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- 国防費の3倍?-急増する中国の社会保障関係費
2016年11月24日
2|地方:中央の財政負担は2:1へ
では、社会保障関係費について、まず、地方財政の支出全体を確認し、次に、そのうち中央からの財政移転の内容と負担割合を確認する。
2015年の地方政府の社会保障に関する財政支出の総額は3兆165億元であった。これには、中央から地方への財政移転が含まれる。財政移転のうち、社会保障に関する支出が含まれるのは、一般性移転支出(日本の地方交付税に相当)と特別移転支出(日本の特定補助金に相当)である。
一般性移転支出のうち、社会保障に関する内容は、(1)基礎年金(4,405億元)、(2)医療保険(都市の非就労者・農村住民を対象)の補助などの国庫負担金(2,123億元)である。
一方、特別移転支出には、(3)生活保護、就労対策などの負担金(2,567億元)、(4)公衆衛生対策などの補助金(1,207億元)がある(図表3)。
2015年の社会保障に関する財政移転((1)~(4))の合計額は、前年比11.9%増の1兆302億元であった。これは、2015年の地方財政における社会保障関係費の支出の34.2%を占めている。一方、地方政府独自の財政支出は、前年比23.0%増の1兆9,863億元と大幅に増加し、負担割合も前年より2ポイント増加して65.8%となった。地方財政側の支出が増加しており、社会保障に関する地方と中央の財政負担の割合はおよそ2:1となりつつある。
では、社会保障関係費について、まず、地方財政の支出全体を確認し、次に、そのうち中央からの財政移転の内容と負担割合を確認する。
2015年の地方政府の社会保障に関する財政支出の総額は3兆165億元であった。これには、中央から地方への財政移転が含まれる。財政移転のうち、社会保障に関する支出が含まれるのは、一般性移転支出(日本の地方交付税に相当)と特別移転支出(日本の特定補助金に相当)である。
一般性移転支出のうち、社会保障に関する内容は、(1)基礎年金(4,405億元)、(2)医療保険(都市の非就労者・農村住民を対象)の補助などの国庫負担金(2,123億元)である。
一方、特別移転支出には、(3)生活保護、就労対策などの負担金(2,567億元)、(4)公衆衛生対策などの補助金(1,207億元)がある(図表3)。
2015年の社会保障に関する財政移転((1)~(4))の合計額は、前年比11.9%増の1兆302億元であった。これは、2015年の地方財政における社会保障関係費の支出の34.2%を占めている。一方、地方政府独自の財政支出は、前年比23.0%増の1兆9,863億元と大幅に増加し、負担割合も前年より2ポイント増加して65.8%となった。地方財政側の支出が増加しており、社会保障に関する地方と中央の財政負担の割合はおよそ2:1となりつつある。
3――支出構造の変化と財政へのインパクト
財政の支出項目が改定された2007年以降の支出構造を見ると、社会保障関係費の割合は一貫して増大している(図表4)。また、中国全土の都市化に伴って、戸籍の手続きや年金の受け取り、最近では医療や介護などのサービスを提供する都市・農村コミュニティ(地域組織・社区)に関する支出の割合も増加の一途をたどっている。一方、教育、一般公共サービス、国防など、日本の政策的経費にあたる支出項目の割合は減少傾向にある。
直近の2015年をみると、社会保障関係費は、支出規模が最も大きい上に、前年比増加率が18.5%と、都市・農村コミュニティ(前年比22.6%増)、農業・林業・水産業(前年比22.6%増)、資源開発・IT産業(前年比20.2%)、交通・運輸(前年比18.8%)など、国の重点事業と同規模の増加率となった(図表5)。中国の財政支出については、国防費が何かと注目されるが、社会保障関係費の支出規模はその3倍にあたり、直近2015年の増加率もそれを遙かに凌いでいる4。
このように、国の歳出全体に対する社会保障関係費のインパクトは引き続き大きい状態にある。支出の増加には、新たな社会保険や国庫負担の導入や高齢者の増加による自然増などが考えられる5。留意すべきは、少子高齢化が日本とほぼ同様の速いスピードで進展する中で、公的介護保険に係る経費がまだ含まれていない点である。
直近の2015年をみると、社会保障関係費は、支出規模が最も大きい上に、前年比増加率が18.5%と、都市・農村コミュニティ(前年比22.6%増)、農業・林業・水産業(前年比22.6%増)、資源開発・IT産業(前年比20.2%)、交通・運輸(前年比18.8%)など、国の重点事業と同規模の増加率となった(図表5)。中国の財政支出については、国防費が何かと注目されるが、社会保障関係費の支出規模はその3倍にあたり、直近2015年の増加率もそれを遙かに凌いでいる4。
このように、国の歳出全体に対する社会保障関係費のインパクトは引き続き大きい状態にある。支出の増加には、新たな社会保険や国庫負担の導入や高齢者の増加による自然増などが考えられる5。留意すべきは、少子高齢化が日本とほぼ同様の速いスピードで進展する中で、公的介護保険に係る経費がまだ含まれていない点である。
4 中国の国防費については、公表された歳出額よりも多くを支出しているとされる報道もあるが、ここでは、財政部が発表した一般公共予算支出における国防費を基準とする。
5 脚注2をご参照ください。
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03-3512-1784
経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019年度・2020年度・2023年度)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員准教授(2023年度~) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
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