- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 財政・税制 >
- 先進国の国債等の保有構造について~IMF先行研究に基づく推計結果~
5――IMFの先行研究に基づく、先進国のリスクインデックスの算定結果
そこで、海外保有比率とIRIの推移が異なる要因について具体的に考察したい。まず、各国間の比較をすると、2004年末時点では、日本は米国や英国と比べて海外保有比率が20%ポイント前後低いにも関わらず、3ヵ国のIRIに大きな差は見られない(図表16左)。これは、日本が米国や英国と比べて国内銀行(26)の保有比率が高い一方で、海外中央銀行(14)の保有比率が低いことに起因している。2016年末時点でのカナダと米国および英国との比較においても、カナダは米国や英国と比べて海外保有比率が低いものの、IRIはむしろやや高くなっている(図表16右)。これは、カナダが米国や英国と比べて国内銀行(26)や海外非銀行部門(100)の保有比率が高い一方で、国内非銀行部門(16)や海外中央銀行(14)の保有比率が低いことに起因している。
このように各国間の国債等の保有構造の違いや保有構造の経年変化が、海外保有比率とIRIの違いとして表れている。
12 ()内の数字はリスクスコア。以下も同様。
6――おわりに
全体的に海外保有比率は上昇傾向にあるものの、近年の各国中央銀行による量的緩和によって、国内中央銀行の保有比率が上昇したため、保有構造の安定性はそれほど低下していないと考えられる。日本については、海外保有比率は上昇しているが、日銀が異次元緩和による国債買入れを継続しているため、むしろ安定性は上昇しているとさえ考えられる。
しかし、各国とも遠くない将来には国内中央銀行による国債買入れの縮小や終了、資産縮小が予想される。その結果、国内中央銀行の保有比率は低下し、保有構造の安定性が低下するのは免れないだろう。日本では、日銀による異次元緩和が開始された2013年4月から足元にかけて、国内中央銀行の保有比率は約30%ポイント上昇しており、他国と比べて量的緩和による上昇幅が大きい。したがって、日本では量的緩和の終了に伴う保有構造の安定性への影響は特に大きくなるだろう。
また、現行日本は経常収支が恒常的に黒字であるため、必ずしも海外資金に依存する必要はない。しかし、今後10年程度の間に経常収支が赤字に転じることが予想され13、海外資金に依存せざるを得なくなるため、経常収支の観点からも国債等の保有構造の安定性は低下していく可能性が高いだろう。
13 当研究所ではそれぞれの時期について、量的緩和の停止は2020年代前半、経常収支の赤字化は2020年代後半と予想している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
神戸 雄堂
研究・専門分野
(2017年12月28日「基礎研レポート」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年03月29日
晩年に関する不安~老後とその先の不安には「近居」が“程よい距離感” -
2024年03月29日
急速に導入が進むインドの再生可能エネルギー~2030年の国際公約達成を狙える位置に -
2024年03月29日
身体活動基準2023~座位行動時間、筋トレに関する指針が追加 -
2024年03月29日
鉱工業生産24年2月-不正問題の影響で自動車生産が一段と落ち込む -
2024年03月29日
管理職志向が強いのはどんな女性か~「中高年女性会社員の管理職志向とキャリア意識等に関する調査~『一般職』に焦点をあてて~」より(6)
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
【先進国の国債等の保有構造について~IMF先行研究に基づく推計結果~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
先進国の国債等の保有構造について~IMF先行研究に基づく推計結果~のレポート Topへ