2018年01月17日

対数(自然対数)を理解しよう!-対数の定義と分析結果の解釈について-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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1――はじめに

統計学や計量分析でよく使われるのが対数であるが、対数という言葉を聞くだけで急に頭が痛くなる人も少なくないだろう。また、研究者の中には、せっかく対数を使って分析をしたにもかかわらず、解析の方法が分からず、困っている人が多数いることも事実である。対数とは、一体何であり、分析をした後どのように解釈すればいいだろうか。本稿では対数の定義と実証分析を行った後の解析方法について考えてみたい。
 

2――対数の定義

2――対数の定義

大辞林1では対数を「冪法(べきほう)(累乗)の逆算法の一つ(他の一つは開方)。aを1以外の正数とするとき、x=ayの関係があるならば、yaを底とするxの対数といいy=logaxと書く。日常計算には底として10をとるが、これを常用対数という。また、理論的な問題にはある特別な定数e=2.71828...を底として自然対数が用いられる」と定義している。少し難しい。一方、新明解国語辞典2では「一以外の正数が固定されている時、それを何乗すれば与えられた正数になるか、というその指数の称。y=axとなる時のx...」と対数を定義している。大辞林よりは分かりやすいが、一般の人から見ればやはり理解することは難しいだろう。

対数は英語でlogarithmと書き、記号logを用いて表され、10を底とする常用対数(log、以下、対数)とeを底とする自然対数(ln)に分けられる。

一般的に対数は、「aを何乗すれば、すなわち何回かければbになるか」を考えるときに使われ、式としてはlogab=xのように書く。例えば5を何乗すれば125になるかを計算するときには、5を底として125を真数3とする対数を求めると「3」(5を3乗すると125になるという意味)という答えが得られる。

 
log5125=x=3

エクセルを使う場合には、LOG関数を使うと、次のように簡単に対数を求めることができる。
 
=LOG(数値,底)⇒LOG(125,5)

   ax=ba≠1,a>0,b>0)という条件を満たしている場合
   (x)は(a)を底とする(b)の対数といい、次のように表すことができる。
   x=logab (aを何(x)乗したらbになるのか?)

 

1 松村 明編集(2006)『大辞林 第三版』三省堂
2 山田 忠雄・柴田 武・酒井 憲二・倉持 保男・山田 明雄・上野 善道・井島 正博・笹原 宏之編集(2011)『新明解国語辞典 第七版』三省堂
3 対数y=logaxにおいて、xは対数yの真数である。逆対数ともいう。英語ではantilogarithm。
 

3――自然対数の定義と分析結果の解析

3――自然対数の定義と分析結果の解析

一方、回帰分析などの実証分析では自然対数がよく登場する。自然対数は英語ではnatural logarithmと書き、上記で説明した対数が10を底にすることに比べて、自然対数はネイピアの定数を底としており、記号として通常はeが用いられている。ネイピアの定数enをだんだん大きくしていくと到達する数字であり、その値は2.71828…という、いつまでも続く、循環しない無限小数である。これを式で表すと次の通りである。



一つ、面白いことは底eが省略可能な点であり、回帰分析などでは、log5やlogx、あるいはln5やlnxという書き方で使われている。
logex=logx=lnx

では、自然対数が回帰分析などの実証分析に使われたとき、その結果をどのように解析すればいいだろうか。一般的には次のような四つのケースが考えられる4

(1) 被説明変数と説明変数両方とも対数変換をしていないケース
y=β0+β1x+uで他の要因が固定されている場合に、xの1単位の増加はyβ1単位の増加をもたらす。例えば、勉強時間(x)が成績(y)に与えた影響をみるために回帰分析を行い、y=β0+2.5β1x+uという結果が得られた場合、勉強時間を1時間増やした場合に、2.5点の成績が上がると解析することができる。

(2) 被説明変数は対数変換をせず、説明変数だけ対数変換をしたケース
y=β0+β1logx+uで、他の要因が固定されている場合に、logxの0.1単位の増加はyの0.1β1単位の増加をもたらす。一般的に増加率が小さいときにはlogxの0.1単位の増加は近似的にxが10%増加したと推測することができるので、他の要因が固定されている場合にxが10%増加することはyが0.1β1単位増加したと見ることが可能である。

(3) 被説明変数は対数変換をして、説明変数は対数変換をしていないケース
logy=β0+β1x+uβ1の値が小さく、他の要因が固定されている場合に、xの1単位の増加はlogyβ1増加させる。つまり、yは100×β1%増加することになる(β1の値が小さい必要がある)。

例えば、賃金がyで学歴がx(単位は年)であり、logy=β0+0.07x+uという分析結果が得られたとしよう。分析の結果は、他の要因が固定されている場合に学歴が1年分高くなるにつれてlog賃金は0.07高くなると解析することができる。さらに上記の基準を適用すると学歴が1年分高くなるにつれて賃金は7%高くなると言うことが可能である。

(4) 被説明変数と説明変数両方とも対数変換をしたケース
logy=β0+β1logx+uで、他の要因が固定されている場合にはlogxが0.01増加すると、logyは0,01β1増加すると解析することができる。つまり、他の要因が固定されている場合にxの1%の増加はyの約β1%の増加をもたらすと推測される。

では、この条件を利用して、需要の価格弾力性を求めてみよう。例えば、ある財の価格がy、需要量(単位はkg)がxであり、logy=β0-0.71logx+uという分析結果が得られた場合、この結果は価格が1%上昇すると、需要量は約0.7%減少すると考えることができる。
 
 
4 ハンチロック(2017)『計量経済学講義第2版』(株)博英社を一部引用・加筆した。
 

4――結びに代えて

4――結びに代えて

本文で説明した通りに対数、特に自然対数は最近、実証分析によく使われている。しかしながらせっかく自然対数を使って分析をしたにもかかわらず、分析結果の解析方法が分からず、悩んだ人も多くいると考えられる。本文で紹介した自然対数の定義や分析の解析などが自然対数に対する理解を深めるのに少しでも貢献できることを強く願うところである。
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

(2018年01月17日「基礎研レター」)

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