2017年12月12日

EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第2の助言セットについてのCPを公表(1)-欧州委員会に対する助言内容-

中村 亮一

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1―はじめに

ソルベンシーIIのレビューに関しては、欧州委員会から受けた技術的助言要求項目に対して、EIOPA(欧州保険年金監督局)が検討を行い、2017年7月4日に、「ソルベンシーII委任規則の特定項目に関する欧州委員会へのEIOPAの第1の助言セットに関するコンサルテーション・ペーパー」を公表した。このコンサルテーション・ペーパー(CP)の内容については、基礎研レポート「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(1)-欧州委員会に対する助言内容-」(2017.8.21)及び「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(2)-政策オプションの影響評価-」(2017.8.22)で報告し、これに対する関係者の意見については、保険年金フォーカス「EIOPA のソルベンシーIIレビュー に関する CP に対する反応 -欧州保険業界団体からの意見-」で報告した。

これらのフィードバックも踏まえて、EIOPAは、2017年10月30日に、「ソルベンシーII委任規則の特定項目のレビューに関する第1の助言セット」(以下、「第1の助言セット」という)1をまとめて欧州委員会に提出したが、この内容についても、基礎研レポート「EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットを欧州委員会に提出」(2017.11.7)で報告した。

今回、EIOPAは、2017年11月6日に、「ソルベンシーII委任規則の特定項目に関する欧州委員会へのEIOPAの第2の助言セットに関するコンサルテーション・ペーパー」(以下、「今回のCP」と言う)2を公表し、関係者からのフィードバックを求めている。

今回を含めた複数回のレポートで、この第2の助言セットに関する今回のCPの概要を報告する。

まずは、今回のレポートでは、今回のCPの全体概要とEIOPAによる助言のうち、保険引受けリスクに関係する項目について報告する。  

2―今回のCPの全体概要

2―今回のCPの全体概要

この章では、EIOPAによる公表資料とCPの前書き(Introduction)に基づいて、CPの全体概要を報告する。

1|ソルベンシーIIレビューの背景
ソルベンシーIIのレビューは、ソルベンシーII指令の立法文書に従う正式なプロセスである。ソルベンシーII委任規則のリサイタル150は、ソルベンシー資本要件の標準式の見直しのためのタイムラインを規定している。レビューの第1段階は、2018年12月までに欧州委員会によって最終決定され、ソルベンシーIIの枠組みは2021年までに見直される予定である。EIOPAは、2016年12月に発行されたディスカッション・ペーパー(DP)でレビューを開始した。

2|ソルベンシーIIレビューの目的
EIOPAは、現在実施中のレビューに関して、「レビューの主な目的は、(再)保険会社に対する比例的かつ技術的に一貫した監督体制を確保し、ソルベンシー資本要件の公式を簡素化し、要件の比例的な適用を確実にすることである。」としている。

3|今回のCPがカバーする項目
今回のCPの対象は、以下の項目となっている。

(1) 保険料及び準備金リスクの標準的なパラメータの再較正
(2) 保険料リスクのためのボリューム指標
(3) 死亡及び長寿リスクの再較正
(4) 健康カタストロフィリスク
(5) 人為的なカタストロフィリスク
(6) 自然カタストロフィリスク
(7) 金利リスク
(8) 市場リスク集中
(9) グループレベルでの通貨リスク
(10) 未格付債務
(11) 非上場株式
(12) 戦略的株式投資
(13) カウンターパーティーデフォルトリスクの簡素化
(14) CCPsへのエクスポジャーの取扱とEMIRに起因する変更
(15) ルックスルーアプローチの簡素化
(16) グループレベルでのルックスルーアプローチ
(17) 繰延税金の損失吸収能力
(18) リスクマージン
(19) 保険及び銀行部門における自己資本の比較
(20) 全体ティア1の20%までティア1として適格な資本手段

さらに、最後に「影響評価」を行っている。

4|今回のCPの構造
CPは上記の3の項目をカバーする形で21の章に分かれている。

各章は2つの例外を除いて、同じ構造に従っている。具体的には、(A)助言要求の抜粋、(B)法的根拠、(C)ディスカッション・ペーパーに対して受け取った主なコメントに関するフィードバックステートメント、(D)EIOPAの助言(分析及び助言(関連する場合は条項に対する提案))、となっている。

例外は、委員会が要求する情報のみを提供する戦略的株式投資に関する第12章と影響評価に関する第21章となっている。

なお、今回のCPは382ページに及ぶ大部のペーパーになっているが、これについては、カバーしている項目の多さと提案した助言の根拠に関して完全な透明性を有して記述したいというEIOPAの希望を反映している、ことによるものとしている。
5|今回のCPに対する今後のプロセス
今回のCPに対しては、ステークホルダーにフィードバックを提供するように呼びかけているが、この協議期間は、2018年1月5日に終了する。EIOPAは、今回のCPの対象分野についての最終的な助言を2018年2月末までに欧州委員会に送付する、としている。

 (参考)EIOPAの公表内容2

EIOPAは、ソルベンシー資本要件の見直しのための第2の助言セットについて協議にかける

今日、EIOPA(欧州保険年金監督局)は、指令及び委任法で予見されたソルベンシーIIのソルベンシー資本要件(SCR)のレビューのための第2の助言セットに関するコンサルテーション・ペーパーを発行した。 この協議は、2017年10月30日に欧州委員会に提出された助言の対象ではないSCR標準式の見直しにおける残りの要素に焦点を当てている。

この協議により、EIOPAは、以下の目標で、重要なソルベンシーIIレビュープロセスを続ける。

・保険業界に比例的で、技術的に堅牢で、リスクに敏感で一貫した監督体制を確保する
・可能な簡素化を提案する

EIOPAは、SCR標準式の包括的な側面について協議しており、繰延税金の損失吸収能力、損害保険及び生命保険引受リスクの計算、カタストロフィリスク、未格付債務及び未上場株式のような主要サブモジュールやリスクマージンの計算における資本コストなどの他のトピックに関するステークホルダーのフィードバックを求める。

ステークホルダーの反応は、技術的に健全な助言とSCRレビューの目的を達成するための情報に基づく意思決定を行う上で重要である。EIOPAは、既にコンサルテーション・ペーパーの作成中にステークホルダーとの重要な対話に取り組んでいる。

協議の結果、2018年2月末までに欧州委員会に提出される第2の助言が得られる。協議期間は2018年1月5日金曜日に終了する。

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中村 亮一

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