2016年11月04日

日銀の苦境はまだまだ続く~金融市場の動き(11月号)

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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3.金融市場(10月)の動きと当面の予想

(10年国債利回り)
10月の動き 月初▲0.0%台後半からスタートし、月末も▲0.0%台後半に。
 日銀が長期国債の買入れ減額に動いたこととECBテーパリング観測などから海外金利が上昇したことを受けてやや上昇したが小動きに留まり、長期にわたって▲0.0%台後半での膠着した推移が継続。28日に黒田日銀総裁の超長期金利上昇を促すかのような発言を受けて一旦▲0.0%台半ばとなったが、月末も▲0.0%台後半で終了。

当面の予想
日銀の枠組み変更以降、債券市場は値動きが極めて乏しい展開が続いている。長期金利が▲0.1%に接近する局面で日銀が長期国債買入れの減額を行ったことで、下限は▲0.1%付近とのコンセンサスが市場で形成されている。一方で、0%に接近すると、最近の水準と比べた割安感から投資家の買いが強まる。今後も、▲0.0%台半ば~後半での膠着した推移が続くと予想される。
日米独長期金利の推移(直近1年間)/日本国債イールドカーブの変化/日経平均株価の推移(直近1年間)/主要国株価の騰落率(10月)
(ドル円レート)
10月の動き 月初101円台前半からスタートし、月末は104円台後半に。
月初、欧州金融システム不安の後退、好調な米経済指標を背景とする12月利上げ観測の台頭からドル高基調となり、6日には103円を突破。原油価格上昇によるリスク選好の円売りも相まって、11日には104円に。その後は利益確定に伴うドル売りが発生し、上値が重くなったが、概ね堅調な米経済指標を背景とする利上げ観測を下支えに、104円を挟んだ展開が継続。28日には米GDP改善への期待から105円台に乗せたが、月末には、クリントン大統領候補のメール問題再発に伴うドル売りが入り、104円台後半で終了した。

当面の予想
今月に入って、トランプ大統領候補の支持率追い上げの報道を受けてドルが売られ、足元では102円台後半で推移している。ただし、今後は円安ドル高に向かうことが予想される。8日の米大統領選でクリントン氏が勝利することで先行き不透明感が払拭され、リスク選好の円売りが入るほか、堅調な米経済指標のもとで12月利上げがいよいよ確実視されてくるためだ。12月上旬にかけて最大で107円まで円安が進む余地があると見ている。一方、本日の米雇用統計が極めて低調な結果となった場合や、米大統領選でトランプ氏が勝利した場合はさらなる円高へ。特に後者の場合は100円を一気に割り込むだろう。
ドル円レートの推移(直近1年間)/ユーロドルレートの推移(直近1年間)
(ユーロドルレート)
10月の動き 月初1.12ドル台前半からスタートし、月末は1.09ドル台後半に。
月初、好調な米経済指標に伴うドル高と、一部報道に端を発するECBテーパリング観測に伴うユーロ高圧力が交錯し、1.11ドル台後半ば~1.12ドル台半ばでの方向感の無い動きに。その後、米利上げ観測が高まったことで、ドル高基調となり、17日には1.09ドル台後半に下落。さらに、ECB理事会後の21日には、量的緩和の延長観測が強まったことで1.08ドル台後半に下落した。一方、終盤は持ち高調整的なユーロの買戻しやクリントン大統領候補のメール問題再発に伴うドル売りが入り、月末は1.09ドル台後半で着地。

当面の予想
今月に入って、トランプ大統領候補の支持率追い上げの報道を受けてドルが売られたほか、ハード・ブレグジット懸念後退を受けて、足元では1.11ドル付近に上昇している。ただし、今後はドル円同様、12月の米利上げがほぼ確実視されてくることから、ユーロ安ドル高に向かうだろう。なお、ECBは12月の理事会において量的緩和の期限延長を決定すると予想されるが、金融緩和の拡大ではなく、また市場では大方織り込み済みであるため、影響は限定的と考えている。
金利・為替予測表(2016年11月4日現在)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2016年11月04日「Weekly エコノミスト・レター」)

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