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5――おわりに
さらに、現時点で患者数が増加しており、患者の自己負担が大きい技術(陽子線治療、重粒子線治療)についても、2016年4月、その一部が保険適用となり(小児腫瘍に対する陽子線治療、切除非適応の骨軟部腫瘍に対する重粒子線治療)、がん患者やその家族にとって朗報となった。
国民医療費増加の中での一定の制約はあるものの、患者数が多く、治験も証明されつつある先進医療については、たとえば入院時の給食費の自己負担増加による保険支出抑制などの合理的な方策で財源を確保し、可及的速やかに保険適用していくことが必須であろう。
これは、現在確立されている国民皆保険を堅持し、患者が経済的不安なしに受けられる合理的・納得的な医療体制を整備していくことに繋がるものと考える。
一方、先進医療の患者自己負担部分について、民間生保会社はさまざまな方策で軽減に努めてきた。
その方策のひとつが、入院特約における手術給付金(定額給付)の担保範囲の拡大である。
1987年4月、入院特約が改定されたが、その際、開腹や開胸などの「切る手術」ではない新しい医療技術についても、新たに保障を開始した(悪性新生物温熱療法、衝撃波による体内結石破砕術、ファイバースコープまたは血管・バスケットカテーテルによる臓器手術など)17。
うち、悪性新生物温熱療法の保険適用は1996年4月(1988年4月一部保険適用)、衝撃波による体内結石破砕術の保険適用は1988、1992年、多くの内視鏡による手術の保険適用は2000年以降であり、患者の自己負担に鑑み、公的な保険適用に先駆けて、民間が保障を開始したこととなる。
現在、生保会社が販売する手術を保障する特約や放射線治療を保障する特約などでも、先進医療の一部について支払対象とし、定額の給付を行っている例がある(とくに、放射線治療給付金と称する給付は、公的医療保険が適用される放射線治療に加え、先進医療であり、患者の自己負担が求められる陽子線治療、重粒子線治療をも保障する例が多い)。
もうひとつが、すべての先進医療の技術料などの実額を保障する先進医療特約である。
1984年高度先進医療創設後、1992年販売の高度先進医療特約は、現在先進医療特約として販売生保会社は40社中29社に及ぶ(通算支払限度は24社が2000万円、5社が1000万円。保険料は年齢、性別を問わず月100 円程度)。同特約では、患者による一時的な医療費の立て替えを回避するため、保険給付を病院に直接支払う「直接支払いサービス」が実施されている。
また、アクサ生命は2016年9月、患者申出療養の技術料を保障する「患者申出療養サポート」を発売した(1回につき1000万円、通算2000万円が支払限度で、保険料は年齢、性別を問わず月400円18。
今後も、民間生保会社での患者負担軽減に向けた商品・サービス両面での創意工夫に期待したい。
17 高橋昭二朗「入院関係特約の改訂について」、『生命保険経営』第56巻第2号、1988年3月。
18 「日本初の新商品、有配当タイプ『患者申出療養サポート』の販売を開始」、2016年9月15日、アクサ生命ホームページ。 このほか、先進医療ではないが、2016年4月に保険適用された難病による歩行機能を改善するロボットスーツHAL着用を保障する特約も発売された(2017年7月大同生命が発売)。
小林 雅史
研究・専門分野
(2017年10月19日「基礎研レポート」)
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