2017年12月12日

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットについてのCPを公表(1)-欧州委員会に対する助言内容-

中村 亮一

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6|自然カタストロフィリスク
(1)欧州委員会からの助言要求内容
この項目に対する要求内容も、「4|健康カタストロフィリスク」に対するものと同一であるため、ここでは省略する。

(2)EIOPAの助言
(2-1) 自然カタストロフィリスクサブモジュールの簡素化
自然カタストロフィリスクサブモジュールを簡素化する取組みの中で、EIOPAは、6つの選択肢を検討し、割り当てられていないエクスポジャーを最も高いゾーンウェイトを有するゾーンへマッピングする選択肢(オプション5)が、フォローが容易で、追加の説明の必要なしに明白であることから、最も適切であると評価している。ただし、どのオプションが望ましいかに関するステークホルダーのフィードバックを歓迎する、としている。

(2-2) 自然カタストロフィシナリオの再較正
自然カタストロフィシナリオの再較正については、クロスボーダーの整合性を保証する方法についての決定が未解決なため、今回提案された再較正は非常に暫定的であり、特に、ステークホルダーは、今回示された再較正が上方修正される可能性があることを認識することが重要である、としている。

具体的には、シナリオ特有の多くのリスクファクターが変更され、また暴風と雹のシナリオが新しく導入され、関連する集計マトリックスの更新及びゾーンリスクウェイトの再較正が提案された。

(2-3) 契約上の限度と自然カタストロフィリスク
契約上の限度や自然カタストロフィリスクについては、ステークホルダーは、歴史的事象や関連する損失の証拠、専門ソフトウェアによって行われた評価の結果が、いくつかのシナリオでは不適切な結果を示したと主張した。特に、標準式アプローチは、特定のシナリオのための契約条件(補償限度額及び控除可能額)の存在を適切に組み入れていないと結論付けた。

(2-4) 契約上の限度と自然カタストロフィリスク
EIOPAは、平均的な会社とは異なる契約条件で契約を販売する会社の特定のエクスポジャーを考慮に入れるため、事後調整を提案した。

6.3.自然カタストロフィリスクサブモジュールの簡素化
6.3.3.3. EIOPAの助言

368.異なる簡素化オプションの議論の後、EIOPAは、割り当てられていないエクスポジャーを最も高いゾーンウェイトを有するゾーンへマッピングするオプション5が最も適切であるとして評価した。

369.特に、オプション5の簡素化は、全ての現実的な状況において、委任規則第88条の条件を満たしている。さらに、このアプローチは、フォローが容易で、追加の説明の必要なしに明白である。可能な公式化は、
・地域/国rの暴風/雹/地震/洪水/沈下リスクの保険金額(SI)が特定のゾーンiにマッピングできない場合は、SIはリスクウェイトが最も高い地域rの中のゾーンjのSIj に加えられるべきである。
又は
・地域rの暴風/雹/地震/洪水/沈下リスクの保険金額(SI)が特定のゾーンiにマッピングできないが、SIが存在する可能性(他のゾーンは除外することができる)がある地域(j1……jn)内の特定のゾーンセットに関する情報がある場合、SIはゾーンのサブセットの最もリスクウェイトが高いゾーン𝑗∈(𝑗1...𝑗𝑛)に加えられるべきである。SIが地域(𝑗1...𝑗𝑛)にのみ割り当てられる場合、これは地域内で最も高いリスクゾーンとみなされる。

370.EIOPAは、どのオプションが望ましいかについてステークホルダーのフィードバックを歓迎する。

6.4.自然カタストロフィシナリオの再較正
6.4.3.3.EIOPAの助言

402.クロスボーダーの整合性を保証する方法についての決定が未解決なため、以下に提案された再較正は非常に暫定的であることを強調することが重要である(すなわち、オプションaもオプションbもまだ新しいファクターに適用されていない)。特に、ステークホルダーは、以下に示す再較正が上方修正される可能性があることを認識することが重要である。

暫定的な再較正された国別ファクター:
403.上記で概説した再較正プロセスに続いて、以下の暫定再較正が達成された:

