2018年07月04日

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5――不動産の所有・賃借の選択

1企業財務との整合性が取られている限り所有・賃借の選択は大きな問題にならず
不動産(建物・土地)の所有・賃借の選択においては、企業財務が決定的な制約条件になるため、それとの整合性を取ることが前提となる。実際の所有・賃借の選択では、企業財務の要素に加え、賃料・地価等の不動産市況や建築費などのコスト面、顧客等関係先や自社の既存事業所との近接性や交通アクセス(従業員の通勤アクセス等)などのロケーション、収容人員数に応じた必要なオフィス規模の確保、入居時期、BCP要因、ワークプレイスづくりの自由度(個別性の強弱の程度)、事業の成長ステージに応じたオフィス規模のフレキシビリティ、使用期間、施設の機密性などセキュリティ面など、複数の要因を勘案し最適化して決定されるとみられる。

例えば、成長期にある企業なら、財務体質が良好でも所有を選択せず、社員増に機動的に対応できる賃借を選択するかもしれない。また、新築ビルの一棟借りなら、自社ビルと遜色のない最新のオフィスインフラを取り込めるケースが多い。

さらに、経営層が企業財務に対する方針として、バランスシート(財務体質)と損益・キャッシュフローのどちらを重視しているかにも、大きく影響を受けるとみられる。経営層がバランスシートを重視する場合は、バランスシートが膨らまない賃借を、損益・キャッシュフローを重視する場合は、賃料負担のない所有を選好する可能性が高まると考えられる。

いずれにしても、財務体質との整合性が取られている限り、オフィスの所有・賃借の選択は大きな問題にならず、着目すべき点は、従業員の創造性を引き出すオフィスづくりの巧拙となる。
2アセットタイプにより所有・賃借の選択の際に重視される要因が異なる
前述した通り、大まかに言えば、企業財務との整合性が取られている限り、オフィスの所有・賃借の選択は大きな問題にならないと考えてよいが、本社、研究拠点、工場の事務棟などワークプレイスのタイプによって、その選択の際に重視される要因が異なるように思われる。

本社オフィスの場合は、1で挙げた考慮され得る要因の多くに影響を受けるため、企業によって最適解は異なり、「持たざる経営」のようにどちらか一辺倒の選択がなされるわけではなく、所有を選択する企業もあれば賃借を選択する企業もあるだろう。一方、工場の場合は、ワークプレイスづくりの自由度が高くなければならない(=個別性が非常に強い)、使用期間は移転・撤収がなければ半永久的で極めて長い、施設の機密性が高いなどの要因の影響が大きく、所有を選択する企業が極めて多いとみられる。研究拠点は、アセットタイプとしては、執務エリアは本社オフィス、実験エリアや試作エリアは工場に近いが、ワークプレイスづくりの自由度、使用期間、施設の機密性などは工場とほぼ同じであり、所有を選択する企業が多いと思われる。

しかし、最近では、三菱商事系の産業ファンド投資法人など物流施設、研究開発施設、工場など産業用不動産へ専門に投資を行うREIT(不動産投資信託)が登場しており、事業会社はオフィスだけでなく、産業用不動産についても、REITとセール・アンド・リースバック取引を行う選択肢が出てきている。例えば、ソニーは、2013年に当時自社所有していた研究開発型大規模オフィスビル「ソニーシティ大崎」(東京都品川区、2011年竣工)のセール・アンド・リースバック取引を三井不動産系の日本ビルファンド投資法人等と行った(譲渡価額は総額1,111 億円、ビル名はNBF大崎ビルへ変更)。
 

6――組織スラックを備えた経営の実践

6――組織スラックを備えた経営の実践

1オフィスづくりの創意工夫を競い合う時代に
(1) クリエイティブオフィスの基本モデルを実践する欧米の先進企業
前述した通り、クリエイティブオフィスの基本モデルは、オフィスをコミュニティやエコシステムととらえるという大原則の下で、5つの具体的な原則から構成される(図表2)。先進的なグローバル企業は、既にこのような考え方を取り入れ実践しており、世界的には、欧米企業を中心にオフィスづくりの創意工夫を競い合っている。海外の先進企業では、社会を変える革新的な製品・サービスの企画開発には、オープンイノベーションの推進とともに、創造的なオフィス環境の整備が必要条件であると考えられている。

