2016年12月15日

2040年代の東京の都市像~オリンピック・パラリンピックと都市 1/3

【ポスト2020、魅力ある世界都市へ 訪日客数4000万人時代への挑戦】

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2016年10月18日開催

講師:青山 佾 氏
明治大学公共政策大学院 ガバナンス研究科 教授

2.2040年代の東京の都市像

こういうときに東京でオリンピックが決まったわけで、東京五輪が2020年ですので、今から30年後ぐらいということで「2040年代の東京の都市像」というものを3年かけて、私たち都市計画審議会の中に小委員会をつくって検討してまいりました。
 
最終答申を9月2日に小池知事に対して出しております。東京都がこの答申を受けて、これから行政計画を作ることになっておりますが、この最終答申とその直前に東京都が出した「東京都市白書」がリンクしております。その紹介をしてまいりたいと思います。
 
まず東京都の正式な都市構造論というのは、この図になります。
写真(2)
つまり東京都という行政区域に限らず関東平野全体、一言で言うと直径約100kmの圏央道を中心とした範囲で都市構造を考えるということです。これは実際に私たちが答申に書き込んだ図面そのものであります。
 
これを地図で見ると、こうなります。関東平野の一番外側にあるのが直径約100kmの圏央道で、中側が外環道、一番内側が首都高中央環状線ということになります。
 
先ほど首都高中央環状線の山手トンネルの話を申し上げましたが、山手トンネルが2015年に完成して、首都高中央環状線は完成いたしました。埼玉外環はとっくにできているのですが、東京外環が凍結されていて石原都政時代に着工いたしました。これはトンネルですので、やはり確実にできていくことになります。
 
それから圏央道ですけれども、これは400km近くあるのでなかなかできないと言われていたのですが、2015年時点で80%が出来上がっております。ですから、東京大都市圏としてはこれで確立したということになろうかと思います。
 
結果、ニューヨーク、東京、ロンドンの3都市それぞれの政府が言っている大都市圏でのGDPを比較しますと、東京大都市圏は圧倒的にニューヨーク、ロンドンに比べてGDPが大きいということになります。
写真(3)
GDPの「D」をここで「R」で表わしているのは、Regionという意味で表わしているだけなので無視していただいていいのですが、米ドル単位で比較してこれだけの規模に東京大都市圏はなるということであり、これはやはり都市構造のなせる業だと私どもは考えています。
 
では、東京の中身はどうかといいますと、後でこの点について申し上げますが、非常に都心域が広がってきているといえます。
 
今回の東京都の都市計画審議会の最終答申では、おおむね環7の内側ぐらいに東京の都心域が広がってきているという都市構造で物事を考えようと提言しております。
 
具体的に言いますと、東京の都市構造は太田道灌以来、一点集中型でずっと来たわけですけれども、それを1980年代の鈴木都政のときに、副都心をつくる分散型都市構造を決めました。
 
といっても、鈴木都政時代はどちらかというと臨海副都心と新宿副都心がかわいい時代で、都心は副都心を育てるために機能更新を抑えるという政策を取ってきました。
 
これだとロンドン、ニューヨークに負けるということで、1995年に環状メガロポリス構造に置き換え、都は事実上、副都心政策をやめました。結果どうなったかというと、都心の機能更新が始まり、2002年に新しい丸ビル、2003年に六本木ヒルズができました。
 
同時に、都市再生法が成立しまして、都心の機能更新が進み、今は国際戦略特区とリンクして行われていくというふうに、政策はかなり変わってきたといえると思います。
 
なお、東京都は2014年末に出した長期ビジョンの中で、これを部分修正しまして、先ほどの圏央道を中心とした環状メガロポリス構造に、集約型地域構造という言葉を加えました。
写真(4)
これを英語ではDiverse Urban Communities within the Ring-Forming Megalopolisといい、環状メガロポリス構造を基本として、その中に多様な都市群があるという考え方に変わってきているわけです。
 
多様性というのは、都心も同様です。東京の都心とは何を指すのかといっても、その議論の目的によって変わってきていいわけですけれども、確立している都市軸としては、大丸有、大手町、丸ノ内、有楽町から八重洲、日本橋、常盤橋という軸が一つあると思います。
 
もう一つは赤坂、六本木から虎ノ門、新橋を通って、出来上がった汐留を通って、汐留は浜松町まで行っていますので、今回は浜松町の貿易センタービルの建て替えや竹芝の都有地の再開発という巨大なプロジェクトがあります。そこまでが連坦(れんたん)することになります。
 
それから、新宿は副都心として確立してきていることが、この都市白書に出した数字から読み取れるようになっております。
写真(5)
その場合に、これは全ての床面積を足したものですけれども、大丸有・八重洲・日本橋の軸を都心として、赤坂・竹芝軸は六本木、虎ノ門、浜松町を通る軸なのですが、実はもう一つ、築地臨海軸があります。
 
築地から臨海に至る地域というのはこれから環2と首都高ができるのですが、晴海通りができただけでも築地から例えばビックサイトまで車で10分程度、早ければ5分で行ってしまうという至近距離になりました。
 
この一帯の床面積が近年非常に増えております。赤坂・竹芝の床面積を超えるぐらいの床面積が集積しています。なお新宿は、副都心といえるだけの床面積があります。
 
最近は、例えば大手町にOOTEMORIができたり、日本橋川沿いに遊歩道ができたりして、かなりこの辺も変わってきています。
 
これに対して、さらに今年完成する大型ビルを拾ってみると、かなり規模の大きいビルが各地域で増えることが分かります。
写真6
そうすると、特に最近は大丸有・日本橋・八重洲軸に比べて、赤坂・竹芝軸のビルが、これからのプロジェクト計画も含めて非常に多いことが分かります。築地・臨海は既に増えていて、オリンピックでさらに増えることになると、ビル床は大丈夫なのかという疑問が生じてきます。
 
かつて六本木ヒルズが完成した2003年において、ビル床過剰説というものがありました。結果的にはその心配は当たらなかったわけですが、これからどうなのかという議論が時々出るようになりました。
 
実は都市計画で床を増やせば、必ずしも直ちに需給が緩むわけではありませんので、床の需要を喚起するような政策が行われるかどうかということにかなり懸かってくる部分もあります。
 
そういった意味では、外国人旅行客の増加など、本日この後のパネルディスカッションのメーンテーマにつながると思います。
 
それから、床面積については、特に容積率の緩和等の都市計画の緩和政策を進めるだけでなく、金融取引面での門戸開放がもっと進むのかどうかというのも大きな要素になります。
 
その他、ここに書いてあるようにいろいろな要素があるので、結局は都市計画サイドから言わせると、都市計画は規制緩和を進めていきますし、いい町をつくっていきますし、床は作っていきますから、ぜひ需要喚起の方もよろしくお願いしますというのが正直なところです。
 
その辺がうまく回転していくと、とてもいい状況が生じてくると思います。
 

第2回:日本と各国の計画の違い~オリンピック・パラリンピックと都市 2/3
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(2016年12月15日「その他レポート」)

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