いており、上場予備軍は着実に増えている。ベンチャー企業の資金調達額は増加基調が続いており、大企業もオープンイノベーションを求めてベンチャー企業との資本提携や協業を増やしている。景気や株価が堅調に推移すれば、上場予備軍が育ってきているだけに、IPO件数も底堅い推移が見込める地合ではある。
しかしながら、肝心の景気や株価の動向に不透明感が増している。世界的に緩やかな景気拡大が続いてきたが、市場では米中の覇権争い等の影響による景気減速や、それを受けた株価下落を警戒する向きも増えている。景気や株価の状況によっては、業績や資金調達環境が大幅に悪化して、上場どころではなくなってしまう。この先数年のうちに上場を目指す予備軍の企業にとっては、たとえ小粒となろうとも景気や株式市場が大きく崩れないうちにIPOを目指すのか、景気後退や株価低迷も見据えて未上場のまま資金を調達しておくのか等、ここ数年とは違った難しい判断が必要となる局面だ。
不透明感が増す中で、株式市場ではIPO銘柄を選別する目も厳しくなる可能性がある。景気の影響を比較的受けにくい内需銘柄、例えば旺盛なデジタル化や省力化ニーズの恩恵を受けるようなITサービス企業等を選好する投資家も多いだろう。また、話題性という意味では、経済産業省のベンチャー育成プログラム「J-Startup」に選定されている企業が上場すれば、露出も多い分だけ注目を集めそうだ。加えて、利益が出ている黒字銘柄を選好する向きも一定出てくるだろう。研究開発やグローバル展開等、成長を加速させるために赤字先行となる上場ベンチャーにとって、市場を納得させられるような長期目線のエクイティストーリーを提示出来るかどうかが、一層重要になりそうだ。
2019年は亥(いのしし)年。相場格言では、「亥(い)固まる」。格言どおり、今年のIPOは底堅さを見せられるだろうか。IPOや新興市場が堅調であれば、良い流れが続いてきた日本のベンチャー・エコシステム(生態系)の更なる発展に繋がるだけに、今後の展開には注目だ。
しかしながら、肝心の景気や株価の動向に不透明感が増している。世界的に緩やかな景気拡大が続いてきたが、市場では米中の覇権争い等の影響による景気減速や、それを受けた株価下落を警戒する向きも増えている。景気や株価の状況によっては、業績や資金調達環境が大幅に悪化して、上場どころではなくなってしまう。この先数年のうちに上場を目指す予備軍の企業にとっては、たとえ小粒となろうとも景気や株式市場が大きく崩れないうちにIPOを目指すのか、景気後退や株価低迷も見据えて未上場のまま資金を調達しておくのか等、ここ数年とは違った難しい判断が必要となる局面だ。
不透明感が増す中で、株式市場ではIPO銘柄を選別する目も厳しくなる可能性がある。景気の影響を比較的受けにくい内需銘柄、例えば旺盛なデジタル化や省力化ニーズの恩恵を受けるようなITサービス企業等を選好する投資家も多いだろう。また、話題性という意味では、経済産業省のベンチャー育成プログラム「J-Startup」に選定されている企業が上場すれば、露出も多い分だけ注目を集めそうだ。加えて、利益が出ている黒字銘柄を選好する向きも一定出てくるだろう。研究開発やグローバル展開等、成長を加速させるために赤字先行となる上場ベンチャーにとって、市場を納得させられるような長期目線のエクイティストーリーを提示出来るかどうかが、一層重要になりそうだ。
2019年は亥(いのしし)年。相場格言では、「亥(い)固まる」。格言どおり、今年のIPOは底堅さを見せられるだろうか。IPOや新興市場が堅調であれば、良い流れが続いてきた日本のベンチャー・エコシステム(生態系)の更なる発展に繋がるだけに、今後の展開には注目だ。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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中村 洋介
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(2019年01月11日「基礎研レター」)
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