例えば、グーグルのオフィスの写真を見ると、オフィス内の移動手段としての滑り台や滑り棒、ビリヤード台、バランスボール、思索にふけるためのブランコ、エレキギターなど楽器の演奏やゲームができる防音仕様のゲームルーム、奇抜で多様なコミュニケーションスペースや休憩スペース、派手な飾り付けを施した社員のデスクなど、一見すると仕事に関係のないようなものが目に飛び込んでくる。オフィス内での飲食を無料で楽しめるのも有名な話だ。従業員にとって至れり尽くせりともいえる、個性的で遊び心満載のオフィスづくりがなされている。

グーグルが従業員に贅沢なまでの快適なオフィス空間を提供するのは、オフィス空間が従業員の創造性に大きく影響を与えることを熟知しているからだ。優秀な人材を採用しているとの確信の下に、創造的で自由な環境さえ提供すれば、優秀な従業員の創造性は最大限に引き出され、イノベーションが生み出されるとの考え方が、経営陣に浸透しているのである。

グーグルとは対照的に、人材採用に自信を持てない経営トップは、従業員を性悪説的にとらえがちとなり、創造的なオフィス空間を提供するとの考えには至らない。
(2) 事例:最先端の壮大な新本社屋Apple Parkを構築したアップル
アップルでは、2017年にカリフォルニア州クパチーノの広大な敷地(約71万㎡)に構築した、新本社屋Apple Parkに約12,000人の従業員が移転した21。Apple Parkの総工費は50億ドル22と言われており、自社ビルへの投資としては極めて巨額だ。

この新キャンパスの構築は、創業者の亡きスティーブ・ジョブズ氏が直接指揮・主導したプロジェクトだった。アップルから一時退いていたジョブズ氏が1986年に買収した、ピクサー・アニメーション・スタジオ23において、ジョブズ氏は、従業員間のコラボレーションを促す先進的・創造的なオフィスデザインをいち早く取り入れ、創造的なオフィスづくりを指揮・主導した。Apple Parkについても、ジョブズ氏は、「創造とコラボレーションの拠点たれ」と思い描いていたという24。アップルのChief Design Officer(CDO:最高デザイン責任者)であるジョナサン・アイブ氏が述べている通り、ジョブズ氏ほど、「従業員にとって活気あるクリエイティブな環境の創造と支援に多大なエネルギーを費やしてきた」経営者は、いないのではないだろうか。

Apple Parkのメインのオフィス棟は、世界最大規模の曲面ガラスですっぽりと覆われた、円環状(ドーナツ状)をした低層の4階建ての壮大かつ巨大な建物(床面積は約26万㎡)であり、宇宙船のようなリング形の建築のため、「リング(指輪)」と呼ばれる。Apple Park内には、リングの他に、Apple Store(アップル直営の小売店舗)、一般にも開放されるカフェを併設したビジターセンター、10万平方フィート(=約9,290㎡)規模の社員向けフィットネスセンター、セキュリティで管理された研究開発施設、「Steve Jobs Theater」と命名された席数1,000のシアターなどが設置されている。また、リング内側の広大な緑地部分(中庭)には、社員用として各2マイル(=約3.2km)の長さに及ぶウォーキングおよびランニングコース、果樹園、草地、人工池も設けられており、従業員の健康にも十分配慮した設えとなっている。

環境面では、乾燥に強い約9,000本ものカリフォルニア原産の樹木をキャンパス内に植樹している。またCEO(最高経営責任者)のティム・クック氏が「Apple Park内の建物は、世界で最もエネルギー効率に優れたものの1つで、新キャンパスは完全に再生可能エネルギーだけで運営される」と述べている。屋上部分に17メガワット分のソーラーパネルを設置したApple Parkは、敷地内で太陽エネルギーを運用する世界最大規模の施設になるという。この太陽光パネル設備や4メガワットのバイオガス燃料電池などの再生可能エネルギーで使用電力の100%を賄っている。また、自然換気型の建物としては世界最大で、1年のうち9か月間は暖房も冷房も不要になると見込まれている。これらの環境配慮の取組により、Apple Parkは、今や北米最大のLEEDプラチナ25認証取得オフィスビルとなっているという。

