2017年11月17日

ECBの緩和縮小-景気拡大でも慎重姿勢の3つの理由-

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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■要旨
  1. ユーロ圏の景気拡大が続いている。実質GDPは7~9月期まで4四半期連続で前期比年率2%を超えている。EUの欧州委員会は「2017年秋季経済予測」でユーロ圏の17年の実質GDPを2.2%に上方修正し、18年~19年も2%近辺の成長持続を予測した。
     
  2. ECBは10月理事会で、18年1月からの国債等の資産買い入れの月600億ユーロから月300億ユーロへの減額とともに(1)純資産買入れのオープンエンド化、(2)政策金利の長期据え置き、(3)買入れ資産の元本の再投資の長期継続、(4)固定金利・金額無制限の資金供給の19年末までの継続を決めた。
     
  3. ECBの決定の重点は、緩和縮小よりも著しく緩和的な金融環境の維持にある。
     
  4. 景気拡大でもECBが緩和縮小に慎重な姿勢をとるのは、(1)低インフレの持続が見込まれ、(2)ユーロ高リスクへの配慮が必要で、(3)過剰債務と不良債権処理が道半ばであるからだ。
     
  5. ユーロ圏の銀行の不良債権比率は低下傾向にあるが、一部の国で水準が高く、銀行収益と貸出の伸びを抑制している。不良債権問題への取り組みは、銀行同盟を完成させ、より安定的な単一通貨圏となるために超えなければならないハードルであり、銀行監督機関としてのECBにとっての最優先課題だ。
ECBの10月理事会での政策決定内容とフォワード・ガイダンス
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伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

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