2018年04月17日

成長が加速するインドネシアの生保市場-インドネシアの生命保険市場(2016)-

松岡 博司

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1――はじめに

昨年(2017年)7月18日に、米国最大の生保会社であるプルデンシャル・ファイナンシャルが、インドネシアの複合企業CTコープ傘下の生保会社、アスランシ・ジワ・メガ・インドネシア(AJMI)に49%の出資を行い、CTコープと提携して、インドネシアでの生保事業に取り組むと発表した。

インドネシアの生保市場には、わが国からも4生保グループ(日本、第一、明治安田、住友)、2損保グループ(東京海上、三井住友)が進出している。今回の米国プルデンシャルの進出により、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、日本と、主立った保険先進国の各国代表クラスの保険会社がインドネシアの生保市場に顔を揃えることとなった。

インドネシアの生保市場については、昨年も、「インドネシアの生命保険市場-期待の生保新興市場インドネシアの状況- (2017年4月28日)1」として、2015年の統計データを用いたレポートを保険・年金フォーカスに掲載しているが、本年1月にインドネシアの保険監督当局であるOJK (Otoritas Jasa Keuangan=金融サービス機構)から2016年の計数数値を取りまとめた「Statistik Perasuransian 2016=Insurance Statistics 2012」が公表されたことを受け、計数数値を2016年までに洗い直した更新版として本レポートを作成した。

なおインドネシア生保市場における商品、販売、外資系生保会社等の経営等に関するもう少し詳細なレポートとして、拙稿「成長するインドネシア生保市場と外資系生保の幸せな関係-市場活性化・高度化に貢献し覇権を達成-特色ある特約付きユニットリンク保険の販売-」(2017年06月22日付基礎研レポート2)もあわせてご覧いただければ幸いである。  

2――成長が加速するインドネシア生保市場

2――成長が加速するインドネシア生保市場

1|「人口1人あたり保険料」、「GDPに対する割合」で見たインドネシア生保市場の普及度合い
まずはスイス再保険が発表した世界の生命保険料に関するデータから、インドネシア生保業界の状況を見る。

生命保険料をドル換算したベースで、その国の生命保険料が世界全体の生命保険料の何パーセントにあたるか(世界シェア)及びそのシェアが世界第何位に位置するかの変遷を見ると、インドネシアの生保市場は、2000年には世界シェア0.05%、世界順位第38位であったものが、2015年には、世界シェア0.43%、世界第29位に上昇し、2016年はさらに、世界シェア0.58%、世界第26位へとランクアップした。絶対的なシェアはまだ小さいが、特に近年の成長ぶりは顕著である。

次に普及度合いに着目して、ドル換算ベースの「人口1人あたり生命保険料」と「総生命保険料の対GDP割合」を見る(グラフ1)と、1999年の「人口1人あたり生命保険料」5.1ドル、「生命保険料の対GDP割合」0.8%が、2015年には42.7ドル、1.3%へと高まり、2016年にはさらに跳ね上がって58.6ドル、1.6%となった。

こちらの進展ぶりも堅調である。ただし、いまだ絶対的には低普及状態であるので、今後いっそうの成長が期待されている。また、この低い普及度合いと、この水準をスタート台にして、普及の速度が上がり始めた状態が、先進各国の生保会社を惹き付けるインドネシア生保市場の魅力となっている。
グラフ1 「人口1人あたり生命保険料」と「生命保険料の対GDP割合」の推移(ドルベース)
2|アセアン内でのインドネシア生命保険市場のポジション
次の表1は、上記各指標をアセアンの他の主要国(シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム)とインドネシアを対比したものである。
表1 アセアン主要国の生命保険市場の状況
インドネシアは6ヵ国の中で最大の人口と順調な経済状況を背景に、全体ボリュームとしての総生命保険料ではシンガポールに次ぐ第2位につけている。2015年にはシンガポール、タイに次ぐ第3位であったが、この1年でタイを上回る規模に達した。人口の差が大きいシンガポールに追いつくのも時間の問題と考えられる。

一方、国民各層への生命保険普及度合いを示す「人口1人あたり生命保険料」、「生命保険料の対GDP割合」ではまだまだで、第4位と出遅れている。上位3国(シンガポール、マレーシア、タイ)との差はいまだ大きく、最近の好調な普及が続いてもこれら先行国に追いつくまでにはまだ数年はかかりそうである。
 

3――インドネシア生保市場の現状

3――インドネシア生保市場の現状

ここから後は、スイス再保険のデータと異なり、インドネシアの通貨であるルピアベースで作成されているOJK発表のデータを使って2016年の状態を見ていく。

ちなみに2018年4月14日現在の為替レートを使ってルピアを日本円換算すると、1兆ルピア=約78億円、1億ルピア=約78万円である。
1|生命保険料収入は過去最大の水準
次のグラフ2は、2006年から2016年まで11年間の、インドネシア生保市場における生命保険料収入の金額を棒グラフ、その対前年の伸び率を折れ線グラフで表したものである。

インドネシアの生命保険料収入は2006年から2012年まで対前年比2桁の高い伸び率で増加し、2006年の27.5兆ルピアが2012年にはその4倍弱の107.94兆ルピアにまで拡大したが、2013年に対前年4.9%増とブレーキがかかり、2014年にはマイナス0.3% に落ち込んだ。

しかし2015年には、対前年19.7%増と再び勢いをとりもどし、2013年、2014年の低成長を挽回するとともに、一気に過去最高の135兆1300億ルピアを達成した。

この勢いは衰えることなく、2016年にはさらに加速し、23.7%増の167兆2,000億ルピア(約1兆3,042億円)に拡大した。
グラフ2 生命保険料収入の推移(ルピアベース)
2|主力保険商品
インドネシア生命保険市場では個人年金等、年金商品はいまだ未発達で、販売実績はほとんどない。主力商品は、伝統的な養老保険(満期時に支払われる満期保険金と死亡があった場合に支払われる死亡保険金が同額の保険商品)と外資が持ち込んだユニットリンク(変額)保険である。これは、投資対象とする資産の価格変動やユニット価格の変動にあわせて保険積立金の額が変動する保険商品で、欧州の生保市場では主力的な商品となっている。

2016年末現在、インドネシアに生保会社が55社あるが、その内36社がユニットリンク保険を販売している。インドネシアにおけるユニットリンク保険の特徴は、主たる契約に付加される特約として同時販売される保障がそれなりに大きな死亡保障や医療保障であることである。
グラフ3 インドネシア生命保険市場の商品(2016年)
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松岡 博司

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