最先端の建築技術や環境技術などを惜しげもなく駆使し、従業員の創造性やコラボレーション、健康の促進に重点を置いた、Apple Parkは、ジョブズ氏にとってクリエイティブオフィスの集大成だったのではないだろうか。アイブ氏は、「新キャンパスでは、最も先進的な複数の建物をなだらかな起伏の緑地と連結させることで、人々の創造、協力、協働の場としてふさわしい、開放的な環境を生み出すことができた」と述べている。また、クック氏は「ジョブズ氏は、Apple Parkを今後何世代にもわたってイノベーションの拠点とすることを企図していた」と述べており、ジョブズ氏は、会社がこだわり続けて変えてはいけない、世界を良くしたいという社会的ミッションや経営理念・企業文化の象徴として、Apple Parkを位置付けていたのではないかと思われる。

Apple Parkの事例考察から導出できる、日本企業へのインプリケーションは、従業員の創造性・コラボレーション・健康の促進を通じたイノベーションの継続的な創出、企業文化の醸成や経営理念の体現のためには、ワークプレイスへの戦略投資を惜しんではいけないということだろう。アップルのように、ワークプレイスへの投資に50億ドルもの巨額の資金を投下できる企業は、世界的にもそう多くはないだろう。日本企業にも50億ドル規模のオフィス投資を推奨するわけではないが、クリエイティブオフィスの重要性を十分に認識せずに、オフィス投資に根拠も無く保守的なスタンスを取ることだけは避けて欲しい。さもなければ、国際競争の土俵に上がることすら出来ないということを、日本企業は肝に銘じるべきではないだろうか。
 
21 2017年2月22日発表のプレスリリースでは、2017年4月から移転を開始し、移転の完了には6か月以上かかり、建設工事は2017年夏一杯まで行われる予定としていた。旧本社もクパチーノに立地していた。米国の大企業の本社は、広大な敷地に構築されることが多いため、本社施設全体を「キャンパス」と呼ぶことが多い。
22 アップルは公表していないが、多くのメディアが50億ドルと報道している。
23 ジョージ・ルーカス氏が設立した映像製作会社ルーカスフィルムのコンピュータ部門をジョブズ氏が買収し、ピクサーとして独立させたもの。2006年よりウォルト・ディズニー・カンパニーの完全子会社となっている。
24 アップル「Apple Parkを社員向けに4月オープン」『プレスリリース』2017年2月22日より引用。Apple Parkの施設概要、ティム・クック氏やジョナサン・アイブ氏のコメントに関わる以下の記述については、同プレスリリースを引用・参考とした。
25 LEEDプラチナは、米国発の国際的な建築物の環境性能評価制度「LEED」における最高評価レベルである(脚注19を参照)。
2組織スラックとしての創造的オフィス環境の重要性
(1) 創造性を育むには組織スラックに投資するとの発想が不可欠
企業がイノベーションを生む創造性を大切に育むためには、経営資源をぎりぎり必要な分しか持たない「リーン(lean)型」の経営ではなく、経営資源にある程度の余裕、いわゆる「組織スラック(slack)」26を備えた経営を実践しなければならない。

例えば、従業員が気軽に集える共用スペースは、イノベーション創出のために確保しておくべき組織スラックであるが、リーン型の経営を徹底すれば、仕事に関係のない無駄なものとして撤去されてしまうだろう。また、様々な利用シーンに応じて多様性を取り入れたオフィス空間も、リーン型の経営者には極めて非効率な空間とみなされ、維持管理の手間やコストが相対的に掛からない画一的な空間に変更されてしまうだろう。

