2017年12月08日

2017~2019年度経済見通し-17年7-9月期GDP2次速報後改定

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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2. 実質成長率は2017年度1.9%、2018年度1.2%、2019年度1.0%

(2017年度の成長率見通しを上方修正)
2017年7-9月期のGDP2次速報を受けて、11/16に発表した経済見通しを改定した。実質GDP成長率は2017年度が1.9%、2018年度が1.2%、2019年度が1.0%と予想する。2017年4-6月期、7-9月期の実績値が上方修正されたことに加え、2017年1-3月期の上方修正によって2016年度から2017年度への発射台(ゲタ)が上がったことを反映し、2017年度の成長率見通しを0.3%上方修正した。
実質GDP成長率の推移(四半期)/実質GDP成長率の推移(年度)
先行きの日本経済は、円安基調や海外経済の回復に伴う輸出の増加、高水準の企業収益を背景とした設備投資の回復が続くことが見込まれる一方、実質所得の低迷が続く家計部門は消費、住宅投資ともに低調に推移する公算が大きい。当面は企業部門(輸出+設備投資)主導の成長が続くことが予想される。
実質雇用者報酬の予測 2018年度は企業部門の改善が家計部門に一定程度波及することが見込まれる。具体的には、春闘賃上げ率が3年ぶりに前年を上回ることを反映し、所定内給与の伸びが高まること、企業収益との連動性が高い特別給与(ボーナス)も明確に増加することから、名目雇用者報酬は前年比2.4%となり、2017年度の同2.0%から伸びを高めるだろう。

しかし、同時に物価上昇率も高まるため、実質雇用者報酬は前年比1.5%と2017年度と同じ伸びにとどまることが予想される。引き続き消費が景気の牽引役となることは期待できないだろう。

また、好調が続く企業収益だが、2018年度に入ると賃上げによる人件費の増加や、円安、原油高に伴う原材料費の増加などから、増益率の鈍化が見込まれる。企業の投資スタンスが慎重な中では企業収益の減速に伴い設備投資の伸びが頭打ちとなることは避けられないだろう。この結果、2018年度の成長率は2017年度よりも明確に低下する可能性が高い。

2019年度は2019年10月に予定されている消費税率引き上げ(8%→10%)が経済、物価に影響を及ぼす。ただし、次回の引き上げは前回よりも税率の引き上げ幅が小さく、飲食料品(酒類と外食を除く)及び新聞への軽減税率の適用によって、1%引き上げによる消費者物価への影響は従来の約4分の3にとどまる。また、税率引き上げは2019年度下期からとなるため、年度ベースの影響は2019年度、2020年度ともに1%分(軽減税率導入を考慮すると0.75%分)となる。さらに、年度途中からの引き上げとなるため、駆け込み需要とその反動減は2019年度内でほぼ相殺されることが想定される。

2014年度の実質GDPは消費税率引き上げによる悪影響を主因として▲0.3%のマイナス成長となった。次回の消費税率引き上げは前回に比べて経済に対するマイナスの影響が小さくなることに加え、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う押し上げ効果も期待されることから、2019年度の経済成長率が大きく落ち込むことは避けられるだろう。
(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2017年1月に前年比0.1%と1年1ヵ月ぶりの上昇となった後、10月には同0.8%まで伸びを高めた。物価上昇のほとんどはエネルギー価格の上昇によるものだが、ゼロ%程度で推移していた「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の上昇率も2017年10月には前年比0.2%と小幅ながらプラスとなり、基調的な物価にも改善の兆しがみられる。

先行きについては、エネルギー価格の前年比上昇率はいったん頭打ちとなるものの、足もとの原油価格上昇を受けて、2018年半ば以降は再び伸びを高める可能性が高い。また、円安に伴う輸入物価の上昇や景気回復に伴う需給バランスの改善が先行きの物価の押し上げ要因となることが見込まれる。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測 さらに、企業収益の大幅改善、物価上昇を受けて2018年度に入ると賃金上昇率が高まることから、低迷が続いているサービス価格にも徐々に上昇圧力がかかるだろう。コアCPIは2017年度末にかけていったん伸び率が頭打ちとなるものの、その後は再び伸びを高め、2018年後半には1%台に達することが予想される。

ただし、企業の価格改定に直結する個人消費の回復が緩やかにとどまり、経済成長率を下回る状態が続くこと、賃金上昇率がベースアップでゼロ%台にとどまる中ではサービス価格の上昇圧力も限られることなどから、2019年度中に日本銀行が物価安定の目標としている2%に達することは難しいだろう。

コアCPI上昇率は2016年度の前年比▲0.2%の後、2017年度が同0.7%、2018年度が同1.1%、2019年度が同1.7%(1.2%)と予想する(括弧内は消費税率引き上げの影響を除くベース)。

 
日本経済の見通し(2017年7-9月期2次QE(12/8発表)反映後)
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2017年12月08日「Weekly エコノミスト・レター」)

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