2018年10月09日

金相場の低迷はいつまで?~投資家の金離れが鮮明に

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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3.金融市場(9月)の振り返りと当面の予想

(10年国債利回り)
9月の動き 月初0.1%台前半でスタートし、月末も0.1%台前半に。     
月初、日銀が9月の国債買入オペの一部で買入れ回数を減らす方針を示したことを受けてやや上昇したが、1回当たりの金額が増額されたことや国債入札の無難な結果を受けて金利が抑制され、中旬にかけて0.1%を若干上回る水準での膠着した推移が継続。その後、好調な経済を背景とする米金利上昇や日銀の超長期国債買入れ減額を受けて下旬に若干水準を切り上げたが、月末にかけて0.1%台前半での推移となった。

当面の予想
今月に入り、米金利上昇を受けて上昇し、足元は0.1%台半ばで推移している。この間、日銀は臨時オペ等の金利抑制策を発動していないことから、現状程度の金利水準は許容していると考えられる。日銀は今後もタイミングを見計らいつつ国債買入れ額を緩やかに減額していくと予想され、このことは金利の上昇要因となるが、一方で中国経済減速への懸念等が金利上昇の抑制に働く。また、仮に長期金利が0.2%を超えそうになれば、日銀が臨時オペもしくは指値オペで金利上昇を抑えにかかるとみられることから、当面は0.1%台半ばから後半での推移を予想している。
日米独長期金利の推移(直近1年間)/日本国債イールドカーブの変化/日経平均株価の推移(直近1年間)/主要国株価の騰落率(9月)
(ドル円レート)
9月の動き 月初111円でスタートし、月末は113円台半ばに。
月初、111円台での推移が続いた後、日米貿易摩擦への懸念から7日に110円台半ばへ。しかし、英国のEU離脱への警戒緩和に伴いリスクオンの円売りが入り、11日には111円台半ばへ戻した。その後中旬にかけては、トルコの利上げに伴う新興国不安の後退や米中通商協議再開への期待などを受けて、111円台後半から112円台前半での堅調な展開に。下旬には、米中貿易摩擦への警戒感一服や好調な米経済を背景とする株高・利上げ観測を受けて円安ドル高が進み、月末は113円台半ばで終了した。

当面の予想
今月に入り、良好な米経済指標の発表を受けて一時114円台半ばまで円安が進んだが、中国の預金準備率引き上げを受けた中国不安の高まりでリスク回避の円買いが入り、足元は113円台前半で推移している。今後も好調な米経済への期待が続き、米金利上昇を通じたドル高圧力が続きそうだ。ただし、米金利上昇は米株価の重荷となるほか、ドル高圧力の高まりは中国も含めた新興国からの資金流出懸念を喚起することでリスク回避的な円買いを誘発する。当面は強い米経済を背景とするドル高とリスク回避的な円高が交錯する形となり、ドル円の方向感は出にくくなると見ている。
ドル円レートの推移(直近1年間)/ユーロドルレートの推移(直近1年間)
(ユーロドルレート)
9月の動き 月初1.16ドル台前半でスタートし、月末は1.15ドル台後半に。
月初、好調な米経済指標を受けて4日に1.15ドル台へ下落したが、英国のEU離脱交渉に対する懸念後退で6日には1.16ドル台前半を回復。しばらく一進一退の展開が続いた後、ECB理事会後にドラギ総裁が物価上昇に自身を示したことでユーロが買われ、14日には1.16ドル台後半へ。20日には米中貿易摩擦への警戒一服でリスク選好的なドル売りが入り、1.17ドル台後半へと上昇した。しばらく1.17ドル台での推移が続いたが、月末はイタリア財政不安の高まりでユーロが売られ、1.15ドル台後半に下落した。

当面の予想
 今月に入り、良好な米経済指標を受けたドル買いとイタリア財政懸念に伴うユーロ売りが入り、足元は1.15ドル付近に下落している。当面は好調な米経済を背景とするドル高圧力が続く一方で、今後山場を迎えるイタリア財政問題への懸念が続き、ユーロドルは下押しされそうだ。英国のEU離脱交渉に対する懸念もユーロの重石となる。当面のユーロドルはやや弱含むと予想している。
金利・為替予測表(2018年10月9日現在)
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

(2018年10月09日「Weekly エコノミスト・レター」)

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