404.シナリオ特有のリスク要因
・DE_WS:0.07%(以前の値:0.09%)
・FI_WS:0.06%(新しいシナリオ)
・HU_WS:0.02%(新しいシナリオ)
・SE_WS:0.085%(以前の値:0.09%)
・SI_WS:0.05%(新しいシナリオ)
・ES_WS:0.01%(以前の値:0.03%)
・R_EQ:1.75%(以前の値:1.85%)
・T_EQ:0.77%(以前の値:0.80%)
・K_EQ:0.16%(以前の値:0.15%)
・E_FL:0.195%(以前の値:0.20%)
・U_FL:0.275%(以前の値:0.40%)
・Z_HL:0.045%(プロパティ、新しいシナリオ)
・I_HL:0.08%(プロパティ、新しいシナリオ)

405.地域/国レベルでの暴風シナリオの更新された集計マトリックス:
地域/国レベルでの暴風シナリオの更新された集計マトリックス:
406.地域/国レベルの雹シナリオの更新集計マトリックス:
地域/国レベルの雹シナリオの更新集計マトリックス:

407.暴風と雹のシナリオだけが新たに導入されたため、地震と洪水の地域レベルの集約マトリックスは更新する必要がなかった。

再較正されたゾーンウェイト:
408.上記で概説した再較正プロセスに続いて、以下のシナリオのゾーンリスクウェイトに対する再較正が提案される。

・暴風
a.フィンランド(新しいシナリオ)
b.ハンガリー(新しいシナリオ)
c.スウェーデン
d.スロベニア(新しいシナリオ)

・地震
a.ギリシャ
b.スロバキア
・洪水
a.ハンガリー

・雹
a.チェコ共和国(新しいシナリオ)
b.スロベニア(新しいシナリオ)

409.再較正されたゾーンリスクウェイト(CRESTA4相対性ファクター)とこれらのシナリオのそれぞれの集計マトリックスの一覧は、EIOPAのWebページからダウンロードできる。
https://eiopa.europa.eu/Publications/Consultations/EIOPA-CP-17-006_Section_6.4.3.3_Provisional_Zonal_Calibration_NAT_CAT.xlsx

410.いくつかのシナリオのゾーン再較正は、現在、検証の対象となっている。

6.5.契約上の限度と自然カタストロフィリスク
6.5.3.3.EIOPAの助言

425.この提案は、「事後調整」と呼ばれ、リスク毎に以下のように機能する。

1)各ゾーンについて、以下の式を適用して、対応する総損失を計算する: 国のファクター×ゾーン相対性×控除可能額と契約上の限度の総保険金額 委任規則の表記法を使用して地域𝑟と地域𝑖で
  
2)会社固有の契約条件を用いて、ゾーン𝑖 における最大総エクスポジャーを定義する:
  
3)ゾーン𝑖の最大損失として1)と2)の間の最小値を取る:
  
4)集計行列を使用して、領域𝑟の損失を計算する:
  

426.この調整により、平均的な会社とは異なる契約条件で契約を販売する会社の特定のエクスポジャーを考慮に入れることができる。会社の引受け契約が大災害発生時に平均的な会社よりも保険金額をより大きく制限している場合、「事後調整」はこの特定会社のSCRが非現実的に大きくなることを回避する。

427.いくつかのケースでは、契約上の限度は、特定のゾーン内でより大きく異なる可能性がある。そのような特定のケースでは、そのような「事後調整」は、例えば、同種の契約のグループのように、ゾーンよりも細かいレベルで実行できる。

428.会社が提案された選択肢を利用する場合、特にさらに細分化する場合には、適切な量的情報を用いて、ORSAにおいてそれを開示すべきである。例えば、上記の1)及び2)の結果、地域レベル、リスクゾーン又は同種の契約レベルでの各契約に対するSCRの減少。

 
4 CRESTA(Catastrophe Risk Evaluating and Standardizing Target Accumulations )
 

4―まとめ

4―まとめ

以上、今回のレポートでは、EIOPAが、2017年11月6日に公表した「ソルベンシーII委任規則の特定項目に関する欧州委員会へのEIOPAの第2の助言セットに関するコンサルテーション・ペーパー」の中から、保険引受けリスクに関係する項目について、欧州委員会からの助言要求項目の内容とそれに対する今回のCPでの助言案について報告してきた。

次回のレポートで、資産運用に関係する項目について報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2017年12月12日「基礎研レポート」)

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