2017年01月31日

【アジア・新興国】注目を集めるアジアの保険会社による海外不動産投資~中国の保険会社を中心に世界の主要プレイヤーに~

増宮 守

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1―はじめに

アジア各国では、保険市場の成長を背景に保険会社による不動産投資の拡大が続いている1。中国経済の失速懸念などから、アジア域内の不動産取引は縮小傾向にあるが、一部の保険会社は、アジア域外への積極投資によって不動産投資の拡大を継続している。今回、アジアの保険会社による海外不動産投資の概要を確認する。  

2―アジアの保険会社による不動産投資の拡大

2―アジアの保険会社による不動産投資の拡大

近年、アジアの保険会社による不動産投資の拡大は目覚しく、例えば、台湾最大手の国泰人寿保険(キャセイライフ)が、日本生命保険を上回ってアジアの保険会社で最大の不動産投資家となった他、中国本土の大手保険会社も、積極的な不動産投資の拡大によって注目を集めている(図表-1)。
図表-1 アジアの主要保険会社の保有不動産金額(投資用+営業用)
アジアの保険会社による不動産投資の拡大は、新興国、NIEs4カ国を問わず、各国で続く保険市場の高成長を背景としている(図表-2)。多くの保険会社が、保険事業および運用資産規模の拡大に沿って不動産投資を拡大してきたといえる。
図表-2  アジア各国の生保収入保険料の対前年成長率(2014、2015年、現地通貨ベース)

3―日本、台湾、韓国の保険会社による海外不動産投資

3―日本、台湾、韓国の保険会社による海外不動産投資

アジアの保険会社の中でも、特に台湾や韓国の保険会社は不動産投資に積極的であり、総資産における不動産の比率が日本の保険会社の数値を大きく上回っている(図表-1)。台湾や韓国の大手保険会社は、中国経済への懸念から国内の不動産取引が縮小する中でも、海外への積極投資によって不動産投資を拡大してきた。

実際、日本、台湾、韓国の主要な保険会社について、リーマンショック以降の海外不動産投資の事例をみると(図表-3)、日本と台湾および韓国の保険会社で明確なスタンスの違いがみられる。日本の保険会社による近年の海外不動産投資事例は、東京海上日動火災保険がシンガポールで自社使用するオフィスビルを取得した1件のみであった2。一方、台湾、韓国の保険会社は、投資目的の海外不動産投資を継続的に実施している。

台湾の保険会社は、例外的な中国本土での事例を除けば、全て欧州のオフィスビルに投資しており、特にロンドンのオフィスビルに集中している。また、台湾の保険会社は単独出資を選好し、最大手の国泰人寿保険(キャセイライフ)が大規模オフィスビルに投資している以外は、概して投資対象の規模を抑えている。

一方、韓国の保険会社は、北米に積極的に投資しており、欧州でもロンドンに限らず南欧にも投資している。また、JV等で他の投資家と共同出資し、案件あたりの出資額を抑えることで、超高層ビルや大規模ビルを主な投資対象としている。中には、ライバルの保険会社と共にJVに参加するケースもみられている。
図表-3  日本、台湾、韓国の保険会社による海外不動産投資(リーマンショック以降)
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増宮 守

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