2017年12月25日

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットについてのCPを公表(3)-欧州委員会に対する助言内容-

中村 亮一

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3|保険及び銀行部門における自己資本の比較
(1)欧州委員会からの助言要求内容
欧州委員会は、「特定の自己資本項目は、保険及び銀行の枠組みによって共有されている(例えば特定の債券)」と述べている。しかし、Call for Evidence(根拠に基づく情報提供)を介して受け取ったフィードバックは、一定の特徴(契約条項など)が両方の枠組みで同じ取扱を受けないことを強調した。

EIOPAは次のことを求められる。
・銀行枠組みと委任規則(EU)2015/35の間で比較可能な適格項目については、その分類における差異を評価する。
・これらの差異のそれぞれについて、2つの部門のビジネスモデルの差異、自己資本要件の決定における多様な要素又はその他の根拠によって、それらが正当化されるかどうかを評価する。

(2)EIOPAの助言
(2-1)制限されていないティア1のカバレッジ比率を参照するようにトリガーメカニズムを変更して、銀行制度に合わせるかどうか
EIOPAは、プルーデンシャル・ベネフィットの不在を念頭に置いて、現時点では、各規制の構造における根本的な違いに基づいて、銀行制度と整合しないより強力なケースがあると考えているが、それにも関わらず、欧州委員会への助言を確定する前に、この問題を引き続き分析する、としている。なお、この継続的な分析を先取りするわけではないが、このCPの残りの部分は、PLAM(Principal Loss Absorption Mechanism:元本損失吸収メカニズム)のためのソルベンシーIIトリガーが銀行制度と整合するように再ドラフトされないという前提に基づいている、としている。

また、EIOPAは、加盟国内で異なる慣行と実施を観察しているため、たとえPLAMを銀行制度に整合させないと決定した場合でも、PLAMの運営をさらに特定するために委任規則の変更が行われるべきことを勧告するつもりである、としている。

(2-2)いつ、どのように部分的な償却が許可されるべきか
EIOPAは、制限されたティア1商品は、少なくとも、SCR(ソルベンシー資本要件)のカバレッジが75%に達しないか又はMCR(最低資本要件)が破られた(したがって、これらのケースでは部分的償却は不可能)時点で、完全に償却されなければならないと考えている。

この場合、EIOPAは、3ヵ月のSCR違反の強制的トリガーが達成された場合には部分償却が許可されるべきであるが、75%のSCR違反とMCR違反のトリガーが引き金を引かれない限りにおいてである、ことを勧告している。

さらに、EIOPAは、75%のSCR違反で、商品が完全に償却されるような方法で、最低、rT14が定額法で償却されることを勧告している。

(2-3)更なる償却の必要性の検討(SCRの再計算)
EIOPAは、ソルベンシーII指令第138条第4項に従って宣言された例外的な不利な状況がなければ、会社は、SCRのカバレッジを再計算し、必要に応じてSCRの遵守が回復されるまで3ヵ月ごとにさらに償却を行うことを勧告する、としている。

(2-4)最初の償却に引き続く償却の計算
EIOPAは、会社は、今後3ヶ月ごとにSCRカバレッジ比率がさらに悪化した場合には、更なる償却を適用することが求められるべきである、と勧告している。

(2-5)銀行制度との整合性に関する勧告-トリガー時に償却する制限されたティア1の税効果-
EIOPAは、銀行制度と整合せず、代わりに発行時のrT1商品の元本を引き続き完全に認識できるようにすることを勧告する。さらに、EIOPAは、監督当局が、以下の場合に、ケース別に、償却するという要件から例外的な免除を行うかどうかを検討する能力を提供することを勧告する、としている。
・会社は、そのような免除を要求し、合理的な前提に基づき、償却の税効果が会社のソルベンシー・ポジションを著しく弱める可能性が高いことを示すことになる、納税年度末に向けての予測を提供する。
・会社の監査役は、当該予測に使用された前提が合理的であることを文書で確認する。
・75%SCR強制的トリガーもMCRも破られていない。

