2016年12月22日

一億総活躍社会の「働き方」-「生産性向上」、「長寿化社会」、「共働き社会」の実現に向けて

土堤内 昭雄

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■はじめに

わが国は急速な人口減少時代を迎えている。今年10月、総務省が公表した2015年の国勢調査の確定値では、日本の総人口は1億2709万5千人と、前回の2010年調査から96万3千人の減少となった。都道府県別ではこの5年間に人口増加したのは沖縄県、東京都、埼玉県、愛知県、神奈川県、福岡県、滋賀県、千葉県の8都県のみで、残る39道府県では減少した。全国1,719市町村をみても、全体の82.5%に当たる1,419市町村で人口が減っている。

政府は人口減少時代への対応として「一億総活躍社会」の実現を掲げ、「名目GDP600兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」を目標にしている。すべての人が活躍できる社会が成長と分配の好循環を生み出し、50年後に人口1億人を維持することにつながるという。しかし、人口減少社会の課題は、単に総人口が減るだけではない。相対的に生産年齢人口が大きく減少して社会的扶養が拡大する人口構造上の問題だ。そのため労働力人口の確保と共に、変化する人口構造への対応が重要課題となる。

第1の対応策は、「労働生産性」の向上だ。日本の人口ピラミッドをみると、今後の人口増加が期待できないのは明白だ。一定の経済成長を目指すためには時間当たりの労働生産性の向上が求められる。将来的には人工知能(AI)などの発達により生産性は大幅に改善するだろうが、同時に、われわれの働き方や労働市場は大きな影響を受けるだろう。

第2の対応策は、高齢者が無理なく働ける「長寿化社会」をつくることだ。寿命が長くなり、高齢者のライフプランも多様になっている。リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著『ライフシフト~100年時代の人生戦略』(東洋経済、2016年11月)では、人々は長寿になり一層長い年数働かなければならなくなると指摘している。今後、長寿化時代の働き方が大きな課題になるだろう。

第3の対応策は、仕事と子育てが両立する「共働き社会」をつくり、女性の就労を後押しすることだ。共働き世帯は、経済的に自立した夫と妻が対等に形成する世帯がある一方、男性の収入低下に伴って夫と妻の収入の合算でなんとか家計を維持する補完型の共働き世帯が増えている。今や共働き世帯は専業主婦世帯の1.6倍に上る。男女の働き方にも変化があり、共働き社会は大きく変容しつつある。

本レポートでは、人口減少時代を迎えた日本が持続可能であるために取り組むべき「生産性向上」、「長寿化社会」、「共働き社会」の実現に向けた一億総活躍社会の「働き方」について考えてみたい。

■目次

1―労働生産性向上への対応
  1|労働力人口の減少と生産性の向上
  2|生産性の向上に向けた「働き方」
2―長寿化社会への対応
  1|伸びる寿命と長寿化の課題
  2|長寿化社会に向けた「働き方」
3―共働き社会への対応
  1|仕事と子育ての両立
  2|配偶者控除の見直し
  3|共働き社会に向けた「働き方」
4―新たな「働き方」に向けて
  1|AI(人工知能)の活用と新たな「働き方」
  2|労働市場の流動化と新たな成長分野の創造
おわりに
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土堤内 昭雄

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