2018年05月15日

欧州大手保険グループの2017年の生保新契約動向-新たな規制・低金利環境下での商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況はどうだったのか-

中村 亮一

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3|Generali
(1)全体の状況
2017年の新契約価値は、2016年に比べて53.8%と大幅に増加して、18.20億ユーロとなった。

新契約マージン(New Business Margin)(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2016年に比べて1.46%ポイント上昇して、4.01%となった。この要因は、将来の収益性が大幅に改善(将来キャッシュインフローが大幅に増加)することが想定されるためとしている。

新契約保険料現在価値(PVNBP)は2016年に比べて2.3%減少して454.29億ユーロとなった。
生命保険事業の新契約の状況
(2)新契約の商品タイプ別、地域別の構成比
Generaliは、欧州において金利低下が進む中で、イタリアやドイツを中心に、保証利率の引き下げに加えて、無保証等の低資本集約保証商品のウェイトを高めてきている。低資本集約保証商品の責任準備金のウェイトは、2016年に47.2%であったが、2017年には51.7%に上昇しており、2018年にはこれを53.2%に引き上げることを目標にしている。

新契約の商品タイプ別、地域別の構成比については、次ページの図表の通りとなっている。

商品タイプ別の内訳は、貯蓄が45%(2016年は57%、以下同様)、保障が20%(19%)、ユニットリンクが35%(24%)となった。

2015年から2016年にかけては、グループ全体で、貯蓄に加えて、ユニットリンクの構成比が若干低下していたが、2016年から2017年にかけては、ほぼ各国で、貯蓄の構成比が低下して、保障又はユニットリンクの構成比が上昇した。

このように、グループ全体だけでなく、主要各国ベースでみても、貯蓄から保障又はユニットリンクへのシフトが進んできている。
新契約の商品タイプ別、地域別の構成比
(3) 新契約マージンの商品タイプ別状況
新契約保険料現在価値、新契約価値及びその比率として新契約マージンの商品タイプ別状況は、以下の通りとなっている。

新契約マージンについては、保障が7.84%と高く、ユニットリンクが3.75%で続き、貯蓄は2.50%となっている。2016年との比較では全ての商品タイプで新契約マージンが上昇している。
新契約保険料現在価値及び新契約価値、新契約マージンの商品タイプ別状況
(4)新契約マージンの地域別状況
新契約マージンとIRR(内部収益率)の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

構成比は低いものの、中東欧やその他欧州の新契約マージンが高くなっている。親会社国イタリアの水準がグループ全体より高い一方で、フランスのマージンやIRRは他国に比べて低い水準となっている。
新契約マージンの地域別状況
(参考)元受保険料の商品タイプ別内訳
元受保険料の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りで、保有ベースでは引き続き、貯蓄・年金の構成比が5割以上となっているが、その数値は前年度に比べて7%ポイント低下しており、代わりに保障やユニットリンクの構成比が高くなっている。
生命保険事業の元受保険料の商品タイプ別内訳
4|Prudential
(1)全体の状況
2017年の新契約利益(New Business Profit)(European Embedded Value Principlesで算出された利益)は、2016年に比べて17%増加して、36.16億ポンドとなった。

新契約マージン(New Business Margin)(=新契約利益/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2016年に比べて0.3%ポイント上昇して、7.1%となった。また、年換算保険料に対する新契約マージンは、2016年に比べて3%ポイント上昇して、52%となった。

新契約年換算保険料は、2016年に比べて10%増加して、69.58億ポンドとなった。
生命保険事業の新契約の状況
(2)新契約年換算保険料の地域別内訳
新契約年換算保険料は、英国を中心とした欧州、米国、アジアの各地域で順調に進展した。特に、アジアは、新契約年換算保険料で6割弱を占め、主要各国で有意な水準を計上している。特に、最近は、中国、香港、台湾やインド、ベトナム等で高い成長率を確保している。香港ではこの2年間、特に高水準となっているが、これは、1) エージェンシーの数と生産性の向上、2) ブローカー・ネットワークへの進出に加えて、3) 中国本土をベースとした顧客への対応に積極的に取り組んだ、ことが理由として挙げられている。
新契約年換算保険料の地域別内訳/新契約年換算保険料の地域別内訳(アジアの主要国)
(3)新契約利益の地域別内訳 
新契約利益の地域別内訳は、次ページの図表の通りである。

2016年は、英国&欧州と米国での新契約利益が減少し、アジアのみが大きく進展していたが、2017年は全ての地域で2桁進展を果たした。
新契約利益の地域別内訳
(4)新契約マージンの地域別状況
新契約マージンの地域別状況は、以下の図表の通りである。

新契約マージンは、アジアで11.6%と極めて高水準となっており、2016年の10.5%に比べてもさらに高くなっている。米国の数値もここ2年間上昇している。一方で、英国&欧州は、アジアや米国に比べて、絶対水準も低いが、この3年間の水準もほぼ横ばいである。
新契約マージンの地域別状況
5Aviva
(1)全体の状況
2017年の新契約価値は、2016年に比べて25%増加して、12.43億ユーロとなった。

新契約マージン(New Business Margin)(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2016年から0.2%ポイント上昇して3.0%となった。

新契約保険料現在価値(PVNBV)は、2016年に比べて16.4%増加して、407.95億ポンドとなった。
生命保険事業の新契約の状況
(2)新契約保険料現在価値の商品タイプ別、地域別内訳
新契約保険料現在価値の商品タイプ別、地域別内訳は、以下の図表の通りとなっている。
 
商品タイプ別の数値は欧州でしか開示されていないが、これによると、英国ではペンション、欧州(英国以外)では貯蓄の構成比が高くなっている。
2017年の新契約保険料現在価値(PVNBP)の商品タイプ別、地域別内訳
2017年の新契約保険料現在価値(PVNBP)の商品タイプ別、地域別内訳
(3)新契約価値の商品タイプ別内訳
英国生命保険事業の新契約価値の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りとなっている。
2017年は、全ての商品タイプの新契約価値が増加したが、特に運用環境の改善により、長期貯蓄の新契約価値が42%と大きく増加した。
英国生命保険事業の新契約価値(VNB)の商品タイプ別内訳
(4)新契約マージンの地域別状況 
新契約マージンの地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

地域別では、アジアやポーランド等の新興国での新契約マージンが高くなっている。英国の水準は、欧州(英国以外)と比較しても低い。
新契約マージンの地域別状況/新契約マージンの「欧州(英国以外)」の国別状況
(参考)営業利益の商品タイプ別内訳
英国生命保険事業の営業利益の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りとなっている。

新契約価値と同様、2017年は長期貯蓄が30%と大きく増加し、保障はむしろマイナス進展となっている。

また、2017年のグループ全体の営業利益のうち、年金・エクイティリースが約4割、レガシーが2割弱を占めている。
英国生命保険事業の営業利益の商品別内訳
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中村 亮一

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