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- 欧州保険業界におけるM&Aの動向-2012年~2016年の動向 M&Aから見える欧州保険業界-
欧州の保険会社と新興市場の保険会社を含むM&Aが21%を占めた。
このタイプの中には、欧州の保険会社が新興市場の保険会社を買収する形のM&Aの他、欧州の保険会社が新興市場に保有する保険子会社を新興市場の保険会社に売却する形のM&A、先進国の保険会社どうしで新興市場に保有する保険子会社を売買する形のM&A、中国の保険会社が欧州の保険会社を買収する形のM&Aまで、さまざまな形態のM&Aが含まれている。(2)でも触れたように、最近は、欧州の保険会社が進出先から撤退する事例も増えている。
次のグラフ4は、このタイプに分類されたM&A案件をさらに細かくサブカテゴリーに分け、その分布状況を見たものである。これを見ると、
- 欧州の保険会社が新興市場で保険会社を買収した事例(売り手が先進国の保険会社であったものは含まない)は当タイプ中の32%にすぎない。
- 欧州の保険会社が新興市場に保有する保険子会社を新興市場の保険会社に売却した事例も同じく32%あった。
- 先進国の保険会社どうしの新興市場における保険子会社の売買は9%を占めた。
AMベストはこれは新興市場が成熟してきたということを示している。
- また中国の保険会社が欧州の保険会社を買収した事例の構成比は27%であった。中国の保険会社は、2013年に復星国際(フォースングループ)がポルトガルでFidelidadeを買収して以来、欧州保険市場での有力な買い手候補となっている。また欧州の保険会社が新興市場に持っていた保険子会社を売却する際の有力な買い手でもある。
これは非コア事業の売却を目的とする取引である。構成比は6%であった。
ランオフのM&Aでは、通常、ランオフオペレーターと呼ばれる専門会社が買い手となる。ランオフオペレーターは、市場を同じくする一定の地域内で共通の負債特性を有する保険や年金の既販売契約の群団を複数の保険会社との複数回のM&A取引を通じて有利な価格で買い取り取りまとめる。こうして契約群団の規模を大きくして、リスクを小さくするとともに管理コストを下げ、資産運用を高度化する。これにより売り手が負担と感じていた事業を収益化するとともに、既存契約の事業維持と契約者への支払いを満了する。
ランオフ取引の売り手は生保会社であることが多い。欧州の生保会社の中には金利水準が高かった時期に販売し長期の支払いを保証している年金・生保負債(レガシータイプの負債と言われる)を持っていて、低金利の圧迫とソルベンシーIIによる財務健全性確保要求に苦しんでいる会社がある。
AMベストは、ランオフ取引は、今後も拡大する可能性を秘めていると結論付けている。
3――タイプ分布の時系列変化
こうやって見てみると、各年のタイプ分布状況はバラバラで、グラフ3の均等な分布状態は個々の年には現れていない。
AMベストはこのグラフについて、新興市場を含むタイプと先進国の保険会社間の国境を越えた取引のタイプが早い時期に優勢であったが、調査期間の後半には、ロンドン市場での取引タイプや一国市場内の統合タイプ、ランオフ取引タイプが登場して重点のシフトが見られる、後者のタイプは2014から2016年にかけて活発となり重要であったが、一方で前者のタイプは全期間を通して一定のベースと鳴り続けたと記述している。
またAMベストは、今後のタイプ分布においては、買収対象となるべき残された保険会社が少ないロンドン市場タイプ、競争政策等のために大規模な統合は散発的なものとならざるを得ないと見られる一国市場内統合タイプは大きな構成比を持続的に獲得することはないだろうとしている。
グラフ6を見ると、件数ベースでは、「ドメスティック(国内取引)」対「クロスボーダー(国境を越えた取引)」に関しては「クロスボーダー(国境を越えた取引)」が、「焦点化(事業分野集約)」取引対「多様化」取引では「多様化」取引が、時の経過とともに比率を高めているように見えるが、金額ベースでは必ずしもそうとは言い切れない。
M&A統計においては、時に発生する大型案件が統計に大きな影響を与えることがあり、なかなか一概には言い尽くせないようである。
さいごに
欧州保険業界が直面している困難は、基本的には、わが国の生保業界が直面している困難と何ら変わるものではない。その意味では、同様の動きがわが国でも起こりえると見て、今後の参考とすべきことも多いと考えられる。
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松岡 博司
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(2017年10月03日「保険・年金フォーカス」)
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