これまで多くの日本企業がそうであったように、効率性のみを追求したオフィス空間は、個性のない均質なものになってしまう。そうすると、目先の不動産コストは削減できても、それと引き換えに何よりも大切な社内の活気や創造性が失われ、企業内ソーシャル・キャピタルは破壊され、イノベーションが生まれない悪循環に陥ることになるだろう。効率性・経済性ありきの戦略は、結局中長期で見れば、経済的リターンをもたらさないと言える。創造性を育み、結果として中長期での経済的リターンを獲得するためには、「組織スラックに投資する」という発想が欠かせない。

オフィスづくりに組織スラックの要素を取り入れるには、経営トップ自身の感性や創造性が重要だ。従業員の創造性を引き出すことが経営者の重要な責務であることを感性で理解していないと、創造的なオフィスづくりは難しいのではないだろうか。金銭的メリットの裏付けがなければ着手できないなら、本末転倒だろう。自らの感性に基づいて、先進的・創造的なオフィスづくりを進め、その重要性を組織に根付かせるべきだ。

「Good Design is Good Business」とは、IBMの2代目社長であるトーマス・ワトソン・ジュニアが1956年に語った言葉だ。「快適なオフィス環境は社員の士気と生産性に貢献する」という意味であり、IBMのグローバル共通の経営ポリシーとして受け継がれている。
 
26 組織スラックの考え方については、拙稿「震災復興で問われるCSR(企業の社会的責任)」ニッセイ基礎研究所『研究員の眼』2011年5月13日、同「イノベーション促進のためのオフィス戦略」『ニッセイ基礎研REPORT』2011年8月号、同「アップルの成長神話は終焉したのか」ニッセイ基礎研究所『基礎研レポート』2013年10月24日を参照されたい。
(2) オフィス改革とワークスタイル変革はセットで推進
創造的なオフィス空間を活かすためには、柔軟で裁量的なワークスタイルの許容が不可欠であり、働き方にも組織スラックを取り入れる必要がある。創造的なオフィス空間を用意しても、従業員が決まった勤務時間に縛られたり、インフォーマルなコミュニケーションのためのスペースを利用するのは怠惰をむさぼっているとみなされるような雰囲気が社内に残っていれば、折角の創造的なオフィス空間も宝の持ち腐れとなるだろう。また、イノベーションが起こり得る創造的な環境を確保するためには、会議やミーティングで役職や部門を気にせずに創造的なコミュニケーションや議論を交わすことができる、社内ルールや企業文化の醸成が求められる。

グーグルでは、勤務時間の20%を自由に使って好きなことに取り組める「20%ルール」を制度化しており、従業員は自分でプロジェクトを立ち上げたり、他のプロジェクトチームに参加したりすることができるという。従業員各々の担当業務については、勤務時間の80%で完了させ、残りの20%は担当業務を離れて、各々の能力や創造性を存分に解き放って、グーグルの未来について考え抜いて欲しい、との経営陣の思いが込められているのではないだろうか。働き方に組織スラックの要素を制度的に取り入れた好例である。また同社では、働きやすい環境づくりや社内イベントなどを通じて社内文化の醸成に取り組む担当役員として、チーフ・カルチャー・オフィサー(CCO)を置いている。

今、仕事をライフワークととらえ、仕事を通じて社会に貢献することに喜びを見い出すという傾向が若手人材を中心に強まっているように思われる。創造性豊かで能力の高い人材は、仕事と生活を切り分けるのではなく、むしろ融合一体化させる働き方を志向している。このような人材の確保・定着のためには、企業は、創造的で自由なオフィス空間の整備と柔軟で裁量的なワークスタイルへの変革を、セットで推進することが求められている。

