2017年07月18日

急増する国内外国人人口・世帯数

竹内 一雅

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1――はじめに

日本国内では日本人人口が減少する一方で外国人の人口と世帯数が急増している。2016年の一年間に日本人は全国で▲31万人減少したが、外国人は+15万人増加し、外国人需要は国内不動産市場にとって重要な分野となりつつある。本稿では、国内の外国人による不動産需要を考える上での参考となるよう、外国人人口に関する基本的項目を全国と主要都市、そして特に東京都区部に関して整理する。
 

2――外国人人口増加の概況

2――外国人人口増加の概況

1外国人労働者と留学生の増加
近年、日本で働く外国人労働者や日本への外国人留学生が急増している。厚生労働省によると、2016年に国内の外国人労働者数は108万4千人と初めて100万人を超え、前年からの増加は17万6千人(増加率は+19.4%)に達した(図表-1)。外国人留学生も大幅な増加が続いており、日本学生支援機構によると、2016年5月時点の留学生は23万9千人で、前年比+3万1千人(+14.8%)の増加だった(図表-2)。
図表-1:国内外国人労働者数(各年10月末現在)/図表-2:国内外国人留学生数(各年5/1現在)
2外国人人口の増加と日本人人口の減少
外国人労働者や留学生の増加に伴い、国内の外国人人口は急増し、日本人人口が減少する中で、外国人人口の存在感が高まっている。

住民基本台帳に基づく人口によると、2016年の一年間に総人口は▲16万人の減少で1億2,791万人となった。このうち、日本人が▲31万人減(▲0.2%減、1億2,558万人)の一方、外国人は+15万人増(+6.9%増、232万人)となり1、日本人人口の減少の約半分を補った(図表-3)。

世帯数に関しては、日本人のみの世帯も増加が続いているが(前年比+0.73%)、「外国人を含む世帯」(外国人のみの世帯と日本人と外国人の複数国籍世帯の合計をこのように呼ぶこととする、以下同じ)の増加率は前年比+7.8%増と著しい増加となった(図表-4)。
図表-3:国内人口の概況/図表-4:国内世帯数の概況
短期滞在者を含めた国内に在留する外国人数(総在留外国人数)は、2016年末に291万人に達し2、前年比で+8.4%の増加だった。2008年のリーマンショック以降、国内の外国人人口は減少が進み3、2011年末には208万人となったがその後増加に転じ、2008年末時点と比べ、現在(2016年末)の外国人人口は+40.2%の大幅な増加となっている(図表-5)。

総務省の「人口推計」によると、近年、総人口は減少を続けているが、2013年以降、前年比減少幅は▲24万人から▲16万人程度へと縮小傾向にある。これは、日本人人口の減少幅が拡大傾向にある一方、外国人人口が2013年から増加に転じたためである(図表-6)。
図表-5:国内の総在留外国人数(各年年末時点)/図表-6:国内の日本人・外国人別人口増加数(各年10/1 時点、前年比)
外国人人口の増加と日本人人口の減少の結果、総人口に占める外国人人口の比率は上昇が続いている。「人口推計」によると、外国人人口比率は2000年(10/1時点)の1.03%から2016年には1.51%に上昇しており4、現在の状況(日本人人口の減少と外国人人口の増加)が続くのであれば、今後、外国人人口の比率はさらに上昇していく(図表-7)。

外国人人口の増加に伴い、「外国人を含む世帯」数も急増している。「外国人を含む世帯」は2016年の一年間に+12.3万世帯の増加(+7.8%増)となり、総世帯増加数の23.4%を占めた。新規の住宅需要における外国人を含む世帯の比率が高まりつつあると考えられる(図表-8)。
図表-7:国内の外国人人口の増加数と外国人人口比率(各年10/1 時点)/図表-8:外国人を含む世帯の増加数と総世帯増加数に占める構成比(2013.3-2017.1)
 
1 本稿では外国人数の把握に、法務省「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」、総務省「人口推計」を利用しており、それぞれの数値に相違がある。在留外国人統計(旧登録外国人統計)は国内に在留する外国人の全体数について長期にデータが把握でき、調査時点が年末(半年に一度の調査)であり暦年での集計に利便性が高いが、地域別には全体数(総在留外国人数)が把握できないことや日本人との比較などに課題があること、総務省「人口推計」は総人口から日本人人口を減ずることで外国人人口を把握できるが地域別データが県別までであること、住民基本台帳に基づく人口は毎年1月1日の調査結果が市区町村別に詳細に公表され住民登録をしている全外国人人口や世帯数も把握できるが、外国人の把握が2013年7月以降でそれ以前からの外国人人口を把握できないなどの特徴と課題がある。
2 短期滞在者等を含むため、総在留外国人数(図表-5)は、住民基本台帳に基づく人口(図表-3)よりも多い。
3 リーマンショック後に、欧米を中心とした海外企業(外資系金融機関など)がアジア拠点を東京から上海やシンガポール、香港などに移転させる動きが加速したことは、東京のAクラスオフィスビルのテナント構成や賃料水準、高級賃貸マンション市況にも大きな影響を与えてきた。
4 図表-3にあるように、「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」では2017年1/1時点の外国人人口比率は1.82%だった。
3男女別・年齢別の外国人人口
最近の外国人人口の特徴のひとつに、過去のトレンドと異なり、男性人口の増加が女性人口の増加を上回っている点がある。図表-9と10にあるように、1980年からリーマンショックの2008年までは、ほとんどの年で女性の増加数が男性の増加数を上回ってきた。2013年以降に男性増加数が女性を上回る状況が続いた結果、外国人人口に占める女性比率は2012年の55.4%から2016年は53.0%へと低下している。
図表-9:外国人の男女別人口推移(各年10/1 時点)/図表-10:男女別外国人人口増加数(各年10/1 時点)
国内に滞在する外国人の年齢構成は日本人と大きく異なっている。外国人は20歳~39歳が特に多く、外国人人口の50.3%を占めている(日本人では21.9%)(図表-11)。

外国人の増加は20歳代で特に多く、2016年の一年間に20歳代の外国人人口は+7万人(+11.9%)の増加だった(図表-12)。一方、日本人の20歳代は▲16万6千人(▲1.3%減)の減少だったため20歳代人口に占める外国人人口の比率は5.1%に達している(2014年は3.8%)。今後も、若年層に占める外国人人口の比率は上昇が続くと考えられ、若年層の比率が高い賃貸住宅市場で、外国人の存在感が高まると思われる。
図表-11:外国人と日本人の年齢別人口(2015 年、2017 年、1/1 時点)/図表-12:外国人の年齢別人口増加数と増加率(2017 年初、前年比)
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竹内 一雅

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