2018年09月12日

データで見る「ニッポンの独身者は誰と暮らしているのか」-「結婚のメリットがわからない」独身者の世帯(居場所)のカタチとは-

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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1――はじめに:急増する「交際相手がいない」男女

筆者が日本の未婚化(2015年:50歳時点において男性の4人に1人、女性の7人に1人に結婚歴がない)についてデータ分析を行うようになってから、海外のメディアの問い合わせも少なくなくなった。
海外(特に多民族国家や移民の歴史が長い国)においては宗教上・民族上等の理由から1つのパートナー制度に絞らず、法的に複数展開していることがある。ゆえに「法律上結婚していない」事に関しては、日本がどうかはさておき「結婚制度の多様性の問題」という視点から、驚かれにくい。
 
しかし、次のデータに関しては「ありえない」という反応が高い確率で返ってくる(図表1)。
18歳から34歳の独身でいる男女のうち、異性の交際相手をもたない男女の割合を見てみると、2000年あたりから大きく増加し続けている。直近の2015年の調査では独身男性の7割、独身女性の6割に交際相手がいない。
 
調査対象となった年齢ゾーンが18歳から34歳というのを知るとますます「本当か。どうしてなのか。」とひたすら首をひねるのである。
 
彼らがいぶかしがるのも無理はない。
経済的にみるなら、もし独身者が経済的に自立して1人世帯という場合、それは最も非効率的なコスト構造(お金がかかる)の暮らし方である。
OECDの貧困世帯の定義に使用される計算でも、2人世帯では1人世帯よりもコストが7割にまで落とせることが示されている。光熱費や家賃など固定費を含む費用は世帯人数によって逓減しやすく、また食品もまとめ買いによって少量購入するより大きくコストを下げることができる。
 
経済原理でいえば、製品供給者側(売り手)からすれば「単身世帯」者は単価が高くなるために「儲かる相手」ではあるが、需要者側(買い手)にとっては単身世帯の暮らしは、消費コストが高い(コストが2人世帯より1.4倍程度も多くなる)ために、貯蓄に影響しかねない暮らし方なのである。
 
端的にいうと「お金持ちの遊興暮らし」としてはおすすめできるとしても、少なくとも金銭的な無駄を省きたい暮らしぶりを望む男女には最も向かない暮らし方なのである。
【図表1】18歳~34歳「交際相手がいない」独身者の割合
そこで、本レポートでは統計的には未婚化と非交際化が急増しているニッポンの独身者について、暮らしのコスト構造を大きく支配する世帯構造に注目し、一体彼らがどのような世帯構造で暮らしているのか、国勢調査の結果を用いて検証してみたい。
 

2――国勢調査に見る年齢別・男女別 「独身者」の割合

2――国勢調査に見る年齢別・男女別 「独身者」の割合

1|2015年の20歳以上・独身者の割合は22%
最初に、本レポートでは国の統計上「未婚」と標記される結婚歴のないグループについて分析する。死別者、離別者については「独身者」に含めない。本レポートで明らかにしたいテーマが「結婚をせずに独身でいる男女の世帯構造(居場所のカタチ)とはどのようなものか」であることから、結婚経験のある死別者、離別者についてあえて含めないことを前提としたい。
 
まず最新の国勢調査結果から、日本における男女総数ベースの配偶状況を確認しておきたい(図表2)。
【図表2】2015年国勢調査 20歳以上男女の配偶の状況(上段:総数、下段:左-男性/右-女性)
日本において、20歳以上の男女合計においては、22.2%(5人に1人以上)は結婚歴がない独身者である。男女別に見ると男性の方が女性よりも独身者割合が高く、4人に1人以上は独身者ということになる。

他に男女差がはっきりしているのは「死別」であり、約5倍ものポイントの差となっている。これは女性の方が長寿であることと、男性が年上である結婚が上の世代ほど多いために生じている。人数差としては、50代後半で同じ年齢ゾーンでの死別経験かつ配偶者のいない男女の差が10万人を超える差(女性の方が多い)となり、その差は60代後半で約50万人、70代後半で120万人を超える。
2|年齢ゾーン別の独身者割合
次に男女別に、年齢ゾーン別独身者の割合を確認したい(図表3)。
男女とも20代前半ではともに約9割が独身である。割合的に(この年齢では生物学的に男女がほぼ同数であるので人数的にも)バランスしている。
しかし、20代後半では、女性の約6割、男性の約7割が独身で、男性の独身割合が女性を大きく超え始める。
30代前半になると女性独身者はすでに3人に1人にまで減少する一方で、男性は半数近く独身であることがわかる。この男女格差は年齢とともにさらに上昇し、50代後半には、同年齢ゾーンの女性の約2倍、男性独身者が存在する状況となる。
 
ここで、50歳以降も独身者割合が減少していることから「いつかは結婚するのでは?」と解釈するのは誤りである。
日本において男女の生涯未婚率(50歳時点婚歴なし割合)が急上昇し始めたのは1990年の国勢調査後からである。1990年に50歳であった2015年に75歳の男性は、すでに彼らが50歳の時点で5%程度しか独身者がおらず、その割合のまま持ち上がる形となっている。
高齢者の独身者率が低いのは、彼らが50歳の段階で、すでにその割合の独身者率に達していたからである。これが、50歳時点婚歴なし者割合が「生涯未婚率」とよばれる所以である。
【図表3】 年齢ゾーン別 未婚者割合(左:男性、右:女性)
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

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