2018年01月22日

EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの2017報告書の概要報告-

中村 亮一

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7|技術的準備金への影響
MA、VA、TRFR、TTPのうちの少なくとも1つの措置を適用している会社ベースで、措置の非適用による技術的準備金への影響については、以下の図表の通りとなっている。

これによれば、EEA全体で、3.3%の増加となるが、国別の内訳では、スペインが8.1%で最も高い影響を受けており、次がポルトガルで7.4%、英国が6.6%と続いている。ドイツの影響も6.3%と高くなっている。前回の報告書では7.9%と最も高い影響を受けていたギリシャは、今回の報告書では6.0%となっている。

一方で、フランスは1.3%、イタリアは0.5%と影響が低くなっている。
図表 MA、VA、TRFR、TTPの少なくとも1つの措置を適用している会社の技術的準備金に対する平均的影響
8|影響のまとめ
MA、VA、TRFR、TTPのうちの少なくとも1つの措置を適用している会社ベースで、措置の非適用による影響をまとめると、以下の図表の通りとなる。

ここに、青のボックスのボトムが25パーセンタイルを、トップが75パーセンタイルを、黒い帯が50パーセンタイルを示している。一方で、線の両端の黒い帯は10パーセンタイルと90パーセンタイルを示し、その外部は10パーセンタイルより低い、又は90パーセンタイルより高い外れ値を点で示している。

これにより、全ての措置の影響度は、非対称的な分布となっており、多くの外れ値を有していることが観測できる。
 

7―まとめ

7―まとめ

以上、EIOPAの報告書に基づいて、ソルベンシーIIにおけるLTG措置や株式リスク措置についての保険会社の適用状況やその財務状況に及ぼす影響について、全体的な状況の概要を報告してきた。

これにより、移行措置を含むLTG措置が、欧州保険会社によって幅広く適用され、SCR要件の遵守において重要な役割を果たしていることが明らかになっている。今回の報告書の中では、まとめてLTG措置として分類されているが、MAやVAのようないわゆる「狭義のLTG措置」と、TRFRやTTPのような「移行措置」とは、その意味合いが異なっており、これらを分けて、その影響を考えていく必要がある。移行措置の適用による影響が大きい国の保険会社は、移行期間中に計画的に適切な対応を行っていくことが求められることになる。

次回のレポートでは、報告書の主として第3のセクションから、UFRの使用、MA及びVAの適用状況について、その国別の適用会社数やSCR比率への影響等を報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2018年01月22日「保険・年金フォーカス」)

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