2018年08月09日

貸出・マネタリー統計(18年7月)~投信が大幅に下方修正、減少ペースが加速

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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4.マネーストック: 投資信託が大幅に下方修正、減少ペースが加速

8月9日に発表された7月のマネーストック統計によると、市中に供給された通貨総量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比3.00%(前月改定値は3.08%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.59%(前月改定値は2.65%)とともに前月からやや低下した(図表12)。M2の伸び率は2014年8月以来、M3の伸び率は2016年3月以来の低水準にあたる。
(図表12) M2、M3、広義流動性の伸び率/(図表13) 現金・預金の伸び率
M3の内訳を見ると、最大の項目であり、全体の約半分を占める預金通貨(普通預金など)の伸び率が前年比6.7%(前月改定値は6.8%)、現金通貨の伸び率が4.0%(前月は4.2%)とそれぞれ低下したほか(図表13)、準通貨(定期預金など、前月改定値▲1.7%→当月▲1.8%)の伸びがマイナス幅を若干拡大した(図表14)。
(図表14)投資信託・金銭の信託・準通貨の伸び率 また、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)については、今回過去に遡って大幅な見直しが行われた2。広義流動性全体の伸び率は前年比2.33%(前月改定値は2.48%)と、前月から低下した(図表12)。

内訳では、既述の通り、M3の伸び率がやや低下したほか、残高がそれなりに大きい金銭の信託(前月改定値4.4%→当月4.0%)の伸び率が低下、投資信託(元本ベース・前月改定値▲5.9%→当月▲6.5%)の伸び率がマイナス幅を拡大し、広義流動性全体の伸びを押し下げた(図表14)。
なお、注目度の高い投資信託(元本ベース)は、今回の見直しによって残高が大幅に下方修正されている。6月の平均残高は、従来100兆円を超えていたが、見直し後は90兆円を割り込み、下方修正幅は11兆円余りに達している(図表15)。また、6月の前年比についても、従来は▲1.5%であったが、見直し後は▲5.9%へとマイナス幅が大きく拡大しており、従来考えられていたよりも減少ペースが加速している(図表16)。
 
今回の見直しは、6月に公表された1-3月期資金循環統計の改定を踏まえたもので、資金循環統計同様、一部の金融機関について投資信託とみなすべき商品がより広範囲に及ぶことが判明したため、これを反映させたことなどが大幅な下方修正に繋がった。マネーストック統計では、全体の発行総額から金融機関等の保有分を控除したものを通貨保有主体(一般法人、個人、地方公共団体など)の保有分として公表している。従って、今回のように金融機関保有分が上方修正されると、同統計の対象である通貨保有主体の保有額が下方修正されることになる。
(図表15)投資信託の新旧比較(残高)/(図表16)投資信託の新旧比較(前年比)
 
2 見直しの理由は、統計制度の改善余地が大きいことが判明したため
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

(2018年08月09日「経済・金融フラッシュ」)

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