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データで見る「夫婦の働き方」と子どもの数-超少子化社会データ考-変わる時代の家族の姿
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
3――夫婦の働き方と子どもの数の背景~変わる「理想の夫婦」像
「共働き世帯の方が子どもの数が多い」というデータをみると、必ずと言っていいほど「子どもが増えお金が足りないから、いたしかたなく妻が働きに出ているのではないか」という声が一部の高齢層からあがる。「嫌々妻が働きに出ているのはかわいそうだ、やむなしの選択だ」という解釈も散見される。
しかし、次のデータはそのような解釈に疑問を投げかける。
2015年の国の大規模調査の結果をみると、18歳から34歳の未婚女性に対して「理想のライフコース」をたずねた質問において、「専業主婦が理想のライフコースである」と回答した割合は18%となっており、専業主婦が理想の若い独身女性は5人に1人未満である。調査結果からは、現代の若い独身女性の理想は約7割(再就職コース34.6%+両立コース32.3%)が子どもを持ちつつ働くライフコースであった(図表4)。
専業主婦を理想とする女性の割合は、バブル崩壊の最中の1992年の調査では3人に1人であったが、その後5年で急減し、2割を切る状態が続いている(図表5)。
なぜ大きなライフコースの理想転換が若い女性たちの中でおこったのか。
これについては、専業主婦理想が3人に1人から5人に1人に急減した時代にちょうど就職をした筆者にはわからなくもない記憶がある。
当時の若い女性にとってあまりにも夢のない近い世代の夫婦の姿が露見し、ああはなりたくない、といったため息もあがっていた。そのように、当時は夫の稼ぎに頼りきるハイリスク・インカム型ライフコースに、若い独身女性たちが大きな疑問符を持ち始めた時代であった。
しかし、そうではあるものの、悲観するというよりも、だったら自分たちも稼げばいいのだ、といったように「リスクヘッジ・インカム型への理想転換」が行われた様子がデータからは垣間見える。若い女性たちの非常にフレキシブルな前向きな感性を表しているデータともいえるのではないだろうか。
共働き世帯のほうが子どもが多く、大半の女性が共働きで子を持つ家庭を理想のライフコースとしている、というデータを示した。
では、夫となる独身男性側の理想のライフコースはどうなっているかを次に見てみたい(図表6)。
2015年の国の大規模調査の対象となった10代から40代後半の未婚男性の各年齢ゾーンにおいて、専業主婦を妻とすることが理想と回答している男性は1割弱程度にとどまった。
先ほどの女性の結果と合わせても、現代の男女はその大半が共働き子持ち家庭を理想としているため、独身時代の理想にそったライフコースを進んでいるカップルに子どもが多い傾向が見られる、ということが出来るだろう。
4――おわりに
過去のレポートで示したが、夫婦の年齢差も1980年代では7割以上が夫年上の上位婚社会であった。しかし1990年代に大きな変化が生じ、2015年には55%まで年上夫が減少、同じ年齢や年上妻が増加してきている。
つまり、年上の夫が一人で稼ぐハイリスク型の夫婦の働き方から、二人で稼ぐリスクヘッジ型の夫婦の働き方がメジャーな働き方に変容を遂げてきたといえる。
リスクヘッジ機能の強い働き方の夫婦増加の中で、そのようなタイプの夫婦に子どもが多い傾向が見られることは非常に興味深い。
「夫婦の働き方支援」は子どもが日本の空の下に生まれくるための最も川上にある「夫婦のカップリング」について、その経済的なあり方に光をあて応援する施策であり、今後、少子化対策の大きな柱の1つとなることが期待できる支援ともいえるのではないだろうか。
共働き世帯応援への官民一体となった更なる支援の拡大が望まれるところである。
国立社会保障人口問題研究所.「出生動向基本調査」
厚生労働省.「人口動態調査」
厚生省人口問題研究所(1992)「独身青年層の結婚観と子供感」
国立社会保障・人口問題研究所. 「人口統計資料集」2017年版
総務省総計局. 「2015年 国勢調査」
独立行政法人 労働政策研究・研修機構.「早わかり グラフでみる長期労働統計」
国立社会保障人口問題研究所.「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」
天野 馨南子.“2つの出生力推移データが示す日本の「次世代育成力」課題の誤解-少子化社会データ再考:スルーされ続けた次世代育成の3ステップ構造-” ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2016年12月26日号
天野 馨南子. “ 「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方”ニッセイ基礎研究所 基礎研REPORT(冊子版) 2017年4月号
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(2019年01月07日「基礎研レポート」)
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