2018年02月07日

日本におけるキャッシュレス化の進展状況について-日本のキャッシュレス化について考える

基礎研REPORT(冊子版)2月号

金融研究部 金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任 福本 勇樹

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2017年5月に日本政府は「FinTechビジョンについて」の中で、「キャッシュレス決済比率」を民間消費支出に占めるクレジットカード、デビットカード、電子マネーによる決済の割合と定義した。2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017-Society5.0の実現に向けた改革-」では、今後10年間(2027年6月まで)でキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目指すとしている。

2016年の日本におけるキャッシュレス決済比率は23.6%

一般的に日本人は現金決済を好む傾向があると指摘されることが多いが、2016年の現金決済の割合は約49%で、個人消費の半分以上が現金を用いない方法で行われるようになっている[図表1]。2011年との比較で見ると、現金決済の割合が7%減少しているが、この背景としてクレジットカード(+4.6%)、プリペイド・電子マネー(+4.3%)の利用が増えたことが寄与している。キャッシュレス決済(クレジットカード、デビットカード、電子マネー)に着目すると、クレジットカードと電子マネーの利用が一般的で、デビットカードがほとんど利用されていないのが特徴的である。キャッシュレス決済比率は過去5年間で14.5%から23.5%へ拡大しており、徐々に日本においてキャッシュレス化が進んでいる状況にある。
図表1:日本の個人消費における決済手段の割合の推移
図表2は、2015年の民間消費に占めるカード決済(クレジットカードとデビットカード)の割合について海外と比較したものである。図表2における国々をサンプルとした場合、平均的に約40%である。日本におけるカード決済の割合は17%程度であり、世界的に見ると日本はまだ「キャッシュレス化」が進んでいない状況にあるといえる。
図表2:民間消費に〆るカード決済の割合

先進国におけるキャッシュレス化はカード決済が中心

米国におけるキャッシュレス化の動向 次に、米国と英国におけるキャッシュレス化の進展に関する予測について見てみたい。米国では2015年から2020年にかけてクレジットカード決済(30.7%→38.7%)とデビットカード決済(25.3%→27.9%)の割合が上昇し、現金決済(15.8%→12.2%)の割合が低下すると予測されている[図表3]。
英国におけるキャッシュレス化の動向 また、英国においても2016年から2026年にかけて、クレジットカード決済(7.1%→9.0%)とデビットカード決済(29.9%→44.3%)の割合が上昇し、現金決済(39.7%→21.2%)の割合が低下すると予測されている[図表4]。両者に共通しているのは、キャッシュレス化は主にカード決済の割合が上昇することで進展し、現金決済の割合が低下すると予測されている点にある。

キャッシュレス決済比率の目標設定における留意点

日本政府により定義されたキャッシュレス決済手段以外にも、振込や口座振替によるサービスが普及する可能性が考えられる。例えば、モバイル端末を使用した個人間の電子決済サービスを提供している企業がある。また、仮想通貨の技術を用いた決済手段も拡大していく可能性がある。

今後、これらの決済手段が普及した場合には、「キャッシュレス決済比率」の中に含むべきか議論されることになると思われる。
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金融研究部   金融調査室長・年金総合リサーチセンター兼任

福本 勇樹 (ふくもと ゆうき)

研究・専門分野
金融・決済・価格評価

(2018年02月07日「基礎研マンスリー」)

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