2017年03月02日

どのような人がリスク許容度が高いのか?-個人投資家のリスクプロファイリングに関する実証分析

北村 智紀

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5――結論

以上の分析により、リスク許容度は「公的年金への信頼度」、「老後の生活資金への不安度」、「老後の生活に対する楽観度」、「人生設計を行っているかの程度」の4つの指標と一定の関連性があることがわかった。特に、「公的年金への信頼度」と「老後の生活に対する楽観度」は、リスク許容度が非常に低い人(「すぐに売却」)や、リスク許容度がある程度高い人(「我慢」)の増減に影響していた。また、「人生設計を行っているかの程度」はリスク許容度が非常に高い人の増減に影響していた。

2016年3月末の企業型確定拠出年金の加入者数は548.2万人(厚生労働省(2016))であり、5年前と比較して約50%増加している。個人型確定拠出年金の加入者数は2016年3月末で25.7万人と企業型と比較すると少ないが、5年前と比較して2倍となっている。また今年より、個人型確定拠出年金の加入対象者が拡大し、今後、加入者が増えることも予想される。確定拠出年金は加入者自ら運用を行うタイプの年金制度であり、どのような資産に投資するかで運用成果が大きく異なる可能性がある。資産配分の決定には、図表1の例で示したとおり、投資家のリスク許容度が影響しており、自分がどの程度のリスクがとれるかを把握することは重要である。金融機関等は、投資家が自分のリスク許容度をより正確に把握できるような診断方法を整えておくべきである。しかし、リスク許容度の推計には、単純にリスクをとることについてどう思うかを直接尋ねるだけでは、正確に把握できるか疑問が残る。どのような特長を持つ人がリスク許容度が高いのかについての理論的・実証的な研究を深めていく必要性がある。

参考文献
J. Klement (2015) “Investor Risk Profiling: An Overview,” CFA Institute Research Foundation
J. Sung and S. Hanna (1996), “Factors Related to Risk Tolerance,” Journal of Counseling and Planning 7(119), pp.11-19
厚生労働省(2016)『確定拠出年金の施行状況等』
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/index.html
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北村 智紀

研究・専門分野

(2017年03月02日「基礎研レポート」)

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