2018年05月28日

初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下)-未婚少子化データ考-変わり行く2人のカタチ

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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はじめに-4組に1組の「重要プレーヤー」に昇格

当レポートの(上)では、年間に役所に提出される婚姻届のうち、再婚者が双方または片方に含まれる再婚者含みの結婚が、実に4組に1組にまで増加していることを示した。
 
18歳から34歳までの未婚男女の約9割が結婚を希望しているにも関わらず、未婚化が進行している日本の結婚マーケットにおいて、もはや再婚可能性のある男女(離婚経験者)の存在は重要な結婚相手候補としてのプレーヤーの位置づけを得ている、といってよいだろう。
 
「3組に1組は離婚」という情報が、ややネガティブな文脈で人々に流布し始めている一方で、「4組に1組は再婚者が含まれた結婚」という情報は、広く一般に流布する発信ではあまり見かけない。
つまり、「再スタート」「再チャレンジ」といったポジティブな再婚割合情報が、離婚の割合と表裏一体的に流布してこない。
 
本レポートでは、(上)の再婚者割合の分析に続き、初婚・再婚の組み合わせ別の「年の差婚」を客観的に分析することで、果たしてそこからこの未婚化社会に何か指摘出来ることがないか、を考察してみたい。
 

1――初婚・再婚組み合わせ別にみた夫婦の年下・年上の傾向

1――初婚・再婚組み合わせ別にみた夫婦の年下・年上の傾向

昨年のレポートで初婚同士の成婚カップルの年の差について詳しく紹介した。
そこで今回は初婚同士、夫のみ再婚、妻のみ再婚、再婚同士の4タイプすべてについて考察する。
まずは男女どちらが年上なのか、または同年齢なのかをこの4タイプでみることとする(図表1)。
【図表1】日本における初婚・再婚組み合わせ別 年上・年下・同年齢の状況 
再婚者も含めた成婚者全体ならびに母数の多い初婚同士は似た傾向となっている。
年上の妻が4組に1組、同年齢が5組に1組、年上の夫が2組に1組、という結果である。
しかし、初婚同士を除いた再婚者含みの成婚だけを見てみると、初婚同士のカップルとは明らかな違いが浮かび上がってくる。
 
まずは、客観的なデータの解説によって、再婚者含みの成婚の年の差を俯瞰してみたい。
 
(1)再婚含みでは、同年齢カップルの割合が低下
(2)初婚の妻と再婚の夫では、夫の8割が年上という昭和の伝統的年の差に変化
(3)再婚の妻と初婚の夫では、妻の年上の割合が20ポイント増加(初婚同士の1.8倍の割合)
(4)夫婦とも再婚では、年上妻の割合は初婚同士と同じく4組に1組
(5)夫婦とも再婚では、同年齢割合が1割に減少し、その分、年上夫割合が10ポイント上昇
 
全体の4分の3を占める初婚同士のカップルに比べると、再婚者が含まれる結婚は
「同年齢カップルが減少」
「初婚と再婚との組み合わせでは、再婚者の方が男女に関わらず年上となる割合が高まる」
 
という2点が非常に顕著であると言えるだろう。
 

2――初婚・再婚組み合わせ別にみた年の差の詳細

2――初婚・再婚組み合わせ別にみた年の差の詳細

1|夫が再婚、妻が初婚のケースは夫側の年齢が妻の年齢より顕著に高い
 
1章において、再婚者が含まれる結婚では「初婚と再婚との組み合わせでは、再婚者の方が男女に関わらず年上となる割合が高まる」ことを示した。
その詳細をみると、夫が再婚者で初婚の女性と結婚するケースにおいて、特に顕著となっている(図表2)。
【図表2】 初婚・再婚組み合わせ別 夫婦の平均年齢差(歳)
夫のみが再婚のケースでは、全体の平均年齢差の3倍もの年齢差が生じている。年齢差は夫のみが再婚のケースでもっとも広がり、再婚同士、初婚同士、と減少してゆく。ちなみにこの年齢差は夫がすべて年上となっている。妻のみが再婚のケースでは、年齢差が全くない、という状況である。
次に、平均ではなく、実数としてどれくらいの年齢差の結婚となっているかを確認してみたい。
2|「年齢格差婚」は再婚者が優勢
 
夫婦の年齢差は平均すると年々減少傾向である(図表3)。
 
全体の4分の3を占める初婚同士だけをみると、夫と妻が同年齢もしくは上下2歳差までに58%、3歳差までに68%が占めており、いわゆる年齢格差婚はそこまで成立しやすい状況とは言えない。
【図表3】 夫婦の平均年齢差(全婚姻・初婚同士、歳)
しかし、初婚同士と再婚者を含むカップルを分けてみてみると、再婚者を含む組み合わせであれば、年齢格差婚が成立しやすいことが見えてくる(図表4)。
【図表4】 初婚・再婚の組み合わせ別 年齢差詳細
特に夫が再婚、妻が初婚のケースでは、その4割以上において、夫が7歳以上年上となっている。また再婚者同士のカップルも夫が7歳以上年上の割合が約3割であり、いずれも初婚同士と比べると3倍から4倍の割合である。
また、全体として4組に1組が年上妻の結婚であり、年上妻婚割合は年々増加しているのだが、初婚同士のカップルでは妻が4歳以上年上の割合は7%にとどまるものの、妻が再婚・夫が初婚のケースでは26%となり、初婚同士の4倍程度にまで割合が増加する。妻のみが再婚のケースでは、4組に1組が「妻が4歳以上年上」なのである。
また再婚者同士でみても、年上妻婚のなかでは「妻が4歳以上年上」が一番多くなっている。
 
これを別の切り口で集計してみたい。「夫が7歳以上年上」を「夫年齢格差婚」、「妻が4歳以上年上」を「妻年齢格差婚」と定義し、年齢格差婚全体における再婚者比率を計算すると、以下のように集計された(図表5)。
【図表5】 「年齢格差婚」全体における再婚者の進出
年齢差を問わない結婚全体では4組に1組が再婚者含みの結婚であるが、年齢格差婚にしぼってみると、夫年齢格差婚のケースの2組に1組、妻年齢格差婚の5組に2組が再婚者含みの結婚となっていることがわかる。
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

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【初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下)-未婚少子化データ考-変わり行く2人のカタチ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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