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- 最大のメルセンヌ素数が2年ぶりに更新されました-50個目の完全数及びメルセンヌ素数の発見-
はじめに
今回は、その内容を紹介したい2。
1 GIMPSの公表資料では、今回の最大のメルセンヌ素数について、「the largest known prime number(最大の既知の素数)」と表現されている。素数は無限に存在しており、「それまで既知の素数を全て掛け合わせた数字から1をマイナスしたもの」が新たな素数になることから、理論上は無限に大きな素数を作り上げることができる。
2 以下の記述は、「メルセンヌ素数」に関するWebサイト及びGIMPS(Great Internet Mersenne Prime Search)のWebサイトからの情報等に基づいている。
Mersenne Primes:History, Theorems and Lists http://primes.utm.edu/mersenne/index.html
http://www.mersenne.org/
完全数及びメルセンヌ素数とは
「完全数(Perfect number)」とは、「その数字自身を除く約数の和がその数字自身に等しい自然数」のことをいう。例えば、6の約数は、1、2、3、6の4つで、6以外の約数の和が、1+2+3=6となるので、6は完全数である。28も完全数で、1+2+4+7+14=28 となっている。
「メルセンヌ数(Mersenne number)」とは、2n-1という形の数であり、素数のメルセンヌ数を「メルセンヌ素数」という。
完全数については、「偶数の完全数は、全て2n-1×(2n-1)の形」であり、逆に「偶数の完全数は2n-1が素数であるような正の整数nを用いて、2n-1×(2n-1)という形で表される」ことがわかっており、「メルセンヌ素数と偶数の完全数は1対1に対応している」ことが知られている。
また、現時点で確認されている完全数は限られており、2016年1月に49個目が発見されていた。
今回発見されたものは、それに続く50個目となっている。
新たなメルセンヌ素数
この「M77232917」は、2324万9425桁の数字で、これまで最大だった49個目のメルセンヌ素数「M74207281(=274207281-1)」の2233万8618桁と比べて、約100万桁大きくなっている。
2324万9425桁という数字の大きさについては、総数9000ページに及ぶ本の棚を埋めるのに十分な大きさであるとしている。さらには、毎秒5桁を1インチに書き込んだら54日後には、前の最大(メルセンヌ)素数よりも約3マイル(5km)長い、73マイル(118km)になる、としている。
なお、これが素数であることの証明は、Intel i5-6600プロセッサを搭載したPCによる6日間ノンストップの計算で行われた。4つの異なるハードウェア構成の上で4つの異なるプログラムを使い、独立した検証が行われた。
発見者のJonathan Pace氏は、テネシー州Germantown在住の51歳の電気技師で、これまで14年にわたってGIMPSプロジェクトに協力してきた。今回の発見で、Pace氏にはGIMPSから賞金として3000ドルが贈られる。3000ドルという賞金は、費やされた時間と労力に十分見合った金額とはいえないように思われるが、50個目のメルセンヌ素数の発見者として、その歴史に名前が刻まれるという名誉がより重要なことであろう。
なお、GIMPSの次の大きな目標は、1億桁を有する素数の発見で、15万ドルの賞金がかけられるとのことである。
今回の発見は、世界のコンピュータユーザーが、インターネットを通じてコンピュータの計算力等を提供することで、達成されている。今後も、こうした地道な努力が進められていくことで、さらなる発見が期待されていくことになる。
今回発見されたM77232917が「史上最大の素数」というタイトルで書籍化
完全数を巡る未解決問題等
例えば、「完全数が無数に存在するのか、有限なのか」、「奇数の完全数は存在するのか」、「1の位が6か8以外の完全数は存在するのか」といった問題は未解決のままである。
さらには、コンピュータによって、今回50個目のメルセンヌ素数が発見されたと述べたが、これが50番目に小さなメルセンヌ素数であるとは限らない。2016年9月に、現在の45番目までのメルセンヌ素数より小さいものは存在しないことが確認されているが、46番目から今回の50個目の最大のメルセンヌ素数までの間に、新たなメルセンヌ素数が存在しないことは未だ確認されておらず、新たなメルセンヌ素数が発見されるかもしれない。その意味で、今回発見されたメルセンヌ素数は、現段階ではあくまでも「50個目」のメルセンヌ素数であり、「50番目」のメルセンヌ素数とは言い切れないものとなっている。
最後に
あるいは、本来的には、未解決とされている問題等が理論的に証明される時がやってくるのかもしれない。こうした時代の到来をわくわくした気持ちで待ち望みたいと思っている。
中村 亮一
研究・専門分野
(2018年02月26日「研究員の眼」)
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