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米国財務省がノンバンクSIFIの指定プロセスに関する覚書を公表-ノンバンクSIFI指定プロセスの改善方法を勧告-
中村 亮一
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3―ACLI(米国生命保険協会)の反応
ACLIのDirk Kempthorne 会長兼CEOは、「金融安定監督評議会(FSOC)の指定に関する報告に対し、Steven Mnuchin 財務長官と財務省に対して敬意を表する。」として、「いかなる生命保険会社も、システム上重要であると指定されるべきではない。」、さらに「報告書は、以下の点を正当に認識した。」と述べた。
(1) 保険会社をシステミックであると指定することは、金融安定性に対する潜在的なリスクに対処するための効果的又は効率的なアプローチではない。
(2) FSOCは、潜在的なシステミックリスクに対処することを含む、州の保険監督当局の洞察と専門知識を活用すべきである。
(3) 指定分析は、より厳密で透明性が高く一貫性を提供するよう改革されるべきである。
(4) FSOCは指定されたノンバンク金融会社に対して、その指定につながる特定のリスクをより明確にはっきりと述べるべきである。
そして、「民間セクターのセーフティネットとしての業界の役割を強化するイニシアチブについて、Mnuchin 財務長官及び他の政策立案者と協力することを楽しみにしている。」と述べた。
2017年11月17日
財務省報告書に関するACLI
米国生命保険協会(ACLI)のDirk Kempthorne 会長兼CEOは、米国財務省の金融安定監督評議会(FSOC)の指定に関する次の声明を発表した。
ワシントンD.C.(2017年11月17日) - 「米国生命保険協会(ACLI)は、金融安定監督評議会(FSOC)の指定に関する報告に対し、Steven Mnuchin 財務長官と財務省に対して敬意を表する。」
「ACLIは報告書全体をレビューしているが、指定プロセスにおける関与の強化と透明性への強調に元気付けられている。いかなる生命保険会社も、システム上重要であると指定されるべきではない。報告書は、以下の点を正当に認識した。」
・保険会社をシステミックであると指定することは、金融安定性に対する潜在的なリスクに対処するための効果的又は効率的なアプローチではない。
・FSOCは、潜在的なシステミックリスクに対処することを含む、州の保険監督当局の洞察と専門知識を活用すべきである。
・指定分析は、より厳密で透明性が高く一貫性を提供するよう改革されるべきである。
・FSOCは指定されたノンバンク金融会社に対して、その指定につながる特定のリスクをより明確にはっきりと述べるべきである。
「財務省はまた、金融監督当局との緊密な連携を含め、FSOCが、主たる監督当局との緊密な調整に取り組むことを通じて、金融サービス業界全体のシステミックリスクを特定するための3段階のプロセスを実施することを勧告し、個々の保険会社を厳格な連邦監督に指定することは、 システミックリスクを軽減するための最善のアプローチではない、と指摘した。」
「生命保険業界は、政府のプログラムへの圧力を緩和しつつ、米国民が金融上の将来の準備を支援するのを手助けしている。私たちは、民間セクターのセーフティネットとしての業界の役割を強化するイニシアチブについて、Mnuchin 財務長官及び他の政策立案者と協力することを楽しみにしている。」
4―まとめ
今回の覚書の内容は、これまでに保険業界が行ってきた主張に沿ったものとなっており、その意味では、これまでいくつかの問題で連邦と対立してきた保険業界にとっては明確な勝利を意味するものとなっていると思われる。
米国財務省は、FSOCが個々のノンバンク金融会社への監督ではなく、より広いシステミックリスクに焦点を当て、活動ベースのアプローチ又は業界全体のアプローチを強調するプロセスを通じて、金融安定性に対するリスクに取り組むこと、また一旦指定された会社が強化された監督から解除されるためのオフランプ(出口車線)を提供することを勧告している。
さらには、FSOCが新しいSIFI指定を行う前にコストベネフィット分析を実施することを勧告し、政府機関による規制措置は悪影響を与える以上の利益をもたらす場合にのみ適切であり、もしFSOCがその行為のコストとベネフィットを評価しようとしているのでなければ、この点については何の信頼もない、としている。
また、FSOCは、指定に至った重要なリスクを明確にし、最も重要な要素を列挙し、年1回の再評価のためのより強固で透明なプロセスを採用すべきである、としている。
このようなプロセスを通じて、指定会社は指定につながった主要な要素に対処するように促されることになるため、米国の金融安定性に対するリスクを減らすという政府の目標を達成するのに役立つことになる、としている。
米国の保険会社3社はもともとSIFIとして指定されていたが、AIGのSIFI指定はもはや「大きすぎて潰せない(too big to fail)」リスクがなくなったとして、2017年9月に指定を解除された。
MetLifeは、現在、裁判所を通じてその指定を争っており、Prudential Financialは、SIFIプロセスを改革する一連の動きにより、その指定が正式に解除されることを期待している。
今回の大統領宛覚書を踏まえて、実際にMetLifeやPrudential FinancialのSIFI指定が今後どのように取り扱われていくことになるのかという点については、国際的なレベルでのG-SIIs(グローバルにシステム上重要な保険会社)指定に関する動向と併せて、引き続き注目を浴びている事項であることから、継続的に注視していくこととしたい。
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中村 亮一
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(2017年12月04日「保険・年金フォーカス」)
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