米国でハイテク企業が多く集積するシリコンバレーやシアトルなどでは、企業間で優秀な人材の引き抜き合戦が激しく繰り広げられており、企業は優秀な人材の確保・定着のために、必然的に働きやすいオフィス環境を整備・提供せざるを得ない。インテル(米カリフォルニア州サンタクララに本社を置く)のファシリティマネジメント(FM)部門では、社員の士気と満足度を向上させるために、社内顧客の期待値を越えるファシリティやオフィス・サービスを提供し、この「サービスエクセレンス」によって、社員に驚きと感動を引き起こす「WOW」体験を提供することが目標とされている27。マイクロソフト(米ワシントン州レドモンドに本社を置く)では、働き方の自由度(選択肢の多様性)が「ワークプレイス・アドバンテージ」を生み、それが優秀な人材を惹きつけ、企業競争力の差に結び付くと考えられている28

一方、日本企業では、ワークスタイルの変革を含めたオフィス環境の整備の巧拙が人材確保に大きな影響を及ぼすとの危機感は、未だ欠如しているのではないだろうか。
 
27 大森崇史「つくばオフィスにおけるFMの取組み」『JFMAフォーラム講演資料』2014年2月14日より引用。
28 似内志朗「ダイバーシティの時代」『JFMAフォーラム講演資料』2014年2月14日より引用。
 

7――魂を注入した創造的なオフィスづくりが急務

7――魂を注入した創造的なオフィスづくりが急務

1基本モデルに注入すべき魂はワークスタイル変革と経営理念
クリエイティブオフィスの基本モデルは、前述した大原則および5つの具体的原則にほぼ固まりつつあり、近未来や次世代のオフィスでも、この基本モデルは大きく変わらないだろう。この基本モデル自体の構築に各社が知恵を絞る時代は既に過ぎ、もはや、企業がクリエイティブオフィスの基本モデルを一刻も早く取り入れ、それに「魂を入れて」、構築・運用を始めるべき時代が到来していると言っても過言ではないと思われる。

筆者は、クリエイティブオフィスの基本モデルという器に注入すべき「魂」とは、前述のワークスタイルの変革とともに、何よりも重要なのが各社の経営理念であると考える。そして、「魂を入れる」とは、経営理念にふさわしい「オフィスのロケーションの選択」、「インフィル(内装)を含めた不動産としての設えの構築」、「オフィスの愛称の選択」などを実践することである。

経営理念にふさわしい各々の具体例としては、「オフィスのロケーション」では創業の地、「内装を含めた不動産としての設え」では、フラットな組織を志向する経営トップが島型対向レイアウトではなく、ひな壇を排したフラットなレイアウトであるユニバーサルプランを選択すること、「オフィスの愛称」では、創業の精神、今後の経営の方向性、オフィスの設計コンセプト等を連想できるようなもの(例:街をモチーフとした設計デザインであれば、「シティ」という言葉を入れ込む)、等が挙げられる。
2基本モデルを各社仕様にカスタマイズして起動させるプロセスが重要
経営トップには、クリエイティブオフィスを構築する段階で、オフィスに経営理念をしっかりと埋め込み、オフィスを経営理念や企業文化の象徴と位置付けて、全社的な拠り所として求心力を持つ場に進化させていくことが求められる。そしてクリエイティブオフィスの運用段階では、ワークスタイルの変革をしっかりと遂行しなければならない。

クリエイティブオフィスの基本モデルに「魂」を注入するということは、基本モデルを各社仕様にカスタマイズして実際に起動させるプロセスであると言える。

クリエイティブオフィスの考え方を取り入れ実践する日本企業は、一部の大企業やベンチャー企業など、未だごく一部の先進企業にとどまっているとみられる。創造性を育み本格的なイノベーションを生み出せるような組織風土を醸成し、そしてグローバル競争の土俵に立つためにも、一刻も早く、経営理念とワークスタイル変革という「魂」を注入した、創造的なオフィスづくりに着手することが求められる。

今後、日本企業が創造的なオフィスづくりに乗り出す際に、本稿で述べてきたクリエイティブオフィスの考え方が取り入れられ実践されることを期待したい。

<参考文献>

※メディア報道、各社ニュースリリースは割愛した。弊社媒体の筆者論考は、全文を弊社ホームページにて公開している。弊社ホームページ「百嶋 徹のレポート」を参照されたい。

