2017年12月19日

中国の生命保険市場(2016年版)基礎データ-【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(29)

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき

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7-収支状況

(図表12)既存・生保大手4社の収支状況 中国の生命保険業の収支動向は公表されていないため、以下では、資産運用と同様に、大手生保4社について確認し、収支の全体像を概観する。

2016の既存大手4社の営業収入の総額は、前年比8.4%増の1兆2,455億元であった(図表12)。運用収益の落ち込みを保険料等収入の伸びでカバーした。

営業支出では、手数料・コミッション、責任準備金等の繰入が増加したこともあって、営業利益も前年より大幅に減少した。

最終的な純利益は前年比25.9%減の574億元となった。
 

8-保険の地域別普及状況〔生損保合計〕

8-保険の地域別普及状況〔生損保合計〕

2016年の1人あたりの保険料拠出は2,258元(生損保合計)で、2015年より491元増加した(図表13)。

地域別の普及状況は、所得の高い東部地域で普及が最も進んでいる。1人あたりの保険料拠出が最も多い北京市は、全国平均のおよそ4倍の規模となっている。また、2016年の公表データのうち、最も少ない貴州省は全国平均のおよそ4割、北京市の1/9となり、普及の地域格差は引き続き大きい。
(図表13)地域別保険普及状況(生損保合計)

9-世界における中国生命保険市場の位置づけ

9-世界における中国生命保険市場の位置づけ

スイス再保険会社のSigma 「World insurance in 2016」によると、世界における中国の生命保険市場は、過去数年で着実に順位を上げている。2016年はアメリカ、日本に次いで3位となっており、アジアにおいては、日本に次ぐ規模にまで成長している(図表14)。

国・地域別の生命保険料の規模において、上位5カ国の伸び率を見てみると、直近3年間では中国がその他の4カ国を遥かに凌いでいることが分かる(図表15)。中国は、世界における規模、その成長率から、近年の生命保険市場を牽引する存在になりつつあると言えよう。
(図表14)国・地域別 生命保険料収入シェア/(図表15)国・地域別の生命保険料の伸び率
一方、中国は人口が多く、地域によって経済格差が大きいこともあり、「GDPに占める生命保険料収入の割合」は2.3%、「国民1人当たりの生命保険料収入」は190ドルと相対的に低く、いずれも世界平均にさえ達していない(図表16、図表17)。国民1人1人に広く保険が普及している状況とは言い切れず、引き続き今後の成長の余地は大きいと考えられる。
(図表16)GDPに占める生命保険料収入の割合/(図表17)1人当たりの生命保険料収入

10-おわりに

10-おわりに

2016年、中国生保市場は大きく成長した反面、その成長に内在した問題がクローズアップされた1年でもあった。2016年後半には、保監会が、保険市場の健全化に向けた規制やリスク管理、組織のあり方などの強化策を次々に発表し、各社はその対応に追われた。一連の騒動を受けて、2017年4月には、保監会のトップが更迭されている。まだ事態の安定化には一定の時間がかかるが、市場の健全化に向けた取組みに効果が表れてきており、成長は引き続き堅調に進むと考えられる。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき (かたやま ゆき)

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

経歴
  • 【職歴】
     2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
     (2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
     ・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
     (2019年度・2020年度・2023年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
     ・千葉大学客員准教授(2023年度~) 【加入団体等】
     日本保険学会、社会政策学会、他
     博士(学術)

(2017年12月19日「保険・年金フォーカス」)

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