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歯科医療の変化-かかりつけ歯科医は何をすべきか?
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
4――コ・デンタルの状況
1|ニーズの高まりとともに歯科衛生士の数は年々増加している
歯科衛生士は、患者指導から歯石除去等のケアまで、幅広いニーズに応えている。近年、活躍の機会が増しており、その数は増加している。歯科衛生士の約9割は、歯科診療所で勤務している。日々、患者と接して、口腔ケアに従事する職種として、歯科診療所では欠かせない存在となっている。
歯科衛生士の役割で、特に重要なのが、歯石除去7である。歯石は、歯周病の原因となる細菌の異常繁殖が原因であり、歯石の除去により、歯周病の拡大を防ぎ、歯槽骨の破壊のスピードを抑えることができるとの見方がある8。これにより、高齢者が歯を残すことにつながる可能性もある。
7 歯の表面の歯石除去(スケーリング)と、歯周ポケット内の歯石除去(ルートプレーニング)がある。いずれも、歯科医師や歯科衛生士による口腔メンテナンスが必要とされる。なお、以前は、歯石除去には保険が適用されなかったが、2002年に保険規則が改正されて、保険適用となった。ただし、保険治療の虫歯検査・歯周病検査を同時に受ける必要があり、歯石除去単独で保険を適用することはできない。また、保険規則には、「段階的に行わなければならない」というルールがあるため、保険で歯石除去を行う場合は、1回で歯周ポケットの中の歯石まで除去することはできない。
8 「ニッポンの歯の常識は?(ハテナ)だらけ」(河田克之・赤松正雄, ワニブックス)の、「第二部 質疑応答編」をもとに記載。
2|歯科技工士は若年層の拡充が急務
歯科技工士は、デジタル技術との競合から、存続が危ぶまれている。近年、その数は減少傾向にある。特に、20歳代や30歳代の若年層の歯科技工士の数が減っており、高齢化が進んでいる。
歯科技工士は、病院や歯科診療所での勤務者が約3割であり、約7割は歯科技工所で就業している。歯科技工所で就業する歯科技工士は、歯科医師からの注文に応じて補綴物等の製作を行っており、原則として、歯科患者に接することはない。近年、歯科技工所の数は、徐々に増加している。2014年末現在で、20,166の歯科技工所がある。そのうち、歯科技工士が1名の技工所は15,409ヵ所(76%)、2名の技工所は2,475ヵ所(12%)を占めている9。歯科技工所の多くは、零細な経営となっている。
歯科技工では、CAD/CAM10・3Dプリンターのデジタル技術の活用を通じて、技術の高度化を図ることが求められている。しかし、CAD/CAM装置は導入にあたり高額な投資が必要となるなど、零細な歯科技工所では対応が困難な場合がある。機材の導入ができずに、受注が減少し、技工所の経営が厳しくなるという、悪循環に陥るケースが見られる。
このように、歯科技工士の高齢化と、歯科技工所の零細性が、経営上の課題と考えられる。
技術面では、補綴、義歯、矯正といった諸分野に分かれて、専門特化を図るよりも、オールマイティーの歯科技工を目指すことが必要と考えられる。また、併せて、歯科患者の側からは見えにくい歯科技工士という職種について、社会的プレゼンスを高める取組みも、求められよう。11
11 歯科技工士の資格についても、均一化等の品質向上が図られている。従来、国家試験の問題は、都道府県ごとに異なっていたが、2016年より、全国で同一の問題となるよう統一化された。
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
公式SNSアカウント
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