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データ分析結果が示す「大都市・東京都の出生率支配要因」とは-少子化対策・印象論合戦に終止符をうつために-
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
日本に住む人口の10人に1人が集まる大都市・東京都の出生率の真の支配要因は何か。
少子化対策を含め社会問題分野においては、事例紹介・印象論・定性調査を中心に議論が行われることが少なくない。しかし問題の全体像を理解するためには、このような定性調査や個々の印象論などだけでは十分とはいえない。
本分析は「(私の知る限り)こうに違いない」といった印象論合戦から施策決定の紛糾が起こりやすい社会問題の一つである少子化対策について、国の統計局が公開する東京都62自治体の市区町村単位オープンデータ、ならびにそれを補完する国勢調査、厚生労働省市区町村オープンデータ、東京都の市区町村統計データ、の大規模データにおける159項目(元データから算出した指標項目も含む)の統計(定量)分析を行うことによって、少子化議論における「思い込み」議論を出来うる限り排除することを目的としている。
また、このようにして印象論を排除した定量データ分析結果から、東京都62自治体の出生率を支配する「真の支配要因」を突き止めようと試みた。
本分析は、ある一時点における出生率と他のデータ間の関係性を見た現状の相関分析結果であり、長期時系列推移データ間の相関分析ではない。ちなみに合計特殊出生率はその算定の性質上、社会環境が激変した場合、異なる時点間の比較に意味をなさない統計指標である。また社会データが生み出される背景において大きな社会の意識変化が生じている場合も、意識調査結果を含まない限りやはり長期推移データ同士の相関分析は適切とならないことをふまえている。
本分析の結果は以下の2つである。
1.「生物学的限界である母の年齢ゾーン要因」を超える出生率の支配要因は見つけることは出来なかった。
ある年齢ゾーンの女性と、そして見落とされやすいが「そのパートナーが」ともに前向きにカップリング・妊娠・出産・育児に取り組める社会作りが行われることなくして、出生率を大きく引き上げることは難しい、そう分析結果は示している。相関係数の大きさからも、この生物学的要因が真の支配要因であることは異論がないだろう。
そうはいうものの、それが叶わない社会要因があるはずである。
その要因として、はたして東京都にはどのような社会要因があるのだろうか。
2.あくまでも「現時点では」という結果ではあるが、母の年齢という生物学的要因を取り巻く社会環境的な要因として、互いの要因からの重複した影響を排してもまだ、8つの要因が出生率に影響力をもっていることが判明した。
繰り返しになるが、この8つの要因はある時点での出生率の支配要因であり、これが未来にわたって影響するのかを直接的に意味する結果というわけではない。また過去におけるその要因の出生率の影響力の強さを示しているものでもない(過去の常識においてはそんなことはなかった、ということは当然ありうる)。
以上の前提をふまえた上で、本分析の結果から改めて感じることは、「生物学的要因はまだしも、社会環境的要因については、もはや東京都だけの力では、東京都は縮小均衡の未来しかないのではないか」という懸念であった。
この具体的内容については本論を参照されたい。
本分析結果は、生物学的要因、社会環境的要因、ともに東京都だけの少子化対策にとどまらず、全国的な少子化対策への提案を含むものであるだろう。
本分析結果が、全国的な少子化政策の議論においてより横断的な再考が行われる際の一助と少しでもなることを願ってやまない。
■目次
はじめに-日本における「最大人口規模・最低出生率エリア」東京都
1――1対1関係でみた場合、
「そのデータと出生率の間に、関係性(影響しあうこと)はあるか・ないか」の分析
1|分析結果を見る上での留意点
2|東京都の出生率の増減との間に「ほぼ関係がない」「関係が弱い」
との分析結果が現れたデータ
3|東京都の出生率の増減には 「関係がある」(影響している)
との分析結果が現れたデータ
2――1対1の関係でみた場合、
「出生率とそのデータとの間に、強い関係性が現れた『支配的』項目」の出現
3――出生率に影響する「女性とそのパートナーの年齢要因」を
動かすことができるデータは何か?
4――おわりに
03-3512-1878
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