2017年05月17日

【アジア・新興国】韓国における生命保険市場の現状- 2016年のデータを中心に -

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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6――販売チャネル

生命保険の初回保険料を基準とした販売チャネルは、過去には保険外交員による販売が多かったものの、バンカシュアランスが登場してからは保険外交員のシェアは減少傾向にある。2001年に60.3%を占めていた保険外交員のシェアは2005年にバンカシュアランスが登場してから39.1%に急減し、最近の2015年には20.0%まで減少した。一方、バンカシュアランスのシェアは2005年の46.6%から2015年には52.0%まで増加している(図表9)。
図表9 生命保険の販売チャネルの推移(初回保険料基準)
保険商品販売における保険外交員のシェアが減少することにより、2008年に173,277人でピークであった保険外交員の数は2015年には128,729人まで減少した。さらに、最近は若者の保険外交員離れが続いており、保険外交員の高年齢化も進んでいる。若者が保険外交員になろうとしない理由は、韓国では保険外交員が個人事業主で働くケースが多く、安定的な収入が保障されていないからである。今後労働力人口の減少が予想される中で保険業界がどのように若手人材を確保するのか、また、どのような販売チャネルをより活用するのか注目したい。
 

7――新商品

7――新商品

(1) サムスン生命:オールインワンがん保険
サムスン生命は4月12日に加入者ががんと診断された際に、診療費や毎月の生活費を最大5年間支給する「オールインワンがん保険」を販売すると発表した。この商品は、既存のがん保険に毎月の生活費の支給や健康管理サービス等を新しく追加した総合がん保険であり、保険金の支給方式により「一時支給型」と「生活資金型」に区分して販売される。例えば、主契約2,000万ウォンのがん保険に加入した加入者が胃がんや肺がんとして診断された際に、一時支給型の場合、保険金として4,000万ウォンの一時金が支給される。一方、生活資金型は、一時金1,000万ウォンと生存時に毎月100万ウォンの生活費が最低2年から最大5年間支給される。

また、一定金額以上の加入者には加入者ががんと診断されてから5年間、健康管理サービス(入・退院の手続きや診療予約の代行サービス、健康相談等)が提供される。
 
(2) 新韓生命:新韓子供の心強い生活費がん保険
新韓生命は、子供ががんと診断された際に、治療費や生活費が支給される「新韓子供の心強い生活費がん保険」を販売し始めた。この商品は、胎児から15歳までの子供が加入できる子供向けのがん保険で、更新なしで最大100歳まで保障される。保険期間中に「特定がん」16として診断された場合、毎月100万ウォンずつ5年間、総額6,000万ウォンの生活費が支給される(主契約1,000万ウォン基準)。

障がい者世帯、多子女世帯、低所得層の場合、主契約保険の保険料がそれぞれ5%、0.5~1%、5%割引される。
 
16 食道がん、肝臓がん、骨転移がん、脳がん、リンパがん、腎がん、胆嚢がん、胆道がん、気管支がん、肺がん、小腸がん。
参考文献
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

(2017年05月17日「保険・年金フォーカス」)

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