2017年08月31日

再び問われる交付税特会の行方-地方財政の健全性は高まったのか?

石川 達哉

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■要旨
国の一般会計予算と地方財政計画の間に位置して、国から地方への資金移転を媒介する役割を担っている交付税特会には、固有の歳入項目と歳出項目が存在するものの、かつては「入口ベースの地方交付税」と「出口ベースの地方交付税」の差額に、地方の歳入を巡る状況が象徴的に反映されているとみなすことができた。しかし、交付税特会による新規借入が完全に停止されてからは、法定5税に基づく交付税財源と地方が必要とする交付税総額との乖離に由来する地方財源不足額への対処が、交付税特会の外で行われる措置、特に、臨時財政対策債の発行を中心に行われるになり、その象徴性はもはや薄れている。

地方債としての側面と広義の地方交付税としての側面を併せ持つ臨時財政対策債は、短期間に残高が増大し、交付税特会借入残高(地方負担分)との合計額を見ると、2009年度以降はそれ以前と比べて毎年の増加幅が拡大している。これらは、本質的には、地方財源不足額の解消を先送りするものであり、恒常的に地方財源不足額が存在する構造を早急に改める必要がある。

■目次

1――はじめに:現存“4大特別会計”としての交付税特会
2――交付税特会の役割:フローの側面
  1|国の一般会計、交付税特会と地方財政計画の関係―交付税特会の調整機能
  2|入口ベースの交付税と出口ベースの交付税―交付税特会の象徴的な項目
  3|地方財政対策と交付税特会―地方財源不足解消のための諸施策
3――交付税特会の借入残高と臨時財政対策債の残高:ストックの側面
  1|交付税特会借入残高の推移
  2|交付税特会に対する「事業仕分け」と借入金の償還
  3|臨時財政対策債残高とその問題点
4――おわりに
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