2018年04月27日

2018年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.1%(年率▲0.5%)を予測~

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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●1-3月期は年率▲0.5%を予測~9四半期ぶりのマイナス成長~

2018年1-3月期の実質GDPは、前期比▲0.1%(前期比年率▲0.5%)と9四半期ぶりのマイナス成長になったと推計される1

外需が前期比・寄与度0.0%(年率0.2%)と成長率に対してほぼニュートラルとなる中、設備投資は前期比0.6%と6四半期連続で増加したが、民間消費(前期比▲0.2%)、住宅投資(前期比▲2.1%)の家計部門がいずれも減少したこと、民間在庫変動が前期比・寄与度▲0.1%(年率▲0.6%)と成長率を押し下げたことから、国内需要が5四半期ぶりに減少した。

実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が▲0.2%(うち民需▲0.2%、公需0.0%)、外需が0.0%と予測する。
 
名目GDPは前期比▲0.2%(前期比年率▲0.8%)と6四半期ぶりの減少となるだろう。GDPデフレーターは前期比▲0.1%(10-12月期:同▲0.1%)、前年比0.5%(10-12月期:同0.1%)と予測する。生鮮野菜の価格高騰によって民間消費デフレーターが前期比0.4%の高い伸びとなり、国内需要デフレーターは前期比0.2%の上昇となったが、輸入デフレーターの伸び(前期比1.3%)が輸出デフレーターの伸び(同▲0.3%)を上回ったことがGDPデフレーターを押し下げた。
 
なお、5/16に内閣府から2018年1-3月期のGDP速報が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2017年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率1.6%から同1.2%へと下方修正されると予測している。この結果、2017年度の実質GDP成長率は1.7%、名目GDP成長率は1.8%になると見込まれる。
 
2018年1-3月期の実質GDPは2015年10-12月期以来のマイナス成長となった模様だが、景気の回復基調が途切れてしまったと判断するのは早計だ。マイナス成長の一因となった民間在庫変動のうち原材料、仕掛品は1次速報では内閣府による仮置き値が用いられる。2017年10-12月期2次速報時に内閣府が公表した仮置き値では、原材料、仕掛品による実質GDP成長率への寄与度が前期比▲0.2%強(年率▲1%程度)の大幅マイナスとなっていたが、法人企業統計の結果が反映される2次速報では上方修正される可能性もある。

また、民間消費は2四半期ぶりに減少したが、1、2月の大雪、生鮮野菜の価格高騰といった一時的な要因により下押しされており、消費動向を左右する雇用所得環境は着実な改善を続けている。生鮮野菜の価格高騰はすでに一段落しており、3月以降は天候も比較的安定している。実質所得の低迷を主因に消費の回復力が脆弱であることは確かだが、一時的な下押し要因がなくなる4-6月期は民間消費が増加に転じ、実質GDPは潜在成長率を上回るプラス成長に復帰する可能性が高い。

ただし、これまで景気の牽引役となってきたIT関連需要に陰りが見られる点には注意が必要だ。鉱工業指数のIT関連財は2017年7-9月期から3四半期連続で出荷指数が前期比で低下、在庫指数が前期比で上昇しており、在庫調整局面入りが明確となっている。2018年1-3月期のIT関連財の出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は、▲18.8%ポイントなり、10-12月期の▲6.6%ポイントから悪化幅が拡大した。

また、日本銀行の実質輸出を財別にみると、1-3月期の情報関連輸出は前期比▲0.6%と3四半期ぶりに減少した。最近のIT関連の低迷はiPhoneの販売不振による一時的な要因による部分が大きいとみているが、IT関連の調整が長引けば景気の停滞色が強まる恐れがあるだろう。
 
1 4/27までに公表された経済指標をもとに予測している。今後公表される経済指標の結果によって予測値を修正する可能性がある。
 

●主な需要項目の動向

●主な需要項目の動向

・民間消費~大雪、野菜高騰の影響で減少~
 
民間消費は前期比▲0.2%と2四半期ぶりの減少を予測する。

失業率が2%台半ばまで低下するなど、雇用所得環境は改善を続けているが、1、2月の大雪の影響で外出が手控えられたこと、生鮮野菜の価格高騰による物価上昇ペースの加速で実質購買力が低下したことが消費の下押し要因となった。

1-3月期の消費関連指標を確認すると、「鉱工業指数」の消費財出荷指数が前期比▲1.1%(10-12月期:同0.4%)、「商業動態統計」の小売業販売額指数(実質)が前期比▲1.1%(10-12月期:同0.6%)といずれも前期比で低下した。財別には、自動車販売台数などの財消費は低調、外食産業売上高などのサービス消費は堅調となっている。
実質雇用者所得の推移/消費関連指標の推移
・住宅投資~相続税対策の需要一巡などから3四半期連続の減少~
新設住宅着工戸数の推移 住宅投資は前期比▲2.1%と3四半期連続の減少を予測する。

住宅投資は、雇用所得環境の改善や低水準の住宅ローン金利が下支えとなっているものの、相続税対策の需要一巡に伴う貸家の減少、マンションの販売価格上昇の影響などから、弱い動きが続いている。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2017年4-6月期の98.7万戸をピークに、7-9月期が95.5万戸、10-12月期が94.8万戸、2018年1-3月期が89.2万戸と水準を切り下げている。利用関係別には、1-3月期は分譲住宅の落ち込みが前期比▲11.4%と特に大きかった。GDP統計の住宅投資は工事の進捗ベースで計上され着工の動きがやや遅れて反映されるため、2018年4-6月期も減少する可能性が高い。
・民間設備投資~企業収益の改善を背景に増加が続く~
 
民間設備投資は前期比0.6%と6四半期連続の増加を予測する。

設備投資の一致指標である投資財出荷(除く輸送機械)は2017年10-12月期の前期比2.4%の後、2018年1-3月期は同▲1.6%と4四半期ぶりに減少した。一方、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2017年10-12月期に前期比0.3%と2四半期連続で増加した後、2018年1、2月の平均は10-12月期を4.3%上回っている。

日銀短観2018年3月調査では、2017年度の設備投資計画(含むソフトウェア、除く土地投資額)が前年度比5.3%(全規模・全産業)となり、前年同時期の前年度比1.0%(2017年3月調査の2016年度計画)を上回り、2018年度当初計画は前年度比2.2%と2017年度当初計画の同1.7%を上回った(ただし、2017年12月調査までと2018年3月調査では調査対象企業の見直しによる不連続が生じている)。設備投資/キャッシュフロー比率は低水準にとどまっており、企業の投資スタンスは積極化しているわけではないが、企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景に、設備投資は底堅い動きが続く可能性が高い。
設備投資関連指標の推移/設備投資計画(全規模・全産業)
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

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