2017年03月28日

韓国における公的扶助制度の現状と課題(後編)-国民基礎生活保障制度の改革と概要、そして残された課題-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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2|給付の種類
(1)生計給付(日本の生活扶助に当たる)
・概要:生計給付は、受給者に日常生活を送る上で必要な物資や衣料品、食料品、燃料等の購入に必要な金品を支給(支給日は毎月20日、世帯単位に支給)。
→ 条件付き生計給付:働く能力がある条件付き受給者に対しては自活事業に参加することを条件に生計給付を支給。
→ 緊急生計給付:受給対象者として選定される前に緊急に生計給付を支給する必要がある場合、市長・区長等の首長の判断により生計給付を支給。

・給付対象:世帯の所得認定額が生計給付対象者の所得基準(基準中位所得の30%)以下の世帯で扶養義務者基準を満たしている世帯。

・給付水準:
→ 生計給付:世帯人員別生計給付対象者の所得基準(基準中位所得の30%、図表2)から所得認定額を差し引いた分
→ 緊急生計給付:基準中位所得の15%に該当する金額を支給(図表2)
図表2 世帯人員別「生計給付」対象者の所得基準
(2)住居給付(日本の住宅扶助に当たる)
・概要:受給者が居住するために必要な住居の確保に必要な賃借料、維持補修費等を支給。
・給付対象:世帯の所得認定額が住居給付対象者の所得基準(基準中位所得の43%、図表3)以下の世帯で扶養義務者基準を満たしている世帯。
図表3 世帯人員別「住居給付」対象者の所得基準
・給付水準:
→所得認定額 ≦ 生計給付対象者の所得基準:基準賃貸料(図表4)の全額を支給
→所得認定額 > 生計給付対象者の所得基準:(基準賃貸料から本人負担分を除いた分)を支給
※本人負担分=(所得認定額-生計給付対象者の所得基準)×30%
図表4 地域・世帯人員別基準賃貸料
(3)医療給付(日本の医療扶助)
・概要:受給者が適切な医療を受けるために必要な費用を支給
・給付対象:世帯の所得認定額が医療給付対象者の所得基準(基準中位所得の40%、図表5)以下の世帯で扶養義務者基準を満たしている世帯。
→医療給付1種受給権者:勤労能力がない者だけで構成されている世帯、稀少難治疾病重症疾患、施設に保護されている受給者
→医療給付2種受給権者:国民基礎生活保障制度の対象者のうち、医療給付1種受給権者以外の世帯
図表5  世帯人員別 「医療給付」対象者の所得基準
・給付水準:図表6を参照
図表6 医療給付対象者の本人負担
(4)教育給付:
・概要:受給者が適正な教育を受けるための費用を支給
・給付対象:世帯の所得認定額が教育給付対象者の所得基準(基準中位所得の50%)以下の世帯で扶養義務者基準を満たしている世帯のうち、中学・高校及び同等の学歴が認められる学校、生涯教育法による生涯教育施設、代案学校4の設立・運営に関する規定による学校に入学あるいは在学している者
・給付額:入学金・授業料・学用品の購入費用等を支給(副教材代を含む)、入学金・授業料は学校の長が市長や区長に直接申請。
図表7  世帯人員別「教育給付」対象者の所得基準
(5)自活給付(日本の生業扶助に当たる):
・概要:自活事業を通じて、働く能力のある低所得層が自ら自立できるように技能習得支援及び勤労機会を提供
・給付対象:国民基礎生活保障制度の受給者のうち、働く能力のある者。
・給付額:給付:自活に必要な生業資金の支給や施設・器具の貸与、就業斡旋等情報の提供、自活のための勤労機会を提供。
 
(6)出産給付:
・概要:分娩前後における受給者を支援・保護するための給付。
・給付対象:生計・医療・住居給付の受給者のうち出産した者(出産予定者を含む)。
・給付額:出生児1人につき 60 万ウォンを現金で支給。
 
(7)葬祭給付:
・概要:受給者が死亡し、葬祭を行う場合に、死体の運搬、火葬又は埋葬、葬祭等に必要な費用を支給
・給付対象:葬祭を行う者
・給付額:死亡した者1人つき 75 万ウォンを現金で支給
 
4 「代案学校」とは、学業を中断したり個人的特性に沿った教育を受けようとする生徒を対象に、現場実習等体験を中心とした教育、人格形成中心の教育又は個人の素質・適性開発中心の教育等多様な教育を行う学校。国公立代案学校と設立認可を受けた代案学校を卒業した場合、小・中・高等学校卒業と同等の学力が認定される。
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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