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- ゴールドバッハの予想-2より大きい全ての偶数は2つの素数の和として表せる-
はじめに
ただし、実際は、「ゴールドバッハの予想」は、誰しもがその内容を容易に理解できるものである。
今回は、この「ゴールドバッハの予想」について紹介したい。
ゴールドバッハの予想とは
予想が述べていること自体を理解することは易しくても、これを証明することは大変難しい。素人感覚からすると、予想自体は、一瞬本当だろうかと思われるかもしれない。素数が無数にあることは良く知られているが、いくら何でもどんな偶数も2つの素数の和に分解できると言われれば、そんなことが本当に可能なのだろうかと思ってしまう人も多いだろう。
ところが、コンピューター等により、かなり大きな数(2012年4月時点で4×1018:日本の数字の単位で言えば、100京の水準)までは正しい、ことが証明されている。従って、一般的には、予想は正しいものと想定されている。
なお、2つの素数は同じものでもよい。また、分解の方法は一通りとは限らず、複数の方法がありうる。
ところで、4=2+2であるが、6以上の偶数の2つの素数への分解においては偶数の2が使用されることはないことから、この予想は「4より大きい全ての偶数は2つの奇素数の和として表せる」と言い換えることもできる。
さらには、これは「5より大きい全ての自然数は3つの素数の和として表せる」と言い換えることもできる。なぜならば、「ゴールドバッハの予想」が正しければ、素数の2や3を1つ使用することによって、残りの偶数を2つの素数の和として表すことができるからであり、また、逆に上記の予想が正しければ、6以上の偶数が3つの素数の和として表せることになるが、そのうちの素数の1つは必ず2になるからである(3つの和が偶数になるのは、奇数+奇数+偶数か、偶数+偶数+偶数、のパターンしかないが、偶数の素数は2しかない)。
具体的な例を見てみると
4=2+2 6=3+3 8=3+5
10=3+7=5+5 12=5+7 14=3+11=7+7
もっと大きな数で見てみると、例えば
100=3+97=11+89=17+83=29+71=41+59=47+53 6通りの分解
1000=3+997=17+983=23+977=29+971=……… =491+509 28通りの分解
という具合になり、数字が大きくなれば、幾通りもの分解ができることになる。
弱いゴールドバッハの予想
素数の分布
ところが、素数は結構な密度で存在している。
1~10まで 2、3、5、7 の4個
1~100まで 2、3、5、7、11、13、17,19,23,29,31,37……… 83,89,97 の25個
1~1000まで 168個
であるが、
1~1018まで 24,739,954,287,740,860(=2.4739954287740860×1016)個
1~1019まで 234,057,667,276,344,607 (=2.34057667276344607×1017)個
となっており、1018~1019というような大きな数字の範囲においても2×1017個以上の素数が存在していることがわかる。
素数の分布については、数多くの研究が行われてきているが、未だ完全に解明されているわけではなく、解明されていないことも多い。
数字が大きくなれば、素数の分布の密度は低くなるが、一方で、数字が大きくなればなるほど、2つの数字で表す組み合わせの数が多くなるので、これらのうちに素数だけのパターンが少なくとも1つは存在していることはありうるのではないか、と考えられることになる。実際に先の具体的な例はそのようなことを示しているとも考えられる。
ゴールドバッハについて
数学の証明
これについては有名な例がある。「フェルマーの定理」等で有名なフランスの数学者であるピエール・ド・フェルマー(Pierre de Fermat)は、「(今はフェルマー数とよばれる)22n+1(nは自然数)(=Fnと記される)表される自然数は全て素数である。」と予想した。F4=65537までは正しかったが、1732年に、オイラーがF5=4294967297(=641×6700417)は素数ではない(反例)ことを示し、この予想が正しくないことを証明した。
数学の世界では、任意の数で正しいことを証明しなければならないことから、そのために新たな発想や考え方が必要になってくる。
そもそも、「ゴールドバッハの予想」についても、コンピューターでは「2012年4月時点で4×1018までは正しいことが証明されている」と述べたが、この数字自体も無限を対象としている数学の世界においてはそんなに大きな数字ではない、といえるのかもしれない。
近い将来に「ゴールドバッハの予想」が解決されることを期待して、今後もこの問題やその背景となる素数の分布等に関する研究の動向には関心を持っていきたいと思っている。
中村 亮一
研究・専門分野
(2017年12月11日「研究員の眼」)
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