2019年01月08日

【アジア・新興国】韓国の生命保険市場の現状-2018年のデータを中心に-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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1――加入状況

韓国の保険研究院が2018年に実施したアンケート調査1の結果によると、2018年における生命保険の世帯加入率は85.9%で、2017年の84.9%に比べて1.0%ポイント上昇した2。一方、生命保険加入世帯の平均加入件数は3.7件で2017年の4.0件に比べて0.3件減少している(図表1)。
図表1 韓国における生命保険の世帯加入率や生命保険加入世帯の平均加入件数の動向
地域別には、郡地域の加入率が87.7%で、大都市(86.1%)と中小都市(85.4%)を上回っている。世帯主の年齢階層別には50代が92.6%で最も高く、次いで40代(87.6%)、60代以上(84.0%)の順であった。注目すべきことは60代以上の加入率が毎年上昇していることである。

また、所得階層別には高所得世帯の加入率が86.9%で、中所得世帯(79.8%)や低所得世帯(69.0%)より高く、所得水準が高い世帯ほど加入率が高いという結果となった(図表2)。
図表2 地域及び世帯属性別加入率
2018年における生命保険の商品別世帯加入率は、疾病保障保険が67.7%で最も高く、実損填補型医療保険(33.9%)、死亡保険(29.4%)、災害傷害保険(22.7%)などの他の商品の加入率を大きく上回った(図表3)。一方、2018年における生命保険の個人加入率は79.5%で、2017年の78.2%に比べて1.3%ポイント上昇した。加入率を男女別にみると女性が80.8%で、男性の78.1%より高く、婚姻状態別には、既婚者が83.6%で未婚者の63.6%を大きく上回った(図表4)。
図表3 生命保険の商品別世帯加入率
図表4 生命保険の個人加入率や個人加入件数の動向(性別・婚姻状態別)
 
1 保険研究院(2018)「保険消費者アンケート調査」、調査対象:全国(済州道を除く)の満20歳以上の男女2,400人、調査期間:2018年5月25日~2018年7月21日。
2 一方、2018年における損害保険の世帯加入率は91.0%で、加入世帯の平均加入件数は3.7件であった。
 

2――収支の概況

2――収支の概況

2018年第2四半期における生命保険会社の保険料収入総額は26兆6724億ウォンで、前年同期の27兆3991億ウォンと比べて2.7%減少した。保険料収入総額の内個人保険が占める割合は87.3%で、団体保険の12.7%を大きく上回っている。個人保険の保険料収入は、死亡保険と変額保険は少し増加したものの、生存保険と生死混合保険は減少しており、保険料収入総額は前年当期の24兆6956億ウォンに比べて5.8%減少した23兆2717億ウォンになった。一方、団体保険の保険料収入は退職年金の販売拡大により、前年同期の2兆7035億ウォンより25.8%増加した(3兆4007億ウォン、図表5)。
図表5 生命保険の商品類型別保険料収入の推移

3――市場シェアの推移

3――市場シェアの推移

大手3社(サムソン生命、ハンファ生命3、教保生命)の市場シェア(保険料収入が基準)は、2018年第2四半期には47.8%で、前年同期の44.8%より上昇した。一方、ING生命の売却以降、大きく減少した外資系生命保険会社の市場シェアは、2014年以降再び上昇していたものの、2018年3月5日にミレアセット生命とPCA生命が合併し、PCA生命が外資系生命保険会社から除外されたことにより、2018年第2四半期のシェアは16.6%まで下落した(図表6)。
図表6 生命保険業界の市場シェアの動向
図表6をみると、2010年から2014年までは特に中小生命保険会社の市場シェアが大きく増加しているが、その理由としては、(1)銀行が所有している中小生命保険会社がバンカシュアランス販売により自社商品の販売を拡大したこと、(2)2012年3月から農協の農協共済が農協生保と農協損保に分離したことにより農協生命が生命保険業界の統計に含まれるようになったこと4、(3)2013年末にING生命が韓国を基盤とするMBKパートナーズ5に売却され、2014年第1四半期から中小生命保険会社としてカウントされたこと等が挙げられる。

2018年第2四半期には、大手3社の市場シェアが上昇し、中小生命保険会社の市場シェアが低下したことにより、市場への特定企業の集中度を表すハーフィンダール・ハーシュマン指数6は、1,037で、前年同期の970より少し上昇した(図表6)。
 
3 2010年9月以前には大韓生命。
4 従来は協会の外枠であった農協共済が農協生保になることにより業界の枠内に入ってきたのが中小生命保険会社のシェアを増加させたと言える。
5 MBKパートナーズは、2005年に設立したアジア最大規模の投資ファンド会社である。
6 ハーフィンダール・ハーシュマン指数(Herfindahl-Hirschman Index)とは、ある産業の市場における企業の集中度を表す指標のこと。市場に参入している企業の市場占有率(%)を二乗し、すべての企業における総和を求めたものである。
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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