2017年01月10日

EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの報告書の概要報告-

中村 亮一

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5―全体的な状況(各種措置の適用会社数等)

ここでは、各種措置の適用会社数4等の全体的な状況について、報告する。

以下の図表及び図表の数値は 、特に断りが無い限り、EIOPAの「長期保証措置と株式リスク措置に関する報告書2016」からの抜粋によるものであり、必要に応じて、筆者による分析数値を加えたり、表の項目の順番を変更する等の修正を行っている。

1|ソルベンシーIIの適用状況
欧州保険会社のソルベンシーIIの対象会社及び内部モデルの適用状況は、以下の通りとなっている。
ソルベンシーIIの対象会社及び内部モデルの適用状況(会社数)
内部モデル適用会社は、部分内部モデル適用会社を含めて、169社でソルベンシーIIの対象会社全体の5.5%となっている。ただし、その内部モデル適用会社の割合は、生命保険会社では8.1%、生損保兼営(グループ)会社でも8.1%と、生命保険事業を展開している会社において相対的に高くなっている。

ソルベンシーIIの対象会社の技術的準備金総額8,701.66十億ユーロのうち、生命保険が7,964.19十億ユーロで91.5%、損害保険は737.47十億ユーロで8.5%の割合で、生命保険事業が圧倒的に高くなっている。なお、営業保険料ベースでは、総額451十億ユーロのうち、生命保険が228十億ユーロ、損害保険が223十億ユーロで、両事業の割合は拮抗している。
ソルベンシーⅡ対象会社
 
4 以下の図表等において、会社数と述べるとき、1つの会社が異なる事業で各措置を適用している場合等もあり、必ずしも「会社数」を表しているとは限らないが、報告書の概要の結果が示すものに影響を与えないと考えられるため、「会社数」という表現を使用している(次回以降のレポートでも同様)。
2|LTG措置及び株式リスク措置の適用状況(全体)
ソルベンシーII対象の3,050社のうち、29.5%にあたる901社が、MA、VA、TRFR、TTP、DBERのいずれかの措置を適用している。これらの会社は24カ国にわたっており、残りの8カ国(エストニア、クロアチア、アイスランド、リトアニア、ラトビア、マルタ、ポーランド、スロベニア)からの会社は、いずれの措置も適用していない。なお、この割合についても、生命保険事業を展開する会社での割合が47.1%と高くなっている。

また、これを技術的準備金の比率で見ると、全体の8,702十億ユーロのうち、6,038十億ユーロ、69.4%(生命保険事業だけでみれば72.3%)の会社で使用されている。
MA、VA、TRFR、TTP、DBERの適用状況(会社数)/MA、VA、TRFR、TTP、DBERの適用状況(技術的準備金)
3|LTG措置及び株式リスク措置の適用状況(措置別)
MA、VA、TRFR、TTP、DBERの措置別の適用状況は、以下の通りとなっている。
MA、VA、TRFR、TTP、DBERの適用状況(会社数)/MA、VA、TRFR、TTP、DBERの適用状況(技術的準備金でのシェア)
・VAは、最も多く852社(技術的準備金でのシェア60.8%、以下同様)が適用している。
・TTPは、次に多く154社(24.1%)が適用している。
・MAは、38社(15.8%)が適用している。
・TRFRは、5社(0.2%)5が適用している。
・DBERを適用したのは、1社(0.0%)のみである。
・損害保険会社は、VAを多く適用し、TTPも一定数が適用しているが、基本的には、各種の措置は、技術的準備金が高水準な生命保険事業に対して、適用されている。

なお、MAは、英国やスペインの保険会社で適用されているため、会社数の割に、技術的準備金のシェアは大きくなっている。

4|複数の措置の適用状況
複数の措置の適用状況については、以下の通りとなっている。

TTPとVAの併用会社が118社と最も多く、技術的準備金の市場シェアでは14.1%となっている。

TTPとMAの併用会社は29社であるが、英国の保険会社が多く適用している影響により、技術的準備金の市場シェアでは14.4%と最も高くなっている。
複数の措置の適用状況
 
5 プレス・リリースやエグゼクティブ・サマリーでは6社となっている。
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中村 亮一

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