2016年12月27日

小型コミュニケーションロボットの活用に向けて-目指す活用シーンはビジネスからパーソナル、ホームと多彩-

青山 正治

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はじめに

2016年10月には様々なサービスロボットや産業用ロボット、IoT1やICTなどの先端技術の製品群の展示会が毎週のように開催された。その一つに10月上旬に幕張メッセで開催された「CEATEC」がある。会場では複数の小型のコミュニケーションロボットが展示され、ビジネスでの活用シーンなどが再現され、来場者の注目を浴びていた。筆者は介護ロボット等の調査・研究を行っているが、この分野のコミュニケーションロボットとしては、セラピー用の動物型ロボットや介護施設のレクレーション支援用の人型ロボットなどが既に活躍している。それらは、福祉・介護分野に特化していたが、新たに登場してきた小型コミュニケーションロボットは、対話や会話機能の高度化により、幅広い分野での活用を目指している。

本稿では近年登場した、スマートフォン(以降、スマホ)を活用した小型コミュニケーションロボットを幾つか取り上げて概要に触れ、それらの持つ特徴などに考察を加える。
 
1 Internet of Thingsの略語。「モノのインターネット」と呼ばれる。自動車、家電、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出す。(総務省「平成28年版 情報通信白書」より)
 

1――対話型の小型コミュニケーションロボットの登場

1――対話型の小型コミュニケーションロボットの登場

上記のCEATEC会場では、多数の企業や団体が複数のテーマごとに様々な新製品や製品群、さらに開発中の機器類を展示していた。今回、筆者は上記のとおり福祉・介護分野のコミュニケーションロボットに接している経緯から、複数の企業が展示していたコミュニケーション用の小型ロボットに興味を持った。既存の福祉・介護用のコミュニケーションロボットとは異なる目的での新たな用途開拓を目指し、各企業が様々な実演も行なっていた。登場して間もない小型のコミュニケーションロボットは、人との対話に特化した新しい分野のデバイス(機器)である。その機能発揮のために、スマホを介してICTの環境を活用しつつ、人工知能(以降、AI)の活用も一部で始まっている。さらに将来的には、“言葉”を使って様々なIoTデバイスと繋がる可能性を持っている。このため、登場する小型コミュニケーションロボットには、人との高い対話力と親和性を備えることが目指されている。

次章では幾つかの小型コミュニケーションロボットの概要や活用シーンについて触れる。
 

2――多数登場する小形のコミュニケーションロボット

2――多数登場する小型のコミュニケーションロボット

1展示された幾つかのコミュニケーションロボット

以下では、会場で目にした小型コミュニケーションロボットの概要や活用シーンを簡略に記す。


(1)「KIROBO mini(キロボミニ)」(トヨタ自動車株式会社)
図表-1 「KIROBO mini」の外観 10月3日、トヨタ自動車は、手のひらサイズ(座高/体重:10cm/183g)で常に人に寄り添うコミュニケーションパートナー「KIROBO mini」を2017年に全国のトヨタ車両販売店を通じて発売予定(今冬に東京・愛知の一部販売店で先行販売を計画し、WEBによる事前予約の受付けを予定)と公表した。(図表-1)

この小柄な「コミュニケーションパートナー」は、話しかけた人の方向に顔を向け、顔や手を動かしながら雑談のような何気ない会話が可能である。また、小柄なので外出の際にも一緒に連れて行くことができ、人に寄り添い、心を通わせる存在となることを目指して開発されている。

様々なしぐさや会話は、主に本体と専用アプリをインストールしたスマホをつなぎ、本体に搭載したカメラ(眉間部分)により人の表情を認識して、感情を推定しながら人の気持ちに寄り添った会話や動作を行なう。また「KIROBO mini」に対応した「つながる」サービスの利用可能な車両や、トヨタホーム(株)が提供するTSC-HEMS(エネルギー管理)サービスを使ってクルマや家の状況を踏まえた会話ができる予定である。コミュニケーションを通じて一緒に行った場所やその人の好みを覚え、その人に合わせて変化・成長する点が特徴である。

 
(2)「RoBoHoN(ロボホン)」(シャープ株式会社)
図表-2 「RoBoHoN」の外観 図表-2の「RoBoHoN(ロボホン)」は、2015年の「CEATEC」で発表され、2016年5月に販売が開始されたモバイル型ロボット電話である。サイズは身長が約19.5cm、体重が約390gである。

「ロボホン」にはスマホのOS(基本ソフト)が使われており、専用アプリを開発でき、ダウンロードして機能拡張が可能である。

非常に多機能であり、通常の通話やメールの読み上げ、音声をメールにして送信できるほか、カメラや小形プロジェクターを搭載しており、撮影した画像を壁などに投影できる。人の顔認識が可能で名前を記憶でき、会話を継続することでより親しくなる事も出来る。また、超小型のサーボモーターを13個搭載しており、二足歩行や座ったり立ち上がるほか、細かな動作が出来る。

2016年の「CEATEC」の展示ブースでは、新たに提供される法人向け「お仕事パック」という「受付・接客アプリ」「プレゼンアプリ」「遠隔アプリ」の3つのアプリによる、受付や接客、観光案内、見守りなどの活用シーンの紹介とデモが行われていた。具体例としては、店頭販売での営業サポートやロボホンを携行することで場所と連動した観光案内や、レストランのテーブルでの注文などにも活用が可能である。また、12月15日、NTTドコモ(シャープと連名)は、「おしゃべりロボット for Biz(自然対話プラットフォーム)」対応ロボットに「ロボホン」を追加し、同日より法人向けに販売を開始すると発表した。様々な対話シナリオを追加でき、企業のビジネス現場での活用が期待される。
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青山 正治

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