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EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(4)-EIOPAの報告書2017の概要報告-
中村 亮一
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4―消費者及び商品への影響
ソルベンシーII規制の枠組みには、LTG(Long-Term Guarantee:長期保証)の法的定義は含まれていない。以下のLTGの調査報告は、各NSA独自のLTGの定義に基づいて作成されており、国によってLTGの定義が異なる場合がある。
NSAsは、国内市場で現在利用可能なLTGを含む保険商品の例として、以下のタイプの商品を挙げている。
・伝統的な生命保険(例えば、有配当契約、貯蓄商品、終身、養老、年金等)
・ユニットリンクと有配当給付の特徴を組み合わせたハイブリッド商品
・保証リターン又は元本保証付きのユニットリンク商品
・変額年金
・医療保険(例えば、障害に関連する年金、又は労働者災害補償)
・損害保険年金(例えば、第三者責任保険から派生するもの)
・特定の損害保険商品(建設リスク及び借り手の保険等)
2|調査結果
(1)LTGの提供状況
LTGを使用した商品の大半(保険料の約70%)は、生命保険会社で販売されている。
生命保険の技術的準備金の約70%がLTG付契約に関連している。国レベルでは、市場におけるLTG商品の相対的重要性の間に大きな違いがある。 以下の図表は、全技術的準備金におけるLTG商品の割合を国別に示している。
伝統的な有配当生命保険商品は、LTG商品の保険料の約70%を占めており、大半の国でLTG付商品の中の最も重要な事業となっている。
LTG商品の保険料の14%はユニットリンク商品であるが、各国は2つに分類される。大部分の国では、保証付きのユニットリンク商品のシェアは、有配当商品と比較して、非常に小さく又はゼロとなっている。3カ国(エストニア、オランダ、スロヴェニア)では、保証付ユニットリンク商品はより高いシェアとなっている。
年金事業は、LTG商品の保険料の11%を占めている。2カ国(オランダ、英国)は、この事業ラインがLTG商品の最も重要な供給源となっている。回答した他の全ての国々では、年金商品におけるLTG商品は少数を構成している。
アイルランドでは、変額年金事業が市場における最も重要なLTG商品となっている。
12のNSAs(キプロス、フィンランド、ハンガリー、アイルランド、アイスランド、リヒテンシュタイン、ラトビア、ルクセンブンルグ、マルタ、ポーランド、ポルトガル、英国)は、LTG商品が市場に存在しないか、マイナーな商品であると報告している。
最も一般的な保証は、最低保証利率や保険金額や解約返戻金の保証に関連している。
(2)LTG商品の利用可能性に関する動向
昨年観察された傾向と一致して、LTG商品の入手可能性は、主にEEA全体で安定しているか又は減少しているが、一般的に傾向はLTG措置の設計には関係していない。いずれにしても、多数のNSAsが以下の点を観察している。
・ユニットリンクや純粋保障やハイブリッド商品へのシフト
・契約に含まれる金融保証のレベル低下
・保証期間の短縮
LTG商品の利用可能性が低下した主な要因としては、低金利環境、保証コストの増加、税制の変化が挙げられている。
国の約半数が、完全に透明な情報なしに、保険契約者が高保証付商品を解約したり、転換するように仕向けられて、消費者が損害を被ったケースをいくつか報告している。僅かなNSAsのみが、保証付新商品の導入に関する消費者保護の問題を報告していない。
5―EU保険市場における競争と公平な競争の場への影響
競争と公平な競争の場に関するこのセクションは新しいサブセクションである。このトピックは、ソルベンシーII指令第77f条(3)(c)のLTG措置及び株式リスク措置のレビューための関連項目のリストに含まれているが、データの不足と限られた経験のため、2016年の報告書には含まれなかった。
LTG措置及び株式リスク措置が競争に与える何らかの影響を観察したかどうかについての質問に応えて、NSAの過半数がそのような観察を報告しなかった。
競争と公平な競争の場の調査分析の焦点は、措置の監督上の取扱における国家間の差異にあった。
2|調査結果
例えば、以下の項目について、監督上の異なるアプローチが確認されたとしている。
(1)内部モデルにおけるVAの取扱(動的VAの取扱)
内部モデルにおけるVAの取扱については、前々回のレポート「EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(2)-EIOPAの報告書2017の概要報告-」(2018.1.23)で報告した。
動的VAについてのモデリングは、スプレッドリスクのSCRを大幅に低下させるが、10のNSAsが、内部モデルを使用する会社が動的VAを使用することを許可している。
アイルランドは、動的VAの使用も許可するが、承認申請を受けていない。
大部分のNSAは、自国に内部モデルを適用する会社がないこと又は会社がVAを適用しないために、動的VAの申請を許可するかどうかについての決定を下していない、と報告した。 2つのNSAsは、内部モデルを使用して、動的VAを使用することを可能にすることに抵抗している。
(2-1) NSAによって承認された最大額よりも低い金額での技術的準備金への段階的控除額の適用の可能性
以下の異なる監督慣行が観察された。
・3つのNSAsは、管轄区域における会社が常に最大額を適用し、ソルベンシーII指令の読み方又は国内法への移転を議論する必要があることを示した。
・他の5つのNSAsは、より低い額を適用することを認めている。しかし、これらのうち3つのケースでは、最大額を適用することから逸脱した会社はない。他の2つのNSAsは、彼らの実務に関するさらなる情報を与えた。1つのNSAは、移行期間中に最大額の減額が行われた場合、これは後の年に取消しすることはできないと考えているが、他のNSAは、移行期間にわたって整合的なアプローチに従うことを必須条件に、後日減額の取消しを行うことを認めている。また、このNSAは、会社が、リスク管理の枠組みとORSA(リスクとソルベンシーの自己評価)におけるアプローチを反映することを期待している。
・残りのケースについては、どの会社もその国でTTPを適用しない又は最大限の金額を下回る段階的控除を適用したいと考えている会社が観測されなかったため、決定が下されなかった。
(2-2) 2016年1月1日以降の移行措置の適用の開始
2016年1月1日以降のNSAsの大部分がこの措置の承認を認めているのに対し、2つのNSAsは制限を適用し、それらを承認することに抵抗している。
2016年中には、5カ国からの20の会社に移行措置が適用された。
なお、この際、段階的控除の計算において考慮すべき契約について、以下の2つの異なるアプローチが記述されている。
・大部分のNSAsは、会社が、2016年1月1日に保険会社に保有されており、移行期間の開始時において依然として事業開始時の事業ポートフォリオの一部である一連の関連契約に基づいて算定を行う必要があると考えている。
・他のNSAsは、2016年1月1日以降にTTPを適用した場合、2016年1月1日に保険会社のブロックの中にあった関連する契約を基礎とすることを想定している。しかしながら、リスクプロファイルが2016年1月1日に比較して大幅に変更された場合(これは、保険会社の保有契約の抜本的なランオフによっても引き起こされる可能性がある)、再計算が行われ、再計算時に引き続き当該事業のポートフォリオに含まれる債務を反映する必要がある。
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