2017年09月08日

2017・2018年度経済見通し~17年4-6月期GDP2次速報後改定

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1. 2017年4-6月期は前期比年率2.5%へ下方修正

9/8に内閣府が公表した2017年4-6月期の実質GDP(2次速報値)は前期比0.6%(年率2.5%)となり、1次速報の前期比1.0%(年率4.0%)から下方修正された。

成長率が下方修正された主因は、4-6月期の法人企業統計の結果が反映されたことにより、設備投資が1次速報の前期比2.4%から同0.5%へと大幅に下方修正されたことである。設備投資の下方修正によって実質GDP成長率は前期比▲0.3%(年率▲1.2%)押し下げられた。

その他の需要項目では、公的固定資本形成(前期比5.1%→同6.0%)、政府消費(前期比0.3%→同0.4%)が上方修正される一方、民間消費(前期比0.9%→同0.8%)、住宅投資(前期比1.5%→同1.3%)、民間在庫変動(前期比・寄与度0.0%→同▲0.0%)が小幅な下方修正となった。

なお、2017年4-6月期の2次速報と同時に過去に遡って計数が改定され、2016年4-6月期の実質GDPが前期比年率1.4%から同2.0%へ上方修正される一方、2016年7-9月期が前期比年率1.3%から同0.9%へと下方修正されるなど、2次速報としては比較的大きめの遡及改定となった。季節調整のかけ直しによって設備投資が過去に遡って改定されたことがその主因である。
 
2017年4-6月期の成長率は大幅に下方修正されたが、民間消費を中心とした国内需要主導の高成長となったことは1次速報と変わっていない。また、実質GDP成長率は2016年1-3月期から6四半期連続でゼロ%台後半とされる潜在成長率を上回っており、日本経済が着実な回復を続けているとの評価も1次速報時点と変わらない。
(大幅増益が続く中でも設備投資は低調)
9/1に財務省から公表された法人企業統計では、2017年4-6月期の経常利益(金融業、保険業を除く全産業)が前年比22.6%と4四半期連続で前年比二桁の高い伸びとなった。内外需要の堅調を反映し、製造業、非製造業ともに売上高の伸びが高まる中、人件費抑制などから利益率の改善が続いたことが収益を大きく押し上げた。

季節調整済の経常利益は21.1兆円となり、3四半期連続で過去最高水準を更新した。今回の景気回復局面では、非製造業に比べ製造業の収益回復が遅れていたが、世界経済回復の恩恵を受けて2016年度入り後急回復し、2017年4-6月期の利益水準は製造業、非製造業ともに過去最高となった。
経常利益の推移/経常利益(季節調整値)の推移
企業収益の好調が続いているが、設備投資の回復は緩やかなものにとどまっている。4-6月期の設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比1.5%と3四半期連続で増加したが、1-3月期の同4.5%から伸びが鈍化し、季節調整済・前期比(ソフトウェアを除く)では▲2.8%と3四半期ぶりに減少した。

日銀短観2017年6月調査で、2017年度の設備投資計画が6月調査としては直近10年間で最も高い伸びとなっていること、内外需要が底堅く推移していることなどを踏まえれば、設備投資の回復基調は維持されており、当面は腰折れのリスクも低いと判断される。
設備投資とキャッシュフローの関係 ただし、設備投資の回復はあくまでも企業収益の大幅な増加に伴う潤沢なキャッシュフローを主因としたもので、企業の設備投資スタンスが必ずしも積極化している訳ではない。企業の設備投資意欲を反映する「設備投資/キャッシュフロー比率」は低水準の推移が続いているが、企業収益が大幅に増加する中で設備投資の伸びが限定的にとどまっていることから、2016年度入り後はさらに水準を切り下げている。

企業の期待成長率が低水準にとどまる中では、企業の設備投資意欲が大きく高まり、キャッシュフローに対する設備投資の水準を大きく引き上げることは考えにくい。先行きについても、企業収益に比べ設備投資の回復ペースは緩やかなものとなる可能性が高いだろう。
百貨店売上高の推移 (長雨による個人消費への影響は軽微か)
8月は東京都心で日照時間が過去最短となるなど、東日本を中心に記録的な長雨となったが、現時点で明らかとなっている8月の消費関連指標を見る限り、天候不順による個人消費への悪影響は限定的にとどまっている。たとえば、大手百貨店5社が発表した8月の売上高はいずれも前年比で増加となっており、百貨店協会加盟全体の売上高も7月の前年比▲1.4%(店舗調整後)から8月には2%程度の増加に転じることが見込まれる。インバウンド需要が好調だったことに加え、気温が低い日が多かったこともあり、秋物衣料の売上が高い伸びとなった模様だ。
再び上昇する生鮮野菜価格 もちろん、ビール、清涼飲料などの夏物商材や海水浴、旅行などの行楽関連では一定の悪影響を受けた可能性が高いが、個人消費全体への影響は軽微にとどまったとみられる。

先行きについては、長雨や日照不足に伴う生鮮野菜の価格高騰が個人消費を下押しすることが懸念される。「消費者物価指数」(総務省統計局)では、生鮮野菜の価格は前年比でマイナス(全国は2017年7月、東京都区部は2017年8月中旬速報値)となっているが、農林水産省の「青果物卸売市場調査(旬別結果)」では、8月に入ってからきゅうり、トマトなど一部の品目で大幅な価格上昇が目立っている。

農林水産省の「野菜の生育状況及び価格見通し」(8月末公表)によれば、多くの品目で生育、価格が平年並みで推移する見通しとなっているが、野菜の高値が長期化すれば、物価上昇に伴う実質所得の低下やそれに伴う節約志向の高まりによって、2016年末頃と同様に個人消費が下振れリスクが高まるだろう。
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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