(2-6)銀行制度との整合性に関する勧告-早期償還、税務上のコール、規制上のコール-
EIOPAは、CRRIIの2016年11月草案に沿ったものとするように、ソルベンシーIIをCRR(Capital Requirements Regulation:資本要件規則)、特に税務及び規制上のコールに、対応させるための変更を勧告している。

19.7.EIOPAの助言
プリンシパルロス吸収メカニズムの運営

1507.EIOPAは、プルーデンシャル・ベネフィットの不在を念頭に置いて、現時点では、各規制の構造における根本的な違いに基づいて、銀行制度と整合しないより強力なケースがあると考えている。それにも関わらず、EIOPAは、委員会への助言を確定する前に、この問題を引き続き分析する。

1508.EIOPAは、加盟国内で異なる慣行と実施を観察しているため、たとえPLAMを銀行制度に整合させないと決定した場合でも、PLAMの運営をさらに特定するために委任規則の変更が行われるべき、ことを勧告するつもりである。

いつ、どのように部分的な償却が許可されるべきか

1509. EIOPAは、制限されたティア1商品は、少なくとも、SCRのカバレッジが75%に達しないか又はMCRが破られた(したがって、これらのケースでは部分的償却は不可能)時点で、完全に償却されなければならないと考えている。

1510.EIOPAは、3ヵ月のSCR違反の強制的トリガーが達成された場合には、部分償却が許可されるべきであるが、75%のSCR違反とMCR違反のトリガーが引き金を引かれない限りにおいてである、ことを勧告する。

1511.さらに、EIOPAは、75%のSCR違反で、商品が完全に償却されるような方法で、最低、rT1が定額法で償却されることを勧告している。

1512.EIOPAは、ソルベンシーII指令第138条第4項に従って宣言された例外的な不利な状況がなければ、会社は、SCRのカバレッジを再計算し、必要に応じてSCRの遵守が回復されるまで3ヵ月ごとにさらに償却を行う、ことを勧告する。

1513.EIOPAは、会社は、今後3ヶ月ごとにSCRカバレッジ比率がさらに悪化した場合には、更なる償却を適用することが求められるべきであると勧告する。

1514.EIOPAは、助言を最終化する前に、コンバージョンの問題をさらに検討する必要がある。一方、この協議の一環として、EIOPAは、部分的なコンバージョンが適用されるかどうか、またどのように適用されるのかについて、ステークホルダーのフィードバックを歓迎する。

トリガー時に償却する制限されたティア1の税効果

1515.EIOPAは、銀行制度と整合せず、代わりに発行時のrT1商品の元本を引き続き完全に認識できるようにすることを勧告する。さらに、EIOPAは、監督当局が、以下の場合に、ケース別に、償却するという要件から例外的な免除を行うかどうかを検討する能力を提供することを勧告する。
・会社は、そのような免除を要求し、合理的な前提に基づき、償却の税効果が会社のソルベンシー・ポジションを著しく弱める可能性が高いことを示すことになる、納税年度末に向けての予測を提供する。
・会社の監査役は、当該予測に使用された前提が合理的であることを文書で確認する。そして
・75%SCR強制的トリガーもMCRも破られていない。

1516.EIOPAは、免除の申請の締切りを決定することが望ましいかどうか、そしてこれらの締切日をどうするべきかについてのステークホルダーからのフィードバックを歓迎する。

早期償還、税務上のコール、規制上のコール

1517.EIOPAは、ソルベンシーIIをCRR、特に税務及び規制上のコールに、対応させるための変更を勧告する。そうすることで、EIOPAは、これがCRRIIの2016年11月草案に沿ったものであると述べている。

 
4 ソルベンシーII委任規則第69条(a)(iii), (v) ,(b)に規定されている項目
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中村 亮一

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