・大森崇史「つくばオフィスにおけるFMの取組み」『JFMAフォーラム講演資料』2014年2月14日
・経済産業省、株式会社日本取引所グループ『健康経営銘柄2017選定企業紹介レポート』2017年2月21日
・ジョーンズ ラング ラサール「ヒューマン・エクスペリエンスがもたらすワークプレイス」(2017年6月22日)
・東京都環境局地球環境エネルギー部計画課「グリーンビル事例(仙川キユーポート(キユーピー株式会社))」『東京グリーンビルレポート2015』2015年7月
・似内志朗「ダイバーシティの時代」『JFMAフォーラム講演資料』2014年2月14日
・日経BPネット「ワクスタの視点:雑談歓迎、『化学反応』起こすコニカミノルタ」『ワクスタ(The Work Style Studio)』2016年6月16日
・百嶋徹「第7章・第1節 イノベーション促進のためのオフィス戦略」『研究開発体制の再編とイノベーションを生む研究所の作り方』技術情報協会(2017)
・同上「クリエイティブオフィスのすすめ─創造的オフィスづくりの共通点」『ニッセイ基礎研REPORT(冊子版)』2018年5月号
・同上「クリエイティブオフィスのすすめ─創造的オフィスづくりの共通点」ニッセイ基礎研究所『基礎研レポート』2018年3月14日
・同上「コーポレートガバナンス改革・ROE経営とCRE戦略」ニッセイ基礎研究所『基礎研レポート』2017年3月29日
・同上「クリエイティブオフィスの時代へ─経営理念、ワークスタイル変革という「魂」の注入がポイント」『ニッセイ基礎研REPORT(冊子版)』2016年5月号
・同上「クリエイティブオフィスの時代へ─経営理念、ワークスタイル変革という「魂」の注入がポイント」ニッセイ基礎研究所『研究員の眼』2016年3月8日
・同上「CSRとCRE戦略─企業不動産(CRE)を社会的価値創出のプラットフォームに」ニッセイ基礎研究所『基礎研レポート』2015年3月31日
・同上「アップルの成長神話は終焉したのか─革新的製品の発売か、高成長に対応したコスト構造の是正か」ニッセイ基礎研究所『基礎研レポート』2013年10月24日
・同上「イノベーション促進のためのオフィス戦略─経営戦略の視点からオフィスづくりを考える」『ニッセイ基礎研REPORT』2011年8月号
・同上「震災復興で問われるCSR(企業の社会的責任)─震災が促すCSRの原点回帰」ニッセイ基礎研究所『研究員の眼』2011年5月13日
・同上「オープンイノベーションのすすめ─イノベーション創出における外部連携の重要性」『ニッセイ基礎研REPORT』2007年8月号
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社会研究部   上席研究員

百嶋 徹 (ひゃくしま とおる)

研究・専門分野
企業経営、産業競争力、産業政策、イノベーション、企業不動産(CRE)、オフィス戦略、AI・IOT・自動運転、スマートシティ、CSR・ESG経営

経歴
  • 【職歴】
     1985年 株式会社野村総合研究所入社
     1995年 野村アセットマネジメント株式会社出向
     1998年 ニッセイ基礎研究所入社 産業調査部
     2001年 社会研究部門
     2013年7月より現職
     ・明治大学経営学部 特別招聘教授(2014年度~2016年度)
     
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員
     ・(財)産業研究所・企業経営研究会委員(2007年)
     ・麗澤大学企業倫理研究センター・企業不動産研究会委員(2007年)
     ・国土交通省・合理的なCRE戦略の推進に関する研究会(CRE研究会) ワーキンググループ委員(2007年)
     ・公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会CREマネジメント研究部会委員(2013年~)

    【受賞】
     ・日経金融新聞(現・日経ヴェリタス)及びInstitutional Investor誌 アナリストランキング 素材産業部門 第1位
      (1994年発表)
     ・第1回 日本ファシリティマネジメント大賞 奨励賞受賞(単行本『CRE(企業不動産)戦略と企業経営』)

(2018年07月04日「ニッセイ基礎研所報」)

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【クリエイティブオフィスのすすめ-創造的オフィスづくりの共通点】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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