2016年12月12日

歯科医療の変化-かかりつけ歯科医は何をすべきか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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2――歯科診療の現状

次に、口腔保健を支える歯科診療の様子を見ていくこととしたい。

1|歯科の患者数は横這い
日本では、歯科の患者は、どのように推移しているのだろうか。患者数の比較のために、医科と歯科の受診延べ日数(外来および入院で受療した日数の年間合計)の推移を並べてみる。受診延べ日数は、医科では入院、入院外とも、徐々に減少している。このうち、入院では、病床数規制や入院日数の短期化といった取り組みがなされてきた。また、2003年には、被用者保険の自己負担割合が2割から3割に引き上げられた。これらの結果、医科については、患者数は減少してきたものと見られる。

これに対して、歯科では、受診延べ日数は、ほぼ横這いで推移している。歯科でも、被用者保険の自己負担割合引き上げの影響はあったものと考えられる。しかし歯科は、外来の診療が中心で、入院に関する規制については、ほとんど影響を受けなかったと見られる。むしろ、歯を残している高齢者が徐々に増加していることが、患者数の維持につながってきたものと考えられる。
図表6. 受診延べ日数推移
2|歯科の患者は60歳代後半がピーク
診療を年齢別に見てみよう。高齢に進むに連れて受診は増加する。医科の入院外は70歳代前半、入院は80歳代前半が受診のピークとなっている。これに対して、歯科は60歳代後半にピークが来ている。従来、高齢に進むと歯が残っていなかったために、歯科受診は減少していたものと考えられる。
図表7. 受診延べ日数 (年齢階級別) [2014年]
3|歯科患者の1日あたり医療費は、あまり増えていない
患者の1日あたり医療費の推移を見てみよう。医科は、入院、入院外とも、顕著な増加を示している。これは、高齢化や、医療の高度化によるものと考えられている。これに対して、歯科では、1日あたり医療費は増加しているものの、急激な増加傾向は、見られていない。

第1節の患者数の傾向と、本節の歯科患者の1日あたり医療費を合わせて考えてみよう。医科の場合、患者数の減少を大きく上回る勢いで1日あたり医療費が増加しており、全体の医療費もハイペースで増加している。これに対して、歯科の場合、患者数は横這いで、1日あたり医療費が緩やかに増加しており、全体の医療費も緩やかに増加することとなる。この点は、次章で見ていくこととしたい。
図表8. 受診1日あたり医療費推移
4|歯科診療は医学管理が上昇、在宅医療も伸びを見せている
歯科診療は、どのような内容となっているのだろうか。一口に、歯科診療と言っても、その中身は様々なものとなっている。例えば、診断のための「検査」や「画像診断」、治療計画の作成管理や口腔衛生実地指導等の「医学管理等」、実際の治療である「処置」、「歯冠修復及び欠損補綴(ほてつ)」、「手術」などが挙げられる。診療報酬の金額をもとに、歯科診療費の構成を見ると、歯冠修復・欠損補綴が全体の約4割を占めている。しかし、これは低下傾向にあり、代わって、医学管理等や、在宅医療が伸びている。歯を削ったり、抜歯した後の歯冠装着や補綴といった処置を行う治療から、歯科に関する指導を行う医学管理等や、患者の高齢化に伴う在宅医療に、診療の中身がシフトしている様子がうかがえる。
図表9. 診療1件当たりの医療費 (平均)
5|歯科健診は浸透しつつある
日本歯科医師会が実施したアンケート調査によると、毎年1回は歯科健診を受けているという人は、約半数(49%)に上っている。性別では女性、年齢層では中齢よりも高齢の方が、その割合は高くなっている。これらの層における、歯や口腔ケアに対する意識の高まりがうかがえる。
図表10. 毎年何らかの健(検)診を受けている人の割合
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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

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