2018年08月06日

データで見る「東京一極集中」東京と地方の人口の動きを探る(上・流入編)-地方の人口流出は阻止されるのか-

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

文字サイズ

2――2017年・人々はどこから東京都へやってきたのか

まずは昨年、東京都へどこから人々がやってきたのかを総数で見てみたい(図表3)。
総務省のデータによれば、2017年1年間だけで、41万9千人が東京都へ他のエリアから転居してきている。
その内訳を転居前エリア別にみてみると、わかりやすく東京都に近い関東エリアがベスト3を占めている。神奈川県が全体の2割を占める8万人、埼玉県・千葉県が1割を超える約5万人規模での流入である。
 
流入ベスト10エリアは年間1万人以上流入してきているが、三大都市である名古屋・大阪を有する愛知・大阪、また地方中核都市を有するエリアからの流入が目立っている。
 
また1万人未満5千人以上流入してきているエリアが8エリアある。
関東・中部・東北など、飛行機を利用しなくても東京都への移動が負担となりにくい比較的陸路アクセスのよいエリアが目立つ。
 
全体の流入傾向としては、距離感にかかわらず地方中核都市のあるエリア、もしくは、東京都に比較的近い陸路アクセス良好エリアが多い、ということが出来るだろう。
また流入がおこった前年の2016年各エリア人口の何%が東京へ流入したかをみると、ほぼ総流入数に占める割合のランキング通りであるが、山梨県だけは0.6%と東京への流入率が高めであることが指摘できる。
【図表3】 2017年年間「東京へ向かう人々」ランキング(男女計)
次に男性のみ、女性のみの流入を個々に見てみたい(図表4、図表5)。
 
男性、女性それぞれ、流入数のベスト3はやはり関東(神奈川、埼玉、千葉)である。
恐らくは仕事や学業の場を求めて、地元に近いエリアとしての東京都に移動してくる姿が見て取れる。
最も多いのは男女とも神奈川県の約4万人(男女とも流入総数の2割)である。データからは男女関係なく似たような規模で、東京都へと移動してくる様子がうかがえる。
 
男女ともにそれぞれ年間5千人以上流入してくるエリアが10エリアあるが、やはり距離に関わらず三大都市エリアである大阪、愛知、また地方中核都市のあるエリア、東京都への陸路アクセスのよいエリアといえるだろう。
 
転居に際しての情報収集、引越距離、環境変化による精神的不安、親戚・友人の居住の状況等、やはり住み慣れた環境から可能な限り距離的にも環境的にも激変ではないところとしての巨大都市東京都を選ぶ傾向があるように見える。
 
山梨県は前年度エリア人口に対する東京都への流入数の割合が男女とも0.6%と高く、東京都に隣接しているため、神奈川県、埼玉県、千葉県に近い流出割合であることが注目される。
 
以上より、東京都への人口一極集中を考えるとき、東京から離れた、または中核都市のないエリアは比較的安心だ、と言い切れるのだろうか。
 
恐らくそうではないだろう。当データはあくまで東京都への流入人口の「直前の住居」エリアの分析に過ぎず、その人がさらにその前にどこに住んでいたかは不明である。
 
例えば九州であれば九州全域から福岡市、東北であれば東北全域から仙台市へと、就学・就業等で移動がまずは起こる傾向がある(1ステップ)。
生まれ育ったエリアに近い都会である程度都会生活に慣れた人々が、さらに大都市である東京都へ移動(2ステップ)するという2ステップ型を踏む一極集中が生じることも考えておかねばならないだろう。
【図表4】 2017年年間「東京へ向かう人々」ランキング(男性計)
【図表5】 2017年年間「東京へ向かう人々」ランキング(女性計)
Xでシェアする Facebookでシェアする

生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【データで見る「東京一極集中」東京と地方の人口の動きを探る(上・流入編)-地方の人口流出は阻止されるのか-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

データで見る「東京一極集中」東京と地方の人口の動きを探る(上・流入編)-地方の人口流出は阻止されるのか-のレポート Topへ