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2017年01月20日
関税同盟からも撤退。しかし、英国はEUとの包括的な自由貿易協定を目指す
メイ首相は、17日の演説で、単一市場ばかりでなく、単一通商政策と域内のゼロ関税、域外共通関税からなる関税同盟からも撤退する方針を表明した(図表2基本方針9)。
EUとは包括的な自由貿易協定(FTA)の締結を目指し、金融サービス、自動車については共通ルールを取り入れる可能性も示唆した。関税についても新たな協定での合意に意欲を示し、その一例として、関税同盟の準加盟国といった地位も挙げた。EU市場との間でのゼロ関税を望みながら、関税同盟からは撤退するのは、米国や中国などEUがFTAを締結していない域外地域と、新たな協定の締結に動くためだ。
今回示された「より広く開かれた英国」を目指す方針はボリス・ジョンソン外相らが率いた離脱派が国民投票のキャンペーン時に展開した主張と重なる(図表4)。キャンペーンで、過剰に強調されたEU財政への拠出金の負担については、加盟国としての義務的な拠出の必要はなくなるが、EUが運営するプログラムに選択的に参加し、必要に応じて拠出する意向を示した。
EUとは包括的な自由貿易協定(FTA)の締結を目指し、金融サービス、自動車については共通ルールを取り入れる可能性も示唆した。関税についても新たな協定での合意に意欲を示し、その一例として、関税同盟の準加盟国といった地位も挙げた。EU市場との間でのゼロ関税を望みながら、関税同盟からは撤退するのは、米国や中国などEUがFTAを締結していない域外地域と、新たな協定の締結に動くためだ。
今回示された「より広く開かれた英国」を目指す方針はボリス・ジョンソン外相らが率いた離脱派が国民投票のキャンペーン時に展開した主張と重なる(図表4)。キャンペーンで、過剰に強調されたEU財政への拠出金の負担については、加盟国としての義務的な拠出の必要はなくなるが、EUが運営するプログラムに選択的に参加し、必要に応じて拠出する意向を示した。
離脱協議と並行して包括的FTAについても協議。移行期間も設ける
スケジュールの面では、「告知」から離脱までの2年間で、EUとの新たな関係に関する協議をまとめ、離脱後、段階的な移行のプロセスに入り、「崖っぷち」を回避する方針を示した。
EUを離脱する時点で着地点が決まっており、着地点に至るまでに一定の移行期間があるとすれば、EU離脱は英経済や英国で活動する企業にとって「ハード」なものとはならない可能性がある。
だが、27カ国で構成するEUと包括的なFTAを、離脱までの2年という期限でまとめることは困難という見方が大勢だ。例えばスイスとのFTA交渉にはおよそ10年を要し、カナダとの包括的経済協定(CETA)も合意までに5年を要した。12月6日、英国の離脱協議のEU側の主席交渉官のミッシェル・バルニエ氏は、10月の就任以来初の記者会見で「協議に費やすことができる期限は18カ月以下」として、2年よりも短い期間で最終合意をまとめる必要があると述べてもいる。
英国とEUの交渉が、英国側が望む順序、スピードで交渉が推移するとは限らない。
EUを離脱する時点で着地点が決まっており、着地点に至るまでに一定の移行期間があるとすれば、EU離脱は英経済や英国で活動する企業にとって「ハード」なものとはならない可能性がある。
だが、27カ国で構成するEUと包括的なFTAを、離脱までの2年という期限でまとめることは困難という見方が大勢だ。例えばスイスとのFTA交渉にはおよそ10年を要し、カナダとの包括的経済協定(CETA)も合意までに5年を要した。12月6日、英国の離脱協議のEU側の主席交渉官のミッシェル・バルニエ氏は、10月の就任以来初の記者会見で「協議に費やすことができる期限は18カ月以下」として、2年よりも短い期間で最終合意をまとめる必要があると述べてもいる。
英国とEUの交渉が、英国側が望む順序、スピードで交渉が推移するとは限らない。
協定なしの「ハード」な離脱も覚悟
メイ首相は、EUが英国を罰するべきとの立場を採り、英国に不利な条件を強いるようであれば、協定なしで離脱する覚悟も示した。そうなれば「崖からの転落」、「ハード」な離脱となる。
離脱が「ハード」になるか「ソフト」になるかは、今後のEUとの協議によって決まる部分が大きい。現段階ではあまり明るい展望を描くことはできない。
離脱が「ハード」になるか「ソフト」になるかは、今後のEUとの協議によって決まる部分が大きい。現段階ではあまり明るい展望を描くことはできない。
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
(2017年01月20日「Weekly エコノミスト